第23話 まじっくあいてむ

「これを、縦ファイアーウォールと言います。これが出来なければ、赤芋ソロできません」


紫苑がほのぼのと言う。

赤芋ソロ?


「収穫祭イベントの限定モンスターっすね。さつまいも型の魔物で、プレイヤー目掛けて飛んでくるんすよ。前衛が抑えて、メイジが焼くんすが・・・確かに、時々、ソロメイジがいたっすね。美味しいんす」


ゲーム内で食事が出来るのか?


「・・・と言うか、何故紫苑さんは、魔術を使えるんだ?プリーストだろう?」


はっ。

そう言えば。


「えっと、隠しレアアイテムですね。初級の魔術を扱える様になるんです。存在を秘匿しているので、内密に」


紫苑が苦笑いする。

便利だなあ。


「なるほど・・・」


宿名が頷く。


「そう言えば・・・先輩、エアは大丈夫っすか?」


「エアは──げ」


173/3200


無くなりかけてる?!


「やばい、173しかない・・・」


「マジっすか。エアポーションを──」


茜が何か渡そうとしたのを、宿名が手で制し、


「俺のエアを分けよう」


そう言って、宿名から俺に蒼い光が・・・


3200/3200


すげえ。


「有難う、宿名。全快したよ」


エアって分けられるんだな。


「待って。何でメイジが、上級神聖術のトランスファーエアを使えるの?」


紫苑の突っ込み。

神聖術、しかも上級なのか。


「む・・・それは、そう、あれだ。隠しレアアイテムのお陰で、上級の神聖術を使える様になっていてな」


「流石に無理が有りますわ?!」

「どれだけ高性能なんだ?!」


宿名の回答に、茜と紫苑が叫ぶ。


・・・まあ、実際、からくりは分かっている。

紫苑も、宿名も・・・恐らく茜も、元は別のクラスだったのだ。

クラスコンバート、そうであれば、説明がつく。

だいたい、経験年数に対して、レベルが低過ぎるのだ。


紫苑は、メイジからのコンバート。

だから、MP最大値上昇や、MP回復力向上、初級・・・いや、ひょっとしたら上級魔術のスキルを所持しているのだろう。


宿名は、元はプリーストだろう。

上級の神聖術を使えるのだから、すくなくとも・・・かなり高レベルだった筈だ。

宿名すくなだけにね。


恐らく、みんな分かってはいるけど。

敢えて、踏み込まない。

言わないと言う事は、何か事情が有るのだ。

きっとそのうち、話したくなった時に聞けるから。


だから今は、誰も踏み込まない。


本当にマジックアイテムならすげえ。


--


「ん」


俺は違和感を覚え、後ろを見る。

壁が有る。


そう。


通ってきた場所に、壁が有る。


「どうしました、陽斗はると君?ああ」


紫苑が俺に尋ね、俺が答える前に気付く。


「一方通行、通り抜けると、壁になる罠の一種だ。まさかこんな低ランクのダンジョンで発生するとはな」


宿名が呻く。

なるほど。


「これは・・・戻れるのか?」


「此処からは無理っすね。回り道して戻るしか無いっす。上級ダンジョンだと悪質で、モンハウとセットになってるっす」


俺の問いに、茜が答える。

モンハウ、モンスターハウス。

魔物の群れだ。


フラグ、と言う物を知っているかね?


「あれは・・・モンハウだ!進むのは慎重に・・・」


宿名が警告を発する。

通路を進んだ先・・・大部屋に、魔物がひしめいている。

その数、30体程。

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