第2話 勧誘

黒く、しかし細くしなやかな髪、くっきりとした眉、長い睫毛、それから耳には青い大きめの玉がぶら下がっている。

「それ、怒られない?」

ある種異常な状況下、大人びている青年を直視できないがために在らぬ質問をする。

「別に。」

座っている八月一日の椅子に片方膝を乗せ、逃げないようにか背もたれを両手で掴んでいる。

「あの、どうした?」

誰もがその存在を知っていながら、纏う空気が違うせいか、あまりに大人に見えるせいか、無視するでも弾くでもなしに、誰も彼に近づけなかった。司もそれに対してなんとも思わず、彼もまた周りの環境に対して極度に無関心に見えた。

「君、面白いことに興味はないか。」

わけがわからなくて青年を見る。しっとりとした唇は悪戯っぽく微かに微笑みを含み、いつにない親密感を感じながらも、この青年の、神への捧げ物として攫われそうなほど整った顔立ちに耐え難く、目を逸らした。そうでもしなければ、この目の前にいる悪魔に全てを奪われる気がした。



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