歌声

八田部壱乃介

歌声

 静かな夜のことだった。

 風呂から上がったアキラは、濡れたままの頭にタオルを被せて、ソファに倒れ込むようにして身体を預けた。ソファの包み込むような柔らかい感触に、疲れが溶けていくような錯覚を覚える。アキラは少しばかり身体を起こすと、テーブルに置いてあったスマートフォンを手に取った。といっても、特に何かしようという目的がある訳でもなかった。こんな時間にメールも電話もするような理由などなかったし──別段、友人との関係も悪くはないから繋げたところで、問題はなかっただろうが──暇つぶしのためという名目で手に取ったので、そこまで考えていなかった。

 アキラには趣味と呼べるものは少なかった。指折り数えてみても、きっと片手で済んでしまうだろう。現代っ子であるという自負はあったが、大学生という若さがあるにも関わらず、溌剌さが欠けていて、何処か惚けたような人間だった。だから、ゲームだとかスポーツだとか、そのようなあまりに激しい趣味は持ち合わせていないのだ。代わりに、音楽を聴いたり読書することは好きだった。思うに、自分から積極的に動くことが苦手なのかもしれない。アウトプットよりもインプットの方が性に合っているのだ。アキラはそんなふうに自己分析していた。

 まあ、実際のところはどうだか分からないが──

 アキラはさっぱりと冷えた性格であったから、自身の分析を真実だと鵜呑みにせず、柔軟に考えることが出来ていた。物事は非常に多面的な性質を持つものだから、それを自分の目で見る以上は主観的であることは否めない。ならば、複数の視点から考えられるようにするべきなのだ。アキラはそう考えていた。これは、友人のお陰かもしれない。これはアキラによる純粋な考えではなかった。友人の思想を聞いてから、そんなふうに思うようになったのだ。つまりこれは、後天的な思想なのだ。そう考えると、アキラはその友人から随分と影響を受けたことになる。そして実際に、影響を受けたのだろうな、とアキラ自身そう思ってもいた。

 スマートフォンに飽きてしまったアキラは、それをテーブルの上に戻すと、代わりに読みかけの文庫本を取った。ジャンルはミステリである。アキラの好きなジャンルだった。ひとつの問題に対して、必ず答えが用意されているためである。道徳のような解釈学とは違い、これは数学のような一種の思考実験かゲームに近しい。或いは、パズルだろうか。頭はそこまで良くはないと思うが、論理を組立てることは好きだった。文庫本の丁度半分ほどのところで栞が挟まれている。物語が佳境を迎えるところで、昨日は本を閉じてしまったのだ。続きが気になっていたアキラは、開くなりすぐ様読み耽っていた。

 いつの間にか時間が過ぎ去っていた。

 時刻は深夜の二時半。もうそろそろ眠る頃合いだろう。そう判断したアキラは、栞を挟むと本を閉じた。瞬きが少なかったのか、少しだけ目が疲れていた。長いこと集中していた所為であろう。しかし、スマートフォンを見ているよりは幾許かはマシなはずだ。そう考えてアキラはふう、と息を吐きながら大きく伸びをした。次いで欠伸が出た。眠気が泉のように湧き上がり、瞼が泥のように重くなる。

 歯を磨こう。

 そう思った時、

「────」

 何か音がした。

 否。それは単純な音と言うよりは、声に近いだろう。抑揚こそなかったが、どこか歌のようにも聞こえた。調子はそこまで早いものではない。しかし、だからといって遅いようにも感じなかった。アキラはその時無意識的な状況下にあった。頭の中は只、「眠い」と「歯を磨こう」のふたつしか言葉は浮かんでおらず、その歌声──と明晰には断言できないが──を聞くまではぼうっとしていた。

