第15話 一人で営業

昼間のお仕事への復帰は、まだだけど、お店はやらなくては。

稼ぎ時の3月を棒に振った。

これは、とてもとても痛い。

せめて、新年度が始まる4月からは、営業を再開したい。

よし、平日も開けると決めた。

車で行くからお酒は飲めないが、仕方ない。

駐車場から松葉杖でゆっくり歩く。

ビルの通路が、結構長い。

そして、階段。

これが鬼門。

片方の松葉杖を腕に通して、その手で手すりを持ち、

1段ずつゆっくり昇る。

昇れた。

開店準備にも時間がかかる。

そこへ電話。

その日は、公務員さんのグループ。

ケガしたことも休んでいたこともご存知なかった。

でも、良かった。

片付けは、大変だ。

グラスやお皿を1個ずつ運ぶ。

11時には、閉店させてもらった。

疲れたけど、嬉しかった。

翌日も同じようにお店に行く。

何か荷物を運ぶことは難しいので、付きだしは持っていけない。

この日は、ロータリークラブの皆さん。

会長でもあるドクターが、

「どうした?いつケガした?病院はどこだ?」

色々とご質問が…

「県リハです。昨日からやっとお店に出て来ましたが、松葉杖です。」

保存療法だと言うと

「手術した方がいいだろう。何で、俺に連絡しなかった。」

ドクターは、整形外科ではないが、医師会の会長でもある。

更にイケメン(関係ないか)

以前、首が動かなくなり痛くて、喋ることもままならなくなったことがあり、

その日も土曜日で、もう夕方だった。

診てもらえる所がなく、ドクターに泣きながら電話して

整形外科の先生に連絡を取ってもらったことがある。

何時になってもいいからと言って頂き、

横になることも出来ない私を、その先生が抱きかかえてベッドに寝かせて下さり、

2日間痛み止めの点滴をしたことがあった。

今回、無理して診て頂いたこともあって、

他の病院を考える余裕はなかった。

県リハが、夜間救急を受け入れないことは、医師会でも問題だと思っていると言われていた。

結果的に、治療に時間がかかることになったのかも知れないが、

急にケガをするわけで、なかなかね~

このドクターには、色々お世話にもなっているので、

次回からは、すぐに連絡しますということで

ご勘弁頂いた。

このグループの中に、数年前にアキレス腱を断裂した男性がおられた。

「長いですよね。歩けるまで3か月かかりましたよ。今でも怖くて全力疾走出来ません。」

経験者あるあるで盛り上がった。

松葉杖に慣れないことや、

初めて歩く時の恐怖心。

ギプスを外した足のことなどなど

経験者の話を直接聞けた。

この日も11時半で閉店させてもらう。

何とか、1人でも営業出来そうだ。

片手松葉杖で移動は、まだ足首への負担が怖くて

腰に力が入るらしく、腰というか臀部が痛くなる。

そのうち慣れるさ。

昼間には、期日前投票にも行ってみた。

私の地域の投票所は、高校の体育館なので、

階段があり、土足厳禁のため、厳しい。

それなら、期日前で市役所に行こうと思ったのだ。

市役所には、思いやり駐車スペースが3台分あるが、

当然満車。

普通の駐車場へ。

結構、車が多くてちょっと遠くになった。

遠いというほどの距離でもないが、

松葉杖の身には、長い道のりなのだ。

歩道へは、段差もある。

意外に危ないのが、点字ブロックで、松葉杖の先が引っかかることもある。

玄関までたどり着くと車いすが用意されているが、

途中の自転車置き場に1台置いてもらったら楽なのにと思った。

期日前投票には、アンケート用紙の記入が必要で

椅子もあるが、職員が、

「お座り下さい。」

とは言わなかったので、あえて立ったまま、事前に記入した用紙を出す。

それをホッチキスで留めて、渡された。

そこから投票用紙をもらうところまで松葉杖で。

誰か、車椅子をお使い下さいとか言うかなと

思ったが、うちの市の職員は言わないね。

ゆっくりと記入台へ、そこから投票箱へ。

そんなに長い距離ではない。

でも、駐車場から長かったのと、またその距離を戻ることを考えたら、

車椅子にすれば良かったな。

疲れが出てきたのだ。

とは言え、車も運転出来るから、外出は出来る。

少しずつだけど、頑張ろう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る