ハリエット編について(第27話まで読破推奨)


 タイトルは適当です。


 村が残酷なまでに叩き潰された後の、カイリ傷心の旅の始まりです。

 実を言うと、このエピソードは最初、書くかどうしようか迷っていたお話でした。


 というのも、さっさと教会に移動した方が良いかもなーと思っていたからです。


 村編で、カイリの旅立ちの理由を強烈に焼き付けて終わりましたし、歌の謎など、色々世界の謎が浮き彫りになってきたので、教会に行ってさっさと舞台を移した方が、物語にもメリハリが付いて良いだろうな、と。


 ただ、ここでネックになったのが、カイリの心理状態です。


 エピソードタイトル、「俺の歌は、誰のために」にも如実に表れている様に、カイリは全てを失い、彷徨い歩いている状態です。

 カイリは大切だった人達、居場所を無残に奪われました。

 最後の最後で大切な人達とお別れを告げ、区切りを付けることは出来ましたが、それでもカイリの中では「自分は無力だった」「何も出来なかった」「足手まといでしかなかった」という、散々なコンボが胸をえぐっていたわけです。

 そのまんま教会へ行ったとしたならば、第十三位という癖の強い人達に揉まれる中で、カイリは自分を必要以上に卑下してしまうのではないかという危惧がありました(弱い、ということに打ちのめされる)。


 また、シュリアは村編でも少し片鱗を見せていましたが、カイリに対しては、足手まとい以外の何物でもない、あくまで一般人を保護した、という感覚でしかありませんでした。

 カイリが聖歌騎士になったとしても、この先関わるなんて冗談じゃない、弱いくせに、という感じで見ていた節があります。


 フランツも村編の時点では、カイリはあくまで親友の息子、という風に見ていただけです。

 第十三位が抱える事情や目標を視野に入れると、自分の騎士団に入れる、などとは考えにくいと思いました。例え、聖歌が強くても、聖歌だけでは生きていけないからです。



 ここで課題になったのは、カイリに何かしらの自信を付けさせること。

 シュリアの偏見を少しでも解消すること。

 フランツの中でカイリに対する見解を見直しさせること。

 第十三位に入団する自然な流れを作ること。



 これを、教会に辿り着いた時点で全てやるなど、無理だ! 絶対テンポ悪くなる!

 しかも、カイリ、認められるまでの間、何処で寝るんだ? 第十三位宿舎?

 いやいや、教会到着直後は重要な出会いイベントが控えているんだよ! そっち行っちゃうわ!

 そうしたら、第一位に行くのが自然になっちゃうよ! 第十三位に行ったら、むしろ不自然! 駄目だ!

 だが、何とか第十三位の宿舎へ行ったとしても、自信喪失中に、レインには散々試されまくり、シュリアから嫌味を言われまくり、リオーネにも警戒される中で過ごす? 絶対悪い方向へ空回りするわ! 無理だ!

 例え何かしらのイベントを起こしても、第十三位がいる中で、正式に入団していないカイリを任務や荒事に参加させるとかありえん! 無理だ!



 様々な結論に至り、やはり短い旅の間で、何かしらのイベントを起こそうと思って、ハリエットイベントを起こしたのでした。

 彼女の正体については、最初から決まっていましたし、後々登場させる予定でしたので、ここでファーストコンタクトを取ってクッションを作り、彼女の腹黒さから見ても丁度良いイベントだな、と。利用させて頂きました。


 結果的に、カイリは最初にシュリアに喧嘩を売って(?)彼女の認識を変え、フランツの認識も変え、同時にラインについてのエピソードを通したカイリの真っ直ぐな性格も印象付け、ハリエットを助けることも出来、無事に何とか課題を達成したのでした。

 最初にシュリアと衝突したからか、カイリが「戦う」「命を奪う」という躊躇について、彼女が苛烈ながらも背中を蹴り倒して押す、という行動もして下さいました。


 私が考えていた以上に、カイリ達が自分達で動いてくれましたし、フランツとシュリアは、ここで決定的にキャラの方向性が決まりました。感謝です。

 おかげで、残りの第十三位の性格もがっつり決まりました。


 物語のテンポは少しゆっくりになってしまいましたが、結果的にはこれで良かったのだと思っています。

 個人的には、キャラの心理描写をすっ飛ばすことだけはしたくないので。



 えー。

 後は、……工夫? 工夫……。……。


 ハリエットの口調は、最初、迷走していました(どんな暴露)。


 敬語? タメ語? おませ? ツンデレ? 素直? 元気? どんな女の子が良いのだ? と。

 元々は、最後に見せた口調が本当の彼女の喋り方なので、それとかけ離れた感じ、かけ離れた感じ、と念じていたら、少しミーナに似てしまいました。

 結果的には、カイリが彼女を懐かしむ、重ねる、という描写になったので良かったのかもしれません。


 後は、マシューやハンスといったお供の前では、本来の口調が出かける、という描写を少し入れました。勘の良い方は、「おや?」と思ったことでしょう(笑)。

 カイリに対して、いつ口調をお披露目するのか。


 それは、――まだ分かりません(作者です)。



 後は、カイリの首謀者に対する雄叫びですね!

 いきなりハリエットに対して熱烈な愛を叫び始めたので、読まれた方はさぞ混乱したことでしょう。私も混乱しました(作者です)。

 ただ、あれは、もう、ええ。カイリが勝手に叫び始めたので。これが、キャラが勝手に動くという確固たる証なのです……。


 おかげで、彼にロリコン疑惑がかかりましたが、シュリアはあまり相手にしませんでした。というか、ここでさらっと受け流すあたりも、シュリアの性格の方向性が決まった一つですね。

 逆にフランツは、本気にしたという、ね。彼、実は騙されやすいんじゃないだろうかと、ちょっと心配になりました。本当のところはどうなのでしょうか。


 あと、フランツは大根役者。シュリアは突っ込まずにはいられない。


 とことん、二人の性格形成が着々と固まっていったのでした。



 工夫とは!

 キャラが勝手に動くことです!(工夫でも何でも無い、というツッコミは受け付けません)


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各物語の小ネタ&裏話 和泉ユウキ @yukiferia

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