 それを最初に聞いたときの感想は、「ああ、綺麗だな」というものだった。それは女性の声によるもので、美しく上品に感じさせるものだった。突如それが聞こえてきた訳だが、アキラは驚くことはなかった。どこか違うところ──例えば隣の部屋からでも聞こえてきたのだろうと思ったからだ。声が漏れ聞こえてくることはままあることではあった。流石に毎日聞こえてくることはないが、それでも時間帯によってはそんなことも起こっていた。アキラにとっては常識の範囲内だった。……深夜に音を漏らすというのは非常識かもしれないが。だから、このときアキラにはその音が隣の部屋からのもとであると思っていた。しかしそれが違うということは、すぐにアキラにも頭に浮かんだ。

 今の言葉は一体何処から聞こえたものだろうか。

 そんな疑問が頭に浮かんだ。

 何故今更そんなことを考えたのか、アキラは不思議だった。今までの経験からくる常識に則って考えると、それは隣の部屋からの筈である。隣人はほぼ毎日、深夜であるにも関わらずテレビの音を静かにすることもなく、視聴しているらしいのだ。だから、度々ここにも音が伝わってくる。今回の歌声も例に漏れずそれが原因なのだろう。

 ──いや、違う。

 何故だろうか、アキラはほぼ断定的にその考えを否定していた。全ては直感によるものだったが、やけに自信があった。自信と言うよりも、確信と言うべきか。少なくともアキラにはそれが隣の部屋からのものではないと──そう認識していた。外部からではなく、内部から聞こえたような気がしたのだ。

 では、一体何処から?

 この部屋からということはないだろう。テレビだって既に電源を切っているし、携帯には手をつけていない。他に音が出るようなものといえば、電話、ノートパソコンくらいだろうか。だが、そのどちらにも手をつけていないし音が出たような覚えはない。とすると、この部屋からでは無いのだろうか。

 アキラは玄関口を覗いた。リビングルームと玄関へと繋がる廊下は、その間を扉で仕切られており、扉はこのとき閉じられていた。玄関口は電気がついていないので暗く、ここからは何も見えなかった。けれど、とアキラは思う。

 けれど、確かに歌声はこちら側から聞こえたような気がする。

 そう思えてならないのだ。

 ソファから立ち上がるなり、アキラは扉を開けて玄関口へと赴いた。そこにはアキラが期待していたような、歌声の原因となるような理由があるようには、見えなかった。

 アキラは首を傾げると、扉を閉めた。


「それ、幻聴なんじゃないの?」

 それがアキラのの話を聞いたユカの第一声だった。

「疲れてるんじゃない? それとも、幽霊に憑かれてる?」

「面白くない冗談だよ、そりゃあ」

 期待していたような感想でなかったことに失望やら呆れやらを感じて、アキラは短くはぁ、とため息をついた。それから、肩を落とし、げんなりとした様子でユカを見つめた。ユカは肩を竦めると、

「まあまあ。でも、それって本当に部屋の中から聞こえたものなの? 隣の部屋からなんかじゃなくて?」

 ユカは両手に顎を乗せて、上目遣いでアキラを見やった。それは疑いというより好奇心からくる質問のようだった。そのポーズは大きな瞳がより一層目立って見える。そう見えるのは服装も関係しているのだろう。ユカは黄色のコートに白いパンツスーツと、かなり派手に感じるものだ。しかし、ユカはそれを見事に着こなしている。対してアキラはと言えば、黒いパーカーにジーンズとラフなものだった。比較されるのも恥ずかしいくらいに、差があった。しかし、アキラにはお洒落というものへのこだわりがなかったので、そこまで深く沈むこともない。

「声は隣の部屋からじゃないと思う」アキラはその時のことを思い出しながら言った。「少なくともそう思った」

「ふうん」ユカは気のない返事をして、グラスに注がれた珈琲をストローで吸う。「じゃあ、聞き間違いだね。他の音を声と勘違いしたのよ」

 二人は街中のカフェで食事をしていた。今は午後十二時を少しすぎた頃。ユカの方から誘われて、アキラは今こうしてユカと対面するようにして、席に座っている。アキラが今この話題を口にしているのは全くの偶然からだった。店内に流れていた歌に耳を傾けていたとき、その不可思議と言うにはパンチが弱いかもしれないが──奇妙な歌声のことを思い出した。そして、その正体が何だったのか? それをユカに聞いてみようと考え、口にしたのだ。

