2026 変異動物

「ふうぅー、これで動けないでしょう?変なトンボ。」


 トンボっていうな!


「お姉様、このトンボまだ動いてますの。」


「ええ、変ね、体押し潰されてないの?」


「さあ?」


 うん?このトン…じゃなくて!ハゲワシが、なんかおかしいぞ?


『千月、あいつを殺せ!嫌な予感がするぞ。』


「え?可哀想に…」


 だああぁぁーー!こいつなに考えてるんだ!


 ぐぐぐぐーーーー


「な、なにこの音?」


 カッ、カッカッカッカッカッーーー


 これは…石のぶつけ合いの声だ…まさか!


『やつの喉から出した声だ!はやくあいつを仕留めろ!』


「え?喉?」


 そしてあのハゲワシ、口を大きく開き、高圧空気を吹き出した!


「わ、わああぁぁ!や、焼ける!」


 高温な圧縮空気だ!こんなこともできるのかよ!?


 千月はもちろん素早く離脱したが、ゆうちゃんはまだ攻撃範囲内に残ってる。


「ゆうちゃんにげて!」


「あ、ああ!お姉様!」


「ゆうちゃん!」


 くそー!このままでは…え?



《出力25%》



 イブが…出力上がった!


 そして時間が、また止まった…


 いや、今回はゆっくりしただけだ、停止までには至ってない。



「ゆうちゃん!」


 また超加速だ、一瞬で佑芳を助け出した。


「え?お、お姉様?」


 結構離した、これであの圧縮空気が届かないはず!


「さーちゃん!なんでもいいから何かを出してあいつの頭を潰して!」


「お、おう!」


 おお?大きな石だ、あいつの体より大きな石は、あいつの頭の上から落下した、これで押し潰せる!


 ドンーーー!


「ふうぅーー、これで死ぬでしょうね。」


『ああ、流石にこれでは生きられないだろう。』


 ゴゴゴゴゴッーー


 うん?ええ?い、石が、動いてる?


「え?ふええーー!?」


 な、なんだと…!?


 時間切れて、石が消えた、そしてあいつは……


「そ、そんなバカな!?」


「さーちゃんにげて!」


 あいつ、僅か出血しただけで、まだピンピンしてるぞ!?


「くそー!」


 佐方は素早く門を開き、千月と佑芳の隣まで逃げて来た。


「お姉様!さっきのはもう一回やりましょう、今度は頭まで全部埋めて見せますわ!」


 カッカッカッカッカッカッーー


「ま、また…!?」


 まさかこの距離でも…100メートル以上の射程があるのか!?


 くっ、あ…、き、来た…体の…痛みが…


「うっ、ゆうちゃん…さーちゃん、逃げて…」


 あ…、千月が、倒れた…


「お姉様!」


「ねえちゃん!」


『千月…門を開けって言って、早く…』


 ガァァァーーーー!


 あ…ま、間に合わない…し、死ぬ…


「ゆ、ゆうちゃん!」


 え…?佐方が、まさか佑芳、何を…み、見えない…


「お姉様は私が守って見せますわ!」


『ち、千月!前を見ろ!佑芳が!』


「うぅー、ええ…?」


 あの吐息が…まだ来ない…?


 え…?ええーー!?


 佑芳が…両手を前に出し、あのハゲワシと同じような吐息を吹き出して、押し返した!?


 ガァァァーー!?


 いや、押し返すじゃなく、覆われた!あの吐息以上の威力だ!


 パチッ、パチッ、パチッ


 は、花火が…吐息が重ねた所から、花火が…まさか、爆発!?



 ドドドドウンーーーー!



 爆発した…連続な爆発だ…。


 煙が…なにも見えない。


 佑芳は…無事のようだが、あのハゲワシは?


「お、お姉様…大丈夫…ですか?」


「ゆうちゃん…何をしたの?」


 煙が…どんどん晴れた。


 地面に太い直線の、焼けた跡だ、あ、あのハゲワシが…ハゲワシが…


 頭を、跡形もなく、ふっ飛ばされた。


「あのトンボの…真似事です。」


 真似!?原理もわからないのに、見ただけであんな真似をできるのか!?しかも明らかにあのハゲワシ以上の威力だぞ!?


「は、ははっ、え、えっと、ゆうちゃん偉い、うん!ありがとね、助かったわ。」


 千月も呆れたようだな、いや出鱈目過ぎるだろう、この子達。


「さーちゃんも大丈夫?」


「ちょっと疲れた。」


「私も…眠くなりましたわ。」


 ああ、あんな連続使用とあんな大石、そして高温吐息、この子達も多分限界だろう。


 だがそれ以上ヤバイのはこっちの方だ。


『千月、さっきの加速は、半分くらい抑えていたのだろう?』


「…………」


 あ、答えちゃいけないか。


『今回はすぐ気絶しなかった、痛みも前回程ではないな、動けるか?』


 千月はゆっくりと、力を入れた…


『あああああっっ!』


「うぅー、い、痛い…」


 うっ、うぅー、やはり…か、こりゃ、しばらくは、動けない。


「お姉様!」


「ね、ねえちゃん大丈夫か?」


「さーちゃん…もう一回、飛んて、周りに何か村とか、休める所を…探して。」


「う、うん、わかった!」


「お、お姉様…お姉様ぁ!」


「そ、そんな…」


「えぇ……?」


 う、うそだろう…


 もう…一匹…、さっきのハゲワシは、もう一匹が、廃墟の中から、飛んて来た。


「くっ、今度は僕が…!」


「さーちゃん!さっきお姉様の教えた通りに、もう一回やりましょう!」


「あ、ああ、風だな!」


 どんどん近づいて来た!あと300メートル!


「さーちゃんいまよ!」


「おっす…あ、あれ?」


「さーちゃんなにするんですか!」


 佐方の足が…震えてる。


「ち、力が…はいれない。」


 ガァァァーーー!


 ダイブしてきた!


「くっ!もう一回あれで…吹き飛ばしますわ!」


 おう!?また出した、あの強化版吐息!


 しかし距離がかなり離れているから届かなかった、射程は200メートル以下か、そしてあのハゲワシは、佑芳の攻撃範囲から迂回したあと、またダイブしてきた!


「あ、ああ…お、お姉様…」


 バタンっ


「ゆ、ゆうちゃん!」


 佑芳が…倒れた、力が出し過ぎたようだ。


「うぅー、まだまだ…ですわ…!」



「いや、そこまでだ。」



 え?男の…声?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る