フクロウを切り札にした男の末路

ユメしばい

そうするしかなかったんや

「で、最後の決戦で、それを切り札として使って、死んだと」


 こいつはたぶん、天使。


「実際問題そーするしかなかったんや……」


 俺は、彼の言う最後の決戦で、フクロウを切り札にして戦った男。


 ちなみにたぶんここは、天国。


「いやいやいやいや、魔王相手にそんなんだして戦いますかフツー?」


「しゃ、しゃーないやろが、残りのMPふり絞って慣れへん召喚魔法つこたら、たまたまソイツが出てきたんや。じゃー逆に訊くわ、兄ちゃんやったらどうすんの? ん?」


「いやー、僕やったらそいつ無視してそのまま剣で戦いますわ」


「それ結果論やろ。あの状況やったら誰でもそうするでフツー。ワシもだてに勇者気取てたんちゃうで、あの魔王クッソ強かったねんて、しかもそのフクロウ、仮にも異世界召喚で出てきたやつや、一見フツーに見えてとんでもない力秘めとったかもしれん、そんな状況や」


「でも死んでますやん」


「いやだから……って、さっきからなんやねん兄ちゃん! なんでそんな高圧的に質問してくんねん、俺なんかしたか? これでもワシあの世界守るために頑張ったんやで!」


「あー気悪うにせんといてください。亡くなったときの状況を詳しく聞いて、上に報告書提出せんとアカンのんで、つい熱くなってしまいましたわ、ホンマすんません」


「そやったらえーけど……とにかくまあ、えーところまでいったんやけどな。たぶん、もうちょっとで倒せとったわ」


「フクロウで?」


「アホ、ちゃうわ、それまでの話や! 必殺技、攻撃魔法、防御、回復の黄金ローテで順調に相手削っとったんや、けど、回復役の僧侶が先に逝ってもて形勢が変わってしもてのう。いや、あいつ覚醒しよってん。なんか隕石ボッコボッコ落としてくるやつ喰ろたわ。たぶん最終奥義ちゃうかアレ。あれはほんまキツかったでー。で、生き残ってフクロウの話に繋がるワケや。そや、武闘家のやつどうなったんか分かる? あいつたしかまだ生きとったはずなんやけど」


「死にました。違う部屋で調書取ってますわ」


「あーやっぱり? ギルドで意気投合してノリで魔王討伐に乗り出したんやけど、悪いことしてもたな、あとでお疲れさん言うたらなアカンな。そやけどま、世界救えんかったけどええ経験になったと思うわ。こんなん今さら心配してもしゃーないこっちゃけど、あの世界どないなんのやろ……」


「あの世界では貴方が最強の勇者でしたからねえ……あ、ちなみにあのフクロウ、まだ生存が確認されてますよ?」


「マジか。手に持ったときバタバタ暴れとったから、俺が魔王の100連撃喰ろて死ぬ前にどっかトンズラかましたんちゃうか。クーッ、チャッカリしとる鳥やでホンマ」


「フフ、そのフクロウが世界救ってたりして」


「ハハ、おもろいけど兄ちゃんそれはないわ。でもまー、もしそうやったら……切り札として出した価値があった、ちゅーことになるよな」


「いえてる」


 俺はこの天使の笑い顔を見て、はじめて、救われた気分になった。

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