 その結果がこれだった。幻聴だとか、勘違いだとか。まあ、否定は出来ないが。

「例えば何の音で勘違いしたのさ?」

 アキラは自分の聞いたことなのにユカに聞いているのは、何だかおかしな状況だな、とそう思いながら聞いてみた。何か考えがあるようには感じられないような軽い話し方ではあったが、取り敢えず聞いてみたいと考えていた。

「そうだなあ。例えば……」ユカは暫く考えているようだった。

「例えば?」アキラは少し身を乗り出して繰り返す。

「水の音、とか」

「は?」アキラは口が開いたまま閉じなかった。「えっと……どういうこと?」

 ユカは腕を組んで、考え込むように目を瞑った。

「その前にひとつ質問させて貰いたいんだけど、アキラん家の洗面所というか風呂場って玄関とリビングルームを仕切る扉から見て、玄関側にある?それともリビングの近く?」

 アキラはその質問にはぴんとこなかったが、「リビングの近くだね」と言った。「玄関口から入って扉を開けると、その向こうに洗面所と風呂場、リビングルームがある」

「扉よりも内側に洗面所とか風呂場があるわけね?」

「そうなるね」

 アキラはユカが意外にもきちんと話を聞いていたことに驚きながら言った。あまり興味がなさそうに感じていたし、まるで話を聞き流しているようにも思っていたのでかなり驚いた。同時に、アキラの部屋の間取りがある程度漏れたようだが。

「歌声は玄関口の方から聞こえてきたわけでしょう。それで、風呂場からは水の滴る音がしたんじゃないかな。ということはだよ、もしかしたら、その滴の垂れる音が歌声に聞こえたんじゃないの?」

 ユカの言葉を頭の中で並べて、何回かそれを反復させてから漸くアキラにも理解出来た。

「いや、まさか」それが理解した上での返答だった。

「それじゃ、どういうこと? 水の音を歌声のようだなって思って聞いていた? いや、そんなことある訳が──ないよ。流石に」

 アキラは手を仰ぐようにして否定した。どう考えても、それは有り得ないことだろうと思った。自分が聞いたことくらいは自信が持てるし責任も持てる。それは断じて水の音なんかではなかった筈だ。それを人の歌声と勘違いする訳がない。

「本当に?」ユカは尚も突っかかる。

「そりゃあそうだよ。寧ろさ、どうやって勘違いしろって言うのさ」

 簡単だよ、とユカは笑った。

「多少ばかり寝惚けていればいいんだよ。だって夜中の出来事なんでしょう?それなら眠いに決まってる。もしかすると、少し夢を見ていたのかもしれないし。とすると、現実に聞いてた水の音を、夢の中で歌声として認識したのかもしれないわ」

「うーん」

 そんなことってあるだろうか? 確かにその当時はぼうっとしていたのかもしれないが、夢を見ていたにしてはあまりに現実的な──まるですぐ側から聞こえたかのようだった。いや、現実的であるというだけで現実ではないのか。

「それに、風呂場ってなかなか音が響くものでしょう?なら、寝惚けている前では脳味噌がしっかりと働いているから、それが滴の垂れた音だなんてことが分かるけれど、その時貴方は──」

「寝惚けていた、と」アキラは苦虫を噛み潰したような表情でそう言った。

 ユカは満足気に「そう」と頷く。

「夢を見ていたのよ、貴方は。それで、勘違いしたのね、きっと」


 その日の夜、アキラはひとりで悶々と悩んでいた。忘れかけていた歌声について、新たな解釈が加わったからだ。曰く、寝惚けて夢現だった。だから、現実にない歌声を錯覚してしまった、というのだ。

