第38話 ザウス王国聖騎士訓練

 オレの月読お披露目から三日。


 必死こいてゴネ続けたけどもう限界だ。


 毎晩こっそり訓練してたおかげで多少は精霊魔法もマシにはなったんだけど、出力が安定しねーんじゃ実戦訓練にゃ使えねぇ。

 これが必要以上に威力が高えとか弱えとかならまだ何とかなるのに、ロンの奴は適当に出力変えやがる。

 たぶん自我が強くなったせいもあって遊んでんだよな。

 遊んでるんならオレも一緒に遊んでやりゃいいのか?

 って思ってやってみたけどダメだった。


 やっぱ魔力練度が足りねーのかなと思って宿のテラスで魔力制御訓練を一晩中やってる。

 多少は練度上がってきたし、月読通しての通常魔法がそこそこマシになってきた。

 爆炎使えばかなりの威力で魔法出せるんだろうけどそれじゃ意味ねーしな。

 まずは通常魔法の威力をライオス装備並みまで持ってかねーと話になんねーかも。


 まぁおかげでこの三日間全然寝てねーしくっそ眠いけど、スペシャルヒールぶち込んで何とか皆んなに気付かれねーようにしてんだ。

 ただウェルにいいとこ見せてやりたいが為に隠れて訓練始めたんだけどな。

 今はなんで隠れて訓練してんだろって思ってる。


 今日はこのまま朝になったら王国行きだし、四時まで制御訓練したらちょっとだけ寝よ……






 朝六時にはテラスにウェルがやって来る。

 オレもそれに合わせて魔力制御訓練をするようにしてるが、実際はこの椅子に座りっぱなしだ。

 今日はウェルが来る直前まで寝てたんだけど、やっぱ二時間弱の睡眠じゃ全然寝足りねーなぁ。

 とりあえずいつものスペシャルヒールで気分爽快リフレッシュよ。


 ウェルの魔力制御もだいぶ良くなってきてるし、一昨日から物理操作グランドでの戦闘も教えたりしてる。

 ただ爆破での戦闘訓練はオレ次第……

 師匠として意地でもなんとかしねーと……






 身支度終えた朝九時。

 オレ達は宿屋エイルから出発する。


「じゃあウェルとオレは王国まで走ってくからよぉ。お前らは先に行って宿屋でもとっておいてくれ」


「うん。一番いい宿に一週間ね。それじゃ役所で待ってるから!」


「早く来ないとご飯も先に食べちゃうわよ!」


 ってカイン達は飛び立った。

 ハウザー達は竜車で行くっつってたし、到着は昼過ぎだったはず。

 昼飯に間に合うかわかんねーけどオレ達も行くか。


 ウェルのペースに合わせて走り出す。

 昼まで着くには三時間で80キロか。

 前回よりかなり速えし、このペース維持できりゃギリギリ間に合うかなって感じだ。






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 王国の役所に着いたのが十二時前。

 まさか三時間切るとはウェルの成長も相当なもんだ。


 ま、到着と同時に倒れ込んでたけどな。

 限界まで追い込もうって根性は褒めてやんねーと。

 回復魔法と、ナスカには洗浄魔法掛けてもらってハウザー達を待った。




 十二時半には到着した竜車。


 降りてきたハウザー達はすっげー疲れた顔してた。


 オレはまだ竜車って乗った事ねーんだけど、行商人やらなにやらぎゅうぎゅうに詰め込まれて移動するんだと。

 五時間もそんな状態で移動って事だから、オレ達走って来たのは正解だな。


 ハウザー達にも勧めてみたら「どんだけ遠いと思ってんだよ、バカなのか?」って回答をもらった。

 体力はあるけどバカじゃねーよ。

 とりあえず頭引っ叩いてから飯食いに行った。






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 到着した聖騎士訓練場。

 ここよりちょっと行けばザウス王国の王宮なんだけど、観光する時にでも見に行きゃいいか。


 警備の兄ちゃんに声掛けたら中に案内してもらえた。

 どうやらロナウドさんから話は通ってるらしいな。




「よく来たのぉ勇飛。それと冒険者諸君。ここには聖騎士と上位騎士、それとクリムゾンの者達が訓練しておるのでな。まずは好きに見て回るといい」


 オレ達冒険者はそれぞれ好きな武器使ってるからな。

 はっきり言って聖騎士の剣みてーなもん使う奴は稀だ。

 んでここザウス王国では両手剣と剣盾、槍しかいねぇ。

 他の武器や統一性のねぇ装備の奴らはクリムゾンの連中だろな。

 ロナウドさんから許可もらったわけだし、好きに見て回ることにした。




 オレとウェルは両手脚で戦うモンクっつー戦闘スタイルなんだけど、そんな奴はこの世界で他には見た事ねーからな。

 誰見ようが何も参考になんねぇ。

 ただ騎士達の剣筋やら技の数々を見て、それをどう捌くか、どう踏み込むかなんかをイメージしていく。

 ウェルはまだそういった部分の経験足りねぇからよく見ておくといいだろ。


 それにしても聖騎士か。

 アイツらの精霊魔法が凄まじいな。

 魔法陣無しであの出力なんて、クイースト王国の聖騎士どころじゃねぇ。

 カインはちょっと比べようがねーけど、ナスカとエレナより強えのは間違いねーな。


 あとクリムゾンにも二人、三人か? 

 そのレベルの奴らがいるのはザウス王国の隊長クラスだろな。


 そういやハウザー達の精霊魔導も見せてもらったんだけど、かなり訓練してんだろうな。

 オレ達より精緻な精霊魔導だったから結構驚いた。

 ただ我流の剣技っぽいからここで訓練すりゃもっと強くなるんじゃねーかな?

 オレ達もクイースト王国の聖騎士と訓練して結構強くなったなって事もあったし。




 見て回ってるうちに興味を持った騎士のとこで声掛けるカインとナスカ。

 エレナも風魔法使ってる聖騎士んとこで話してる。

 ハウザー達はなんかビビってんのか聖騎士じゃなくクリムゾンの奴らに話し掛けてんな。

 ま、アイツらならすぐに慣れると思うけどな。


 ウェルの奴はオレについて来るんだけど、このままオレと訓練してても変な癖つきそうだしな。

 誰か良さそうな聖騎士に預けてーとこだ。


 剣士でできれば面倒見のいい奴は……

 こっち見てる聖騎士がいる。

 すげーガタイのいい奴で、ウェルと同じくれーはありそうだ。

 派手な大剣持ってて…… かっけー!!


「すんませーん! めっちゃいい体してんじゃないっすか!」


「お、おお! 毎日鍛えてるからな! お前達も随分と鍛えてるみたいだし気になっていたところだ! オレは聖騎士のワット。雷属性の精霊魔導師だ」


「オレはクリムゾン月華部隊のリーダーで鈴谷勇飛。ヒーラーで爆破魔法を使うんだ。ウェル、お前も挨拶しろ」


「はい! ハーベリのウェルと申します! ミリー様に憧れて冒険者になりましたが、今は勇飛さんの弟子をしております!」


 とりあえずお互いに自己紹介しといて、このワットさんにウェルの事を預けてみよ。

 大剣相手にも戦えねーと今後きついだろうしな。

 爆破魔法は威力が高えけどここの聖騎士ならそれ以上。

 たぶん上手く加減してくれんだろ。

 ウェルの筋トレにも付き合ってくれそうだし丁度いい相手かも。




 そんでオレが気になるとすればやっぱ聖騎士長ロナウドさんだな。

 どう見てもあれは魔剣だろうし、あそこに立ってるだけでもプレッシャーがすげぇ。

 これまで戦闘について誰からも教えてもらった事なんてねーんだけど、魔拳での精霊魔導については全然上手くいかねーし出来れば習いたい。


「どうしたんじゃ勇飛。お前も訓練するといい」


「んー、それがさ。この魔拳もらってからまともに精霊魔導を発動できなくてな。良ければロナウドさん教えてくんねーかな」


「ふむ。おそらくじゃが自分が魔法を発動するイメージだけを押し付けてはおらんか? 精霊魔法とは自分だけの魔法ではない。精霊と勇飛の魔法なのじゃ」


「あ…… それでか! 確かにいつも通り拳に魔力集めて爆破してただけだもんな! ロンを介してねーなら当然か!!」


 聞いたらすぐに納得のいく答えがもらえちまった。

 そっかそっか、オレの魔力をロンが使って魔法にするイメージじゃねーとダメだったんだな。




 試しにロンが魔法を発動するイメージで爆破してみたら思った以上の威力が出た。

 今まで自分の力だけで何とかしようって考えが良くなかったのかも。

 ライオス装備ん時はそれでも精霊魔導って感じで威力は跳ね上がったんだけどなぁ。

 自我が強くなったってのがやっぱ大きいのか?

 ロンのイメージとオレのイメージ。

 オレのイメージを押し付けたところで、ロンのイメージとは全然違うせいで精霊魔法にはならなかったのかもしんねぇ。


 っつかオレの毎晩の訓練はなんだったんだ!?

 ま、まあ練度が多少上がっただけでも良しとするか……

 通常魔法もまともに発動できてねーしな。




 よし、とりあえず精霊魔法はなんとかなった!

 あとは精霊魔法をオレの打撃技にタイミングを合わせていかねーとな!


 ロナウドさんに礼言って、この後しばらくは爆破の演舞で体に合わせ込んでいった。

 結構難しいけどこれはめっちゃ強くなれる予感がすんだよな!

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