第3話 パーティーとは4人以上を指しますから

『なぁ、いい加減に元気出せよ。』

 そろそろヤバいと思ったのか、アッシュまで慰めて始める始末。

 街に入ったのに、僕のテンションは右肩下がりだ。


『さぁ、ギルド行くよぉ。』

 ユウナは、いつもと変わらず。

 特に思う所もない様子。

 この2人に見限られたら、僕は冒険者として、やっていけないかも。誰もパーティーになんか入れてくれない。ここは卑屈に行く。僕のプライドなんて、綿アメよりも軽いんだから。


「そうだね。ユウナの言う通りだ。

 まずは、冒険者登録しなきゃ。」

 僕と小さなゴーレムは、先頭を歩く。


『おっ、おぉ。』

 若干、引き気味でもアッシュは僕に続き、ユウナはノーリアクションで続く。


 ーーーーー→

『あ~。ダメですねぇ。3人では、パーティー登録出来ませんよ。』

 冒険者登録は問題なく終わったが、パーティー登録で躓いた。


「どうして?何が問題なんです?」

 カウンター越しに、受け付けをしてくれるお姉さんに詰め寄る。


『ちょっ、凄い勢いですね。

 ……。パーティー登録は、4人以上からですよ。

 ダンジョンに挑戦する時に4人じゃないと作動しない仕掛けがあるからです。』

 常識でしょ?と言いたげな顔で受け付けのお姉さんは言う。

 ヤバい。知らなかったし。後ろを振り向いた時には、アッシュもユウナも近くで張り出されている依頼書を眺めている。アイツら、僕を簡単に捨てやがる。


「わっ、分かりました。お手数をお掛けしました。出直します。」

 僕は、さっさと引き下がるとコソコソと2人の元へ。


「酷いよ。他人のふりなんて。」

 恥ずかしくて、顔から火が出そうだった。

 出たら出たで、冒険に役立ちそうだから、嬉しいかもしれないけど。


『4人目探さなきゃなぁ。ダンジョンにも潜りたいし。』

 アッシュは、僕のを得意の受け流しで反らす。くそっ、流石だよ。アッシュ。


 ーーーーー→

『だぁ~。くそっ、やっぱ、いねぇよ。』

 僕らは、ギルドに集まってきている冒険者に声を掛けた。

 最初は、厳ついアタッカー。次は、大きな弓を担いだ男。その次は、槍を持つ重鎧の人。その次は魔術師っぽい人。

 有能そうな人たちに声を掛けても全滅。

 それ以前に命を預け合うんだ。急拵えのパーティーでは危険だろう。

 家に戻って、街で見知った顔のヤツの1人を無理矢理にでも冒険者にしてやろう。とまで言い出す程に僕らは思い悩んでいた。


『ねぇねぇ、貴方たちさぁ、さっきから見てたけど、パーティーメンバー探してる?』

 冒険者にしては、部分鎧さえ身に付けず、身軽な服装の女の子。歳は、15歳位?僕らと同じ位だと思う。

 背は、ユウナより少し高いから160センチ位。

 髪の色や雰囲気から、ヒューマン族ではなさそう。


『女の子をジロジロ見るのは失礼だよ。』

 その子は、そう言うが気を悪くした様子もなく、僕らが囲むテーブルの席に着いた。


『私は、マリア。色々な種族の……えっと、ヒューマンでしょ。エルフでしょ。猫獣人でしょ。魔族。それだけの混血。よろしくね。』

 不思議な雰囲気なのは、混血児だからか。

 僕らは差別なんてしないけど、混血ってだけで嫌う人もいる。パーティーには、入りにくいんだろうな。


『貴女、強いの?何が出来る?ウチは、戦闘職2人だから、平均以上じゃなきゃ無理よ。』

 ユウナは、サラッと僕を戦闘職から外している。まぁ、反論出来ないけど。


『その辺の男よりは、強いよ。2人がかりで来る?』

 ニヤッと好戦的に笑うマリア。

 女の子には優しいアッシュでさえ


『言ってくれるねぇ、俺が試してやるよ。片腕で充分だぜ。』

 そう言って立ち上がると、ギルドから出ていく。

 僕らも、それに続いてギルドから出ると、少し歩いて人気の少ない広い場所で立ち止まる。


『ここでいいだろ。すぐ終わる。』

 アッシュは、すでにスイッチが入ってるみたい。


『そうね。すぐ終わらせて、パーティー登録行きましょ。』

 マリアは気軽に返すが、武器を取り出す様子がない。

 魔術師でも魔法を使う為の媒介として、書物や杖を構えるのに。

 グラップラー組技系格闘家なのか?


『派手なのが、いいよね。じゃあ、やるよ。

 へ~ん、し、ん!』

 不思議なポーズをとるとマリアが、突然吹き出した炎に包まれる。

 僕らは、魔法の暴発かと慌てて助けようとしたが、すぐに炎は収まり、マリアが立っていた。


「えっ!?何したの?何それ?」

 マリアは無事だったけど、炎に包まれる前とは違う姿でいる。

 赤い炎の様な部分鎧を纏っていた。


『へっへ~ん。私、独自の戦い方。精霊武装だよ。』

 何だか、よく分からない。でも凄そうなのは分かる。


『よっ、よしっ、いくぞ!』

 多少は動揺していたアッシュは、それでも一気に間合いを詰める。

 盾を装備したアッシュが、自分から間合いを詰めてきた事にマリアは驚いていた。

 それも当然、盾職は相手の攻撃を受けるなり、受け流すなりして、反撃をするのがセオリーだからだ。


『うぉらぁ!』

 アッシュは右腕を突き出し、拳で攻撃を行う。流石にギミックを動かして、真剣で攻撃する訳にはいかないからね。


『よっ、と!』

 マリアは、それを体捌きで反らすと踏み込んで、パンチを返す。

 アッシュは、盾で受けながら軸足を中心にクルッと回転する様にして攻撃を流すと、そのまま回転運動を利用して、追撃のシールドバッシュ盾攻撃を狙う。

 マリアは、向かってくる盾を受け止める様にすると、アッシュの腕を軸にして、クルッと縦回転をして攻撃を避けた後、着地の前にキックを放って只では終わらなかったが、それすらもアッシュは盾で防ぎきった。

 一瞬の攻防。アッシュも凄いけど、マリアも凄いのは、僕でも容易に理解出来た。


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僕は|クレイマー《粘土細工師》……のはず @koooum

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