第32話 人見知りなので…

土曜日、いつものようにリハビリへ

受付で

「そろそろ先生の診察の時期ですが」

「先々週に診てもらいましたよ。」

「はい、2、3週に1回くらいでお願いしていますので」

「来週MRIを撮ってもらうんで、それを診てからと言われたので、来週で。」

「分かりました。」

新人の事務員なので、小さな声で言った。

2階のリハビリ室へ。

いつものスタッフの女の子が、

「あちらからいきましょう。」

電気治療、高電圧と微弱電流の療法が出来る治療器。

だが、ここのところは、微弱電流だけ、別の機械にしている。

「きょうはこれで20分。」

と言う。

20分だと、11時からの運動療法に食い込むけど…

まあいい。

案の定、療法士が、

「あれ、これで20分ですか。」

「そう言われました。」

「むこうの機械がいいですよね。まあ、あと4分ですね。」

すでに11時になっていた。

この日は、人と話すのが億劫な日だった。

終始不機嫌そうになってしまう。

ベッドに移る時も、外した装具やカバンなどを、入れているかごから出して移動しなければいけない。

動きは遅い。

「ああ、僕が入れ替えれば良かったですね。」

そうだ。

あんたが運べば早かったんだよ。

と言いはしなかったが、何だか不機嫌。

「だいぶ固かったしこりが、小さくなりましたね。」

「そうですかね。」

「歩き方がスムーズになりましたね。」

「そうでしょうか。」

テンション低~い。

別に療法士が悪いわけではない。

本当は、私はかなりの人見知りで、人と話すのは得意でもないし、好きでもない。

接客業や営業をしているから、話してはいる。

それは、かなりのストレスなのだ。

緊張するので、誰と話す時も顔から汗が噴き出す。

何度も会っている人でも同じだ。

お店でも変わらない。

頑張って、笑顔で接しているのだ。

それが、時に疲れてしまって気を使うのが億劫になってしまうのだ。

今日はなぜ、不愛想なのだろう。

寝不足だ。

4時間しか寝ていない。

昨日、部長と同行したことも疲れの原因だ。

ビックカメラに同行して欲しいという。

荷物も持つし、作業も自分がするからついて来て欲しいと。

ところが、気づけば荷物は私が持ってますけど。

手ぶらで行こうとするので

「名刺くらい持って行かないんですか。」

「ああ、いるかな。」

名刺入れだけポケットに入れる。

営業なのに、挨拶する気はないのか。

ビックカメラは、メーカーの入り口が分かり辛い。

入店時、退店時のチェックがかなり厳しい。

どうも初めてらしい。

電話で色々お願いしていたから、主任には会えなかったが、

ベストポジションを確保してもらっていた。

作業開始。

「現場仕事好きだから。」

と言うが、雑だし、何も持って来てないじゃん。

そんなこともあろうかと私が用意してますけど。

金属探知機とかありますんで。

帰りに

「ここ通って来た?」

「ここから入りましたよ。」

1人で行かせたら迷子だな。

直接話せる機会は少ないので良かったのだが、

やはり、疲れていたのだ。

スローペースで仕事している意味が分かってもらえたらそれでいい。

金曜日の夜、久しぶりに大阪からTさん。

私がアキレス腱を断裂したことは知らなかった。

「最近、ゴルフのお誘いないなと思って。」

大阪からでもコンペに参加してくれるのだ。

ゴルフ出来るようになったらまた誘うから。

ケガでお店に出れなかった時、お店を手伝ってくれたO君は、

「歩けてるじゃないですか!」

と感動してくれた。

装具なしで歩けるようになったらいいんだけどね。

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