第6話 ちなみだ

数分後、私服に着替えた茜が出てきた。

・・・えろっ。

露出は少ないが、ゆったりした服。

胸のあたりが凄く盛り上がっていて・・・

素晴らしいスタイルが分かって実に・・・平常心、平常心。


「せ〜んぱい、お待たせしました!」


やわっ


茜が腕に抱きついてくる。

ちょ?!


「・・・平常心、平常心」


「先輩、声に出てますよぅ?」


小悪魔の笑みを浮かべる茜。

こいつ・・・つけてない・・・?!


茜が耳元で囁く。


「先輩、襲うのなら言って下さいね?先にシャワーを浴びたいので」


「・・・良いから、早くDDSをするぞ」


平常心、平常心。

なんとか立ち上が・・・立ち上がる。


おのれ。


実際には相当心が揺れているのだが・・・

確かに、俺が求めれば、茜は身体を差し出すだろう。


だが、やはり、茜の本心では無い気がする・・・

特に、誘う様な台詞には、自暴自棄の様な・・・まるで自分を罰したいかの様な・・・そんな空気を感じるのだ。

茜は、俺にとって大切な存在。

今手を出せば、茜も、俺も、後悔する。


それに・・・


何処と無く、俺がそこまで読んでるからこそ、安心してこんな態度をとっている気がする。

だから、手は出さない。


「先輩が血涙を流してる気がするっす」


茜がとてとて、とリビングの隅にある機械のところに行く。

箱、そんな印象の機械だ。

まだ正式サービスが開始してないのもあるかも知れない。

やや無骨な印象を受ける。


「先輩、ダイバーリングを指にはめ、ダイバーグラスを装着して下さい」


茜の指示に従い、指輪とグラスをつける。

グラスはややシェードが効いていて、だいぶ暗くなるが、周囲の視認は可能だ。


「あとは、このダイバーユニットに向けて、ダイブイントゥーザイデア、と叫べば、シンクロするっす」


「コードとかは繋がなくて良いのか?」


データ転送と、動力転送が無線なのか?

機器認証の手順は無いのか?


「コードとかは無いっすね。あ、ダイブ中のダイバーにいたずらしちゃ駄目っすよ。強いバリアーで護られてるっすから」


電磁シールド、的な物があるとは思えない。

所謂、なりきり、というやつだろう。

今はグラスを通しても向こう側が視認できるが・・・開始したら、映像が映って、見れなくなるのだろうな。

そういえば、ヘッドホンや、コントローラーは?


まあ、素直にやってみよう。


「ダイブイントゥーザイデア!」


指輪が、グラスが熱くなり──

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