あとがき

 戯曲のような文体や構成であったこと、許しを願いたい。

 だが学問書や論文調であれば、この出来事を一番に伝えたい人々には親しまれないだろうという、私の勝手な判断によるものである。

 記録とは、後の世に過去を生き、駆け抜けたあらゆる人々の姿や記憶を記し、伝え続けるものだ。これを書き記している現在、この物語が果たして意味を持つのか、私には到底、知り得ない。無意味かもしれない。

 だが、私たちが抱えている記憶を書き残しておくことは、コレラという理不尽な死神に対して唯一できる抵抗とも言える。

 私の記憶を、街の景色を、人々の営みを、苦しみを、喜びを、死を、足掻きを、記録すること。それが私なりのあらがいだ。


 どうかこの物語が、後世の人々の希望となりますように。



 オーヘント・ウイヤラ・グリンバルム

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死神の足跡 井澤文明 @neko_ramen

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