「まさかなぁ」アキラは思わずそう呟いていた。

 本当にそうなのだろうか。未だに納得出来ずにいる。確かにそんなことも起こり得るかもしれない。だがアキラは現に、それを確かに水の音だと認識したのだ。その後で歌声と混同することなどあるだろうか? もしもユカの言う通り、寝惚けていることが原因だったとするならば、それは再現出来るかもしれない。再現してみればその歌声が何だったのか、その正体が分かるだろう。アキラはその真偽を確かめるために、その日と同じ状況を再現した。つまり、風呂上がりにソファでゆっくりと休んでいた。

 文庫本を手に取り、ページを開く。アキラは続きを読むことにした。それから文字を読むことに集中する。物語に入り込むと、周りの音が全く耳に入らなくなっていく。ページを捲り、文字列を目に焼き付ける。同時に、情景が頭に浮かんだ。これは一体どういう事なのだろう? 物語内にて提示された謎について考え込む。

 ──あの歌声はどういう事なのだろう?

 読書中だというのに、現実での話に興味が持っていかれてしまった。こうなってしまうと、他のことには一切考えが及ばなくなってしまう。思考回路が直列繋ぎなのかもしれない、とアキラは思った。ひとつの事に集中すると、周りが見えなくなるのだ。それ以外のことに頭が働かなくなる。ダブルタスクとか、ダブルシンクなんてものは、自分には出来ないだろう。アキラは昔からそういう性質たちだったのだ。そしてそれは今でも継続している、という訳だ。

 文庫本を開いたまま、テーブルにページが下に来るよう被せて置いた。思考に集中するためだ。こんな状態ではもう読書体験などには戻れない。ある程度の疑問に対する答えが提示されない限りは、納得して日常に戻ることが難しいのだ。頭の中はひとつの謎で埋め尽くされる。

 あの歌声の正体は?

 アキラは唸った。どうにもその正体らしき可能性が浮かばなかったからだ。ユカのような、もっと柔軟な発想が必要なのだろうか。それならば、推理を纏めるだけの要素をもっと集める必要があるかもしれない。自分で考えるには情報が足りないように思えた。取り敢えずその時の状況を、頭の中に思い描くのだ。

 それは深夜二時半のときのことだった。当時、アキラは風呂上がりだった。ソファにもたれかかって、スマートフォンを弄っていた。それから、読書に興じたのだ。栞を挟んだところから読み始め、眠くなってきたので歯を磨こうと立ったとき、突如歌声が聞こえてきた──

 駄目だ。纏めたは良いものの、意味が分からない。アキラは頭を抱えたくなった。

 まず、その歌声が聞こえたのは何処からだったのか。そこから考えることにしよう。アキラは顎に手を乗せて、じっくりと頭を働かせる。まず最初に思い浮かんだのは玄関より外の廊下を歩く人の声だった、という可能性について。その正体は隣人かもしれないし、もっと隣の部屋の人かもしれない。この部屋の前を通り過ぎた人の歌声だったのだ。そう考えると、辻褄が合わなくもない。

「でも……歌声はこの部屋から聞こえんだったよね」

 アキラは誰にともなく独り言を呟いていた。そして、それに気がついて、途端に恥ずかしくなった。頭を振って、再度思考に集中する。

 先程の反論の通り、部屋は玄関側とリビングルームを仕切る扉よりも、内側──リビングルームの中で声は聞こえたのだ。そうなると、玄関口から声が聞こえてきた、と考えるのは少し無理があるかもしれない。まさか、玄関前を通った人の鼻歌が、リビングルームにいるアキラの耳にまで届く筈はないだろう。深夜とはいえ、壁に遮られ扉によって閉じられていたのだから。聞こえるとは思えない。

 よって、この可能性はなしだ。

 次の可能性は、手に持っていた携帯電話から音が鳴った、というものだが……。

「流石にこれは気がつくな」

 いくら寝惚けていたとはいえ、すぐにその正体を突き止めたことだろう。どれだけ深い眠りにあっても、目覚まし時計の音で目が覚めないことはなかったのだ。アキラが近くから聞こえる音を勘違いする筈がない。

 そうなのだ。

 そもそも、近くで聞こえた歌声を勘違いする筈はない。それだというのに──現にアキラは勘違いしてしまっているらしく、その歌声の正体が何だったのか分からないままでいる。自分は相当に寝惚けていたのだろうか。アキラはそこで考えることを止めた。本当に眠くなってきたのだ。

 歯を磨いてから、部屋の電気を消して、ベッドに潜り込んだ。そうして、目を瞑る。視界が真っ暗になり、辺りには静寂が闇と共に訪れる。そこでアキラは気がついた。

 風呂場からは水の音が聞こえてこない、ということに。


「なるほどね。これで、水の音だったっていう説は否定された訳だ」ユカは楽しそうに微笑んだ。「とこに就いて静かにしていたのに、滴の垂れる音なんて聞こえなかったんだもんね。その日だけ偶然聞こえたのか、或いは、床についたときだけ聞こえなかったのか。実際のところどうだったのかは分からないけどさ。どちらにせよ、聞こえなかったということは、少なくとも水の音を聞いていた可能性が低い、ということだね。これも仮定だけど、寝惚けてたんだから、水の音がしていても聞きにくいだろうし、最初から可能性は低かったってことかなあ」

 ユカは子供のようにストローを噛みながら喋った。今日は白いセーターにダメージジーンズを履き、伊達眼鏡を付けていた。アキラはといえば、今日もパーカーにジーンズである。いつもの恰好だ。お洒落には興味がないので、ユカのように気を遣うことはなかった。

「結局、何だったんだろう」アキラは問いかけるような言い方をした。それに対してユカは、

「幽霊の仕業なんじゃないの?」

「えっ」

 狼狽えてアキラはむせた。そんなアキラの様子を見て、ユカはにやにやと笑いながら、ジュースを飲んだ。とても意地悪な目をしている。

「幽霊なんて、そんな……」アキラは幽霊などのホラーは苦手だった。「やめてくれよ。もう帰れなくなるだろ」

「だったらうちに来る?」

「行かないよ」アキラは頬杖をついて口を尖らせた。

「まあ、幽霊じゃないとして、一体何が原因なんだろうね。不思議だなあ」

「楽しそうにして……こっちはちょっと怖くなってきたってのに。他人事だよなあ」

「他人事だからね」ユカは楽しそうに笑った。

 店員がやってきて、アキラの頼んだたらこスパゲティがやってきた。短く礼を告げてから、口をつける。非常に美味かった。ユカが「ちょっと頂戴」と言ってフォークでつつき、「美味しいね、これ」と二口分食べていった。ユカの頼んだ料理はまだ運ばれてこない。

「それで……結局のところ水の音がしなかったんだよね。そうなると、扉よりも向こうの音が聞こえないだけじゃなくて、リビングルームの近くの部屋からも音はしなかったってことになるね。何しろ、なんの音もしなかったんでしょう?」

「うん。何も聞こえなかった」アキラは返事する。

「うーん。なるほどねえ」ユカは腕を組み、「やっぱり、水の音は関係ないとして、聞こえなかったことに理由があると考えるよりも、歌声が聞こえたのは何故か、って考えるべきだね」

「そうだね。──でも、原因が何も思い浮かばない」

 ユカは首を縦に振った。

「情報が足りないからね。──ねえアキラ、もっと何か無いの? 例えば、そう。その日にだけあったこととか、寧ろ普段はあるのにその日だけなかったこと、とか」

「異常がなかったかどうか、ってこと? そうだなあ。その日は、普通だったと思うけど。普通ってのは、つまり、いつも通りって意味ね」

「そうなの? じゃあ……難しいねえ」ユカは椅子にもたれかかって点を仰いだ。「原因不明だわ。Q.E.D.証明未完了ね」

「うん」アキラはジュースを飲んだ。

 このタイミングでユカの頼んだカルボナーラが来て、彼女は早速食事に取り掛かった。話題は何度か変わっていき、アキラは歌声のことなどとうに忘れていたが、二人共食べ終えた辺りでユカが歌声のことを再び口にした。

「それで、アキラはどう思ってんの?」

「何のことさ」

「何って、歌声のことよ」そう言ってユカはフォークの先をこちらに向けてくる。

「どう思ってるのって言われてもなあ。単に聞き間違えただけなのかなって。勘違いというかなんというか」

「でも、間違えるにしても、何か知らの原因というか、理由がある筈だよね? 勘違いだとしても、それを勘違うための大元の──音があるでしょう。何と歌声を聞き間違えたのか。心当たりはあるの?」

「心当たりか──」アキラに心当たりはなかった。

 少しばかり回想してみるが、その時に音の鳴りそうなものと言えばやはり、テレビとかスマートフォンくらいのもので、どちらも電源が切れていた。携帯はともかく、テレビについては確実に画面がついていないことを確認している。

 その他の部屋の音が聞こえてきたのだという可能性もなくはないだろうが、そうなるとその音がリビングルームにまで届くのか、という問題がある。聞こえてくるのかどうかは、確証はない。

 そこまで考えてから、アキラは「微妙かな」と答えた。それから「いや、やっぱりないよ」と結論した。

「じゃあさ、歌声は具体的にはどこから聞こえてきたかってのは分かる?」

「どこから聞こえたか? そりゃリビングルームからだったけど」

「いや、そうじゃなくてさ。部屋のどこから──アキラにとってどの方位から聞こえてきたかを教えて欲しいんだよ。耳元? それとも距離はもっと離れてた?」

 アキラは顎に手を当てて考え込んだ。果たしてどこから聞こえてきただろうか。暫く思い出そうと記憶の中を探ってみたが、アキラにはよく分からなかった。ぼうっとしていたのが大きいだろう。音源がどこだったのか、はっきりとしない。

「それも分からないかな。気がついたら、歌声が聞こえてた、っていうか」

「聞こえる、じゃなくて聞こえた、なのね。要するに今聞こえてる、って事じゃなくていつの間にか歌声がしてた」

「ああ、そんな感じ」アキラは肯定した。

「ふうん。なるほどねえ。ということは、うーん」ユカは手で顔半分を覆うようにして、何やら考え込んでいる様子だった。

「何か分かったの?」

 ユカは下がっていた顔を上げると、「え? いや、うーん。微妙かな」と、何ともはっきりしない返事をした。


 その日の晩──アキラはふと歌声は幽霊だったのではないか、というユカの説を思い出した。曰く、その声は幽霊のものであるというのだ。そんな訳はあるかとは思うものの、どこかその可能性を捨てきれず、頭に残って消えなかった。そしていつしか、それは恐怖へと形を変えてアキラを怯えさせた。

 時刻は既に午前二時を少し過ぎたところだ。二時間ほど前からベッドで横になっていたが、その恐ろしい可能性の所為で、アキラの目はギンギンに開きっぱなしになっている。瞼を閉じれば暗闇から幽霊が迫ってくるようで、長いこと目を瞑ることも出来ず、かといって眠らなくては明日に影響する。アキラは今、困難に立たされていた。

(横になっているから、この場合は、困難に横になっているって言うべきかもしれない)

 頭の中でそう冗談を考えるが、一向に精神は休まらない。いつもは部屋を暗くしないと眠れなかったのだが、今日ばかりは薄めの照明を付けている。それでも、部屋の隅は漆黒に塗りつぶされていて、今にも何かが生まれてきそうに思えてしまう。

 幽霊の存在などあるはずはない。この世にいるはずがない。有り得ないことなのだ。頭ではそう理解しているつもりだったが、どうやら想像力というのはそれを生み出してしまうものらしい。アキラにはどうにも、いるのではないか? と錯覚を覚えそうになっていた。

 そして、すんでのところで現実の世界へと戻ってきていた。

 幽霊とはつまり、妄想の世界の住人なのだ。彼岸ではなく、頭の中に居る。それを、現実と見るか、妄想と見るか。そこの線引きをはっきりとしなければ──或いは、出来なければいけない。

 アキラは仰向けになって毛布を両手で掴むと、胸のあたりまで引き上げて、両目を瞑った。辺りは静寂に包まれた。目の前は何も無く、暗い。色々な音がする。轟々という音。これは水道の流れる音だろうか。どこか別の部屋で、誰かが水を流している。ざあざあという音がする。外で雨が降っているのだ。昼は雲一つなかったというのに、夕方頃から突如降り出した。

 こうしてみると、周りからは様々な音がしているものだ。アキラはそう思い、目を開けた。天井が見える。一点を見つめ続けていたが、体を横に向けて、壁を見た。そこには箪笥がある。視覚から得られる情報と、聴覚によって得られる情報とで、今までは何の気なしに過ごしていたが、実のところ、沢山の情報を得ながら生きていたのだということに、アキラは気がついた。

 しかし、だからといって歌声の正体について何か分かったかといえば、そうではない。歌声が一体何によって引き起こされたものか、皆目見当がつかないし、こういうのは閃きなのだろう。だから、今のところ何も思いつかず、さっぱりだった。

 アキラは再び天井を見上げる。

 (複雑に考えすぎていたのだろうか? ……つまり、物事を別々に引き離してみるべきとか)

 んん、と唸り声をあげながら目を瞑り、毛布の中で腕を組むという、アキラの思う考えるポーズを取ってみたが、やってきたのはアイデアというよりも睡魔ばかりで、眠くなって思考が途切れた。それから意識が落ちそうになったところで、

「あ──っぶない……!」

 何とか持ちこたえた。

 いや、眠っても良かったのだろうが、このときはどうしても歌声の件の解決を優先させたかった。一度眠気を耐えてしまうと、寧ろ、今度は眠気がさっぱりと消えてしまった。アキラは眠ることを諦めて、ベッドから起き上がり、胡座をかいた。

 幸いと言うべきか、明日は授業がなくバイトのシフトも入っていない。つまり、一日中休みだった。だから、明日はどれだけ遅くに起きようとも構わないのだ。アキラにとっての休日の過ごし方は、基本的にインドアなものだったので、普段と変わらなかった。明日はゆっくりと家で休んでいることにした。

 歌声はあの日以来──とはいえ、まだ数日しか経っていなかったが──聞くことはなかった。おかしかったのはあの日だけだ。あの日と昨日今日とで、一体どう違うのか。聞こえるのと聞こえないのとでは、どんな理由から区別されるのか。

 考え込んでみるが、やはりと言うべきか、何も浮かびはしない。昨日と同じことを繰り返しているような気がする。アキラは頭を掻いた。ぼさぼさと無造作なヘアスタイルになった。

(ドライヤーでよく乾かしたんだけどな)

 アキラは膝の上の手に顎を乗せて、そう思った。

 ユカと食事をした際に、何だか彼女は──歌声の正体にだろうか──気がついたかのような仕草をしていたような気がする。アキラが分かったかどうか尋ねると、微妙かなと曖昧に返事されたのだったか。

 あれはどういった意味なのだろう? もうユカには全て分かったのだろうか。何かしら思いついたのか。閃いたのか。だとすれば、何から着想を得たのだろうか。今までの会話からヒントなどあっただろうか。いや、それともアキラの体験