第16話 一人で買い物

松葉杖は、当分必要だとしても、1人で買い物出来ないと

なかなか普通の生活が出来ない。

行ってみた。

両手に松葉杖でお店の入り口まで行き、

片方の杖を手首に通してカートを持つ。

左手は、松葉杖をついて歩く。

これでいい。

ところが、まだ、左足には、3分の1の体重しかかけないように言われているので、無意識にでもかばうのか、

太ももが痛くなる。

足首が痺れてくる。

疲れたら、立ったままだけど休む。

お店に必要なおつまみなども含み、

あれやこれやと買う。

特に買いたかった鶏の山賊揚げ。

今日のメインディッシュ。

重い物は買わないようにしたものの、背負ってきたリュックに入り切らなかった。

買い過ぎたか。

パンだけ、袋に入れて持ち、

ゆっくりと両手に松葉杖で、駐車場に向かう。

車が通るので待っていると

「骨折ですか?」

と中年の女性が声をかけてきた。

「いえ、アキレス腱切りまして。」

「それは、痛いでしょう。」

「まあ、それほどでもないんですけど、まだまだ松葉杖です。」

「私もスキーで膝の靭帯を切ったことありますよ。大変ですよね。」

「まだまだ歩けないですから。」

色々と質問責め。

その間、指が世話しなく動いている。

失礼とは思いながら、

「その手は、マヒがあるんですか?」

と聞いたところ、

「いえ、気を送っているんです。少しは楽になりませんか?」

わっ!来たぞ!

「ああ、そうでしたか。う~ん、分からないです。」

「どこか、肩がこるとかないですか?」

「首が痛いですかね。」

というと、右の首に向けてパワーを送ってくれた。

「少しは、楽になりました?」

ちょっと、面倒になってきたので、

「少し、そうかも。」

何でも、教えてくれる先生がいて、自分のためなら無料なんだとか。

「明日の夜、私行きますから、ご一緒にどうですか?」

「夜はちょっと。」

丁重にお断りしてやっと解放された。

立ち話は、キツイです。

と思ったが、痛かった太ももは痛くなくなっていた。

歩くときに力が入るからだろう。

気のパワーを信じないわけではないが、

宗教がらみが多いので敬遠してしまう。

翌日、診察及び、リハビリの日。

前回が、多くてとても時間がかかり、

来週からは、仕事に復帰するため、

どうすれば午前中に全てを終わらせられるか、

シュミレーションも兼ねて、

まず、午前7時40分に家を出た。

予想通り、メイン通りが通勤の車で渋滞。

8時前に病院に到着。

受付機で受付。

やった、2番をゲット。

一旦、自宅に戻って朝食、化粧して、9時にもう一度病院へ。

前回と比べると患者も少なく、装具のソールを変更するのだが、

装具依頼も今はないとのことですぐだった。

リハビリが終わったのが11時で、会計済ませても11時20分。

これなら、午前休でいけそうだ。

いつもこんなかは分からないが、

朝早く受付に来て、出直すという方式でいく。

エレベーターに乗れば、反対向きの私の車椅子を

押して下さったり、

スーパーの店員さんも

「大丈夫ですか。何かお手伝いすることありますか?」

と声をかけてくれたり、

みんな、優しいですよ。

うん、うん。

今日は金曜日。

お店にいっぱい笑顔の花が咲いたらいいけどな~

松葉杖は、まだまだ続くそうだ。

ふ~


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