第37話 月読のお披露目
久しぶりに仲間と再会したオレ達は、宿屋エイルで軽めの酒盛りをしながらウェルの訓練について話をした。
最初の沈む話から毎日の筋トレと格闘訓練。
そんで魔法の訓練では毎日の線香花火からーの、精霊魔導師として一気に爆破魔法ができるようになった事なんかをウェルと笑いながら話してみた。
沈む話には苦笑いするハウザー達だったんだけど、筋トレの話してたらちょっと青ざめてたのは何でだろ。
んで精霊魔導師になれたっつー事とオレの武器をウェルが着けてるって事でなんかお礼言われたな。
ま、師匠が弟子に装備くれてやるくれー普通じゃね?
それでもただじゃ受け取れねーってどこまでも言うから、ウェルがブルーランクになって最初のクエストの報酬をオレがもらうって事で納得してもらった。
ブルーランクっつったらもう一人前の冒険者だしな!
普通ならそう簡単になれるランクじゃねーもん。
ウェルがライオス装備を身に付けてるって事はオレも装備が変わってるわけだ。
んでも飯食うのに邪魔なくらいはデカくなった装備だし部屋に置いてある。
全員が見せろって言うしお披露目してやった。
「これがオレの新装備、魔拳【月読】だ。まだ試してねーけどハッキリ言おう。嫌な予感しかしねぇ」
「嫌な予感なんだ……」
当然だろ。
朱王さんが作ったっつーなら普通じゃねーはずだしな。
『グルルルルルルルルルッ』
オレの頭に捕まって唸り声をあげるサラマンダー……
サラマンダーだよな?
どう見てもファイアドラゴン、火竜って感じなんだけどさぁ。
こっち見てる全員の目が丸い。
「オレの頭に乗ってるこいつはレツとゴウが統合されて巨大化したんだよ。名前はロンだ」
『グアァァァア!』
意思疎通はできねーから上位精霊じゃねーんだろな。
まぁミリーのもこんなだしヒーラーのサラマンダーはドラゴンもどきなのかも。
また装備外して椅子に座るんだけどロンの奴が引っ込まねぇ。
なんかテーブルの上の…… 肉か。
肉見てガウガウ言ってる。
まさかな…… 食いてーのかな?
ガブッガブッガブッ…… ゴクン。
『グアァァァア!』
精霊って肉食うの?
「ちょっ、勇飛!? 精霊は肉を食べるのか!?」
「そんなわけないじゃない! おかしいわよ!!」
「勇飛ならあり得ると思うのは僕だけ?」
「やっぱ普通じゃねーよな。コール……」
って事でミリーに聞いてみた。
「サラマンダーがお肉を食べるのは当たり前じゃないですか!」って言うからミリーんとこのも食うらしい。
背後からそんなわけないでしょとか聞こえてくるけど、ヒーラーのサラマンダーは肉を食うって認識で問題ねーな。
こいつも嬉しそうに頬擦りしてくるし……
なんか可愛く見えてくる。
「レイラさん肉追加! 三人前頼む!」
「すぐ用意するわね」
追加って言ったのに、レイラさんはカトブレパスのステーキを三人前持ってきてくれた。
なんでか少し斜め方向を行く人だからステーキでも気にしない。
ロンのやつはステーキ食って満足そうだし、今後も食いたそうなら食わせてやるかな。
これでデカくなるかは知らんけど。
そういやアースガルドではペットを飼ってるとこ見た事ねーなぁ。
まあ飼うっつっても魔獣だし危ねーのか。
それでもテイムの魔石もあるし魔獣の小せえやつなら飼えなくもねーよな。
地球じゃ犬やら猫は品種改良されて飼いやすくなってるし、こっちでそれができねーなんて事もねーだろ。
ん?
今オレすげー事考えなかったか?
品種改良だ!
品種改良して小型化すりゃペットとして飼えるし大金持ちになれるんじゃね!?
めんどくせーし興味ねーけど誰かやらねーかな!?
誰かに提案してやれば……
そんなのやってくれそうな……
朱王さんだ!
朱王さんならクリムゾンの連中いるし誰かしらやるんじゃね!?
魔拳のお礼ついでに後で連絡しよ!
ま、久しぶりに仲間と飲めて楽しい夜だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌朝。
今日もどうせ大したクエストはねーだろって事で、今日は冒険者業はお休み。
昨晩話したオレとウェルの特訓の成果を見せろって言われてたし西の岩場地帯に来たわけだ。
ここはアルテリアの冒険者がよく訓練で使う場所って言うから他の奴らもいる。
ま、他の奴らは気にせずまずはウェルの実力を見せてやろう。
実力を見せるって言ってもまずは爆破魔法だな。
今んところウェルの場合は精霊魔法でしか爆破はできねーし、威力が高えからその辺の岩を爆破してもらった。
オレなら相殺できっけどそれじゃイマイチわかんねーだろうしな。
次にオレと毎日やってた格闘訓練だ。
ウェルはライオス装備使っての
オレとウェルで強化のみの戦闘訓練を見せてやった。
結構速えしかなり本格的な打撃技ばっかだからか、いつの間にか観客が増えてたな。
終わってみりゃハウザー達も驚愕の表情よ。
鍛えたからってそんな強くなんのかって聞かれたけどウェルも頑張ってたしな。
素手でもサイクロプスくれーなら殴り殺せる程度には強くなってるはずだ。
今後は爆破も込みでどんどん強くなっていけるだろ。
そんでこっからがオレの番。
魔拳【月読】の性能を試してみる。
まずは手始めにオレの爆破魔法だけ…… なんだけどこれがヤバい。
これまでなら威力が上がってヤバいと言ってたかもしんねーけど、今回は魔力の放出が難しくて威力も半減どころか三分の一程度。
昨日ちょっと朱王さんと喋ってみたんだけど、この月読は魔力を溜め込める素材だけで作ったって事で、魔力の流れがちと遅えらしい。
つってもなんかコツがあるらしいから慣れるまでは頑張れって言われた。
そういう朱王さんの刀はもっと癖が強えらしい。
そんなわけで威力の低下した装備で今度はエンチャントされてる爆炎を試してみた。
結果、こっちは素直にヤバかったな。
放出できる魔力が少ねえのに威力は普段以上。
月読に慣れりゃ精霊魔法並みの威力出せるんじゃね?
んじゃ次は…… っつか何段階あるんだ!?
まずは通常魔法で次に爆炎だろ?
爆炎と精霊魔法の組み合わせと精霊魔法と下級魔法陣の盛り合わせ。
それに爆炎と精霊魔法と下級魔法陣の三段積み。
最後にゃ上級魔法陣まである。
おいおいおい、これはやべーんじゃねぇの!?
嫌な予感する……
嫌な予感するけど……
すっげー嫌な予感するけどやってみる?
まずは爆炎と精霊魔法の組み合わせから。
たぶん精霊魔導と変わんねー出力だとは思うんだけど、とりあえず試してみた。
……
うーん、ロンがさ……
言う事聞いてくんない。
たぶんオレが上手く魔力乗せらんねーからだとは思うんだけど、全然違うとこに魔力使っちまって魔法になんねーのな。
自我が強くなるからっては聞いてたけど参ったね。
しばらく練習しねーとダメかも。
「で、この日からはオレの特訓が始まった。ウェルの訓練が終わったばっかだっつーのに、オレがまともに精霊魔導使えねーんじゃ話になんねぇ。だからカイン達には悪いがまたちょっと待っててもらわねーとな」
「一人で何言ってるの?」
「何勝手に特訓するつもりでいるのよ」
「聖騎士と一緒に訓練すればいいだろう」
三人でオレにツッこんできた。
でもこのまままともに戦えねー状態で王国行っても微妙だよな……
「あいつリーダーのくせに精霊魔法使えてなくね? あっはっはっ、あれがリーダー? マジかよお前等、ダッセー」とか言われそうじゃん!?
今まで聖騎士にそーゆー嫌な奴いなかったけど、なんかそんな感じするのが嫌じゃね!?
「オレ達も聖騎士訓練場行くぜー。聖騎士長様が来ていいって言うんだろ? こんな機会滅多にねーし絶対に行かねーとな!!」
ハウザーはまだ聖騎士にも会った事ねーんだって。
行きてーのはわかるけどオレの身になれ!
「ハウザー君達も行くみたいだし一緒に行こうよ」
そうは言うけど、オレだけ恥ずかしい思いすんじゃん!!
「私もザウス王国に行ってみたい」
王国観光なら行くけど!
「勇飛だけ聖騎士長様に会って来たとかズルいわ。行きましょうよ」
会って来たのはおっさんだ!
なんもズルくなんかねーわ!!
「師匠! この十日、僕なんかの相手して師匠の腕が鈍ってしまってるんだと思います! 聖騎士様達との訓練でその鈍った感を取り戻して頂きたいです! そして…… 本気の師匠を見せてくれませんか!?」
そうかウェル……
お前にゃそう映ってんのか……
くっそ……
「ったく…… 別にオメーのせいで鈍ったわけじゃねぇよ。久しぶりに…… オレも本気見せてやっかな」
「あ、ウェルには簡単に乗せられるんだね」
うるせーカイン。
「師匠! 期待してます!!」
「オレの背中追うのは勝手だけどよぉ…… オレの本気を見て後悔すんなよ?」
「本気出して自分が後悔しそうよね」
「勇飛だからな」
お前らオレの何を知ってるんだ!?
まあいろいろと知ってる事はあるかもしんねーけど、オレが本気出して後悔する?
んなわけ…… んん…… ねぇし!!
たぶん絶対ねぇし!!
たぶんな!!
この夜、寝ずに特訓したけどダメだった。
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