第4話 白い翼の天狗姫

春の暖かな日、あの百足の一件からやたらと一緒に居たがる夏目撫子。

その理由は玉緒にほぼ一目惚れしたからである(主に尻尾だが…)とにかく誤解をといてちゃんと告白したい撫子は玉緒と最近は一緒にいた。

まあ空回りと玉緒が鈍感で全然気づいてくれないが。

「寝みい…」

玉緒と撫子は通学路を一緒に歩いている。

何故か撫子が迎えに来たのだ。

て、何で住所知ってるんだよ…母さんだな教えたの。

玉藻前は撫子を偉く気に入り、最近じゃ自分から撫子の家に赴くくらいだ。

気づいたらいないんだから。

どこの婆ちゃんだよ、まあ十分過ぎるか婆ちゃんと呼ぶには、本人が居たらお仕置きするだろうが。

(どうしよう…何話そう…)

全く進展なしの撫子は何を話していいか、まるで判らない。

だからとりあえず気になる事を聞いてみる事にした。

「 玉緒くんのお父さんって人間なんだよね?」

撫子は素朴な疑問だった。

玉緒が半妖なのは知ってるが、その父親がどんな人物か興味があった。

あんな綺麗なお稲荷様をお嫁さんにしたんだから。

だから九尾はお稲荷様じゃない…妖怪だから。

「ああ、でも千年前の人だからな…写真なんか無い時代だから全くわからないんだよな」

玉緒は母玉藻前が千年越しに産んだ子供と言っているが一体どんな技を使ったのか全く謎だ。つか何で妊娠して産むのに千年もかかったんだ?

「何でも親父は陰陽師って話だけど」

「陰陽師…名前解る?」

「確か名前は高円寺正和…だったかな」

「高円寺正和…どっかで聞いた名前…」

撫子はこの名前に聞いたような気がした夏目神社は1000年以上前からあった神社だから陰陽師に関して書籍が残っているのかもしれない。

それに撫子は霊能力者だ陰陽師と近い繋がりだからな。

「ん?あれでも確か大お祖母様にたしか、高円寺って名前で家系図にあったような…確か巴って名前だったような…」

撫子は自分の先祖の何世代も前の大お祖さん、ひいひいひいひいひい??お祖母さん(ややこしい要は大おばあちゃんな!)が確か嫁ぐ前の苗字が高円寺だった。

「巴…俺は聞いた事ないな…お袋と親父は当時は狩るかられるの時代だったからな」

平安時代は妖怪は当たり前の様に認知されていた。

だが、妖怪は異様な化け物として扱われて陰陽師達に度々狙われては退治されたり、逆に返り討ちにしたりの時代だからだ。

そんな時代に禁断の恋といわんばりで大妖怪と陰陽師が結婚なんて世間から見たら異質でしかないのだ。

「案外親戚なのかも知れないな」

「そうかもね」

二人がそんな話をしていた時だ。


「うわー」

上から何やら悲鳴が聞こえてきた。

「ん?なんだ?鳥か?」

「ううん、人だよあれっ!」

撫子が声を上げた上から誰か落ちてくる。

「うわーどきなさいよー」

バタン

落ちてきた少女は在ろう事か玉緒に落ちた。

「うーん…」

玉緒は目を回した拍子に尻尾と耳がでた。

「いたたた…」

「あの?大丈夫ですか?」

撫子は恐る恐る聞く。

「ええ、大丈夫よ…ん?何これ」

少女は玉緒の尻尾を鷲掴みし握る。

「ギャーー」

玉緒は声を上げた。

玉緒は尻尾を触られるのが大嫌いだからだ。

「ん?あんたの尻尾?」

「尻尾に触るなーー早く降りろー」

玉緒は声を上げた。

少女は玉緒から降りると立つ、少女は小柄で可愛らしく何やらお面を着けてる。

「玉緒くん大丈夫?」

「俺基本尻尾触られるの嫌いんなんだ」

「あ、ごめん…そんな嫌いとは思わなかったから、つかあんたも妖怪?」

「性格には半妖だよ、てあんたも?」

「そ!私は烏天狗よ!烏杜美玲よ!」

美玲は一回転し白い羽を見せた。

ん?白い羽?

「烏天狗って山の神って言われてる妖怪だよな」

「確かにでも烏天狗は黒い羽のはずだよ」

「う…痛いとこつくわね…」

烏天狗は絵巻にもあるように黒い羽をしている、しかし美玲は白い羽だった。

「私産まれ時色素が抜けてて偶然白い羽で産まれたのよ」

動物でも稀に色素が抜けて違う色で産まれる話は聞くが妖怪にもあるとは初耳だった。

見た目はまるで天使だ。

「とにかく助けてくれてありがとね!」

美玲はそう言うと羽を広げて飛んで行った。

「何だったんだ?」

「さあ?」

二人が学校へ行こうとした時だ。

「おいそこの狐!」

玉緒が上を向くと今度は黒い羽をした紛れも無い烏天狗がいた。

「この辺りに白い烏天狗様を見なかったか?」

(美玲か?)

玉緒はあからさまに怪しいその烏天狗を信用できず適当に回答した。

「山の方行きましたよ」

「玉緒くん⁉︎」

「そうか!いくぞ!」

烏天狗はお供と山へ飛んで行った。

「玉緒くん何でデマいったの?」

「怪しいからだよ」

「でも天狗様だよ!いいのかな?」

「気にしない気にしない」

玉緒達は取り敢えず今は学校へ向かうことにした。何だかんだいい時間になってしまった。このままじゃ遅刻だ。

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