第31話 じょうちゅうまほう

「さて、いつもどおり、レベル1、と」


レベル1、難易度凶気。


「先輩、ちょっと待ってくれ。気になってたんだけど・・・先輩がダンジョン設定すると、何時も異常な難易度になってないか?」


茜が尋ねてくる。


「いや、レベル1、難易度は凶気、1番最低の設定にしてるぞ」


俺は正直に答える。


「待て。難易度設定は、易しい、普通、難しいしか無い筈だが・・・?」


宿名が訝しげに言う。


「普通、凶気、絶望、即死しかないな。しかも、普通は選べなくなってる」


「陽斗だけ選べる難易度、ですか」


紫苑が頷く。


「陽斗以外がダンジョンを作れば、一般的な難易度のダンジョンに潜れそうだな」


宿名が言い、


「かと言って──此処でやめたら、逃げた様なものですわね」


紫苑が言う。


「先輩、よろしく!」


茜がにかっと微笑んだ。


--


レベル1、難易度凶気。

洞窟タイプ・・・出入り口から漏れる光が唯一の光源。


「では、かけるぞ──」


宿名が矢継ぎ早に魔法を行使、視界の右上にアイコンが増えていく。


「いきますわ」


紫苑も何かする・・・同じくアイコンが増え・・・


「?!」


体が少し浮き上がる。

真っ暗だった視界が、昼間の様にはっきり見えるようになった。

何だこれ?!


「常駐魔法、だよ。防御を上げたり、MP回復速度が上がったり、命中率やクリティカル率が上がったり、暗闇でも見通せる様になったり・・・様々。数十分続いたり、ダンジョンを出るまで効果が続いたり、色々。メイジやプリーストが徐々に覚えるんだけど・・・全部使えるみたいだね」


「凄いなこれ・・・」


床が光っている。

罠の場所とかだろうか。

視界の端に地図が浮かんでるし。

遠くにいるゴブリンの上に、ゴブリンLV5という文字が浮かび、その下にゲージが見えている。

HP?

あと、レベル1のダンジョンで、1階層からレベル5ってどういう事だ?


「種類が多いから、かけるだけで一苦労だ。本来はもう少し有るが、効果時間30分以下のものは省略した」


宿名が淡々と言う。


「悪質なダンジョンになると、魔法が使えない場所とかがあって・・・そこを通ると常駐魔法が消されますの。かけ直しが面倒ですわ」


「手間だな」


頷く。


「プリーストは、低レベルの時は、常駐魔法かけ直しがあると、MPの管理が難しくなる。色々な意味で悪質だ」


宿名が苦々しく言う。


「なのに、効果範囲から勝手に出ておいて、かかってないとか文句を言う馬鹿がいて──」


宿名が呪詛を吐き始めた。

プリーストが支援をかけ始めたら、ちゃんと集まって立ち止まろうな。

お兄さんとの約束だ。


「よし・・・行こう」


改めて、出発だ。


--


あっさり3階層に到着。

支援のお陰か、かなり楽になった。


「クレイゴーレムに、ジャイアントワーム・・・レベル23・・・強いな」


呻く。


「3階層でこのレベルとは、流石、難易度狂気だね」


茜が、呆れた様な声を出す。


「敢えてこの難易度で挑む人達が狂気ですわ」


紫苑が微笑を浮かべ、言う。


ガッ


飛び込み、ジャイアントワームにクリティカルを叩き込む。


ゴウッ


クレイゴーレムが突っ込んで来たのを、かわし、


ゴッ


背中にクリティカルを撃ち込んで転倒させる。


「サイクロンピアース!」


茜が無数の刺突を繰り出し、ジャイアントワームを倒す。


「フレイムアロー!」


宿名の魔法が、クレイゴーレムを焼き尽くした。


まだ余裕が有りそうだ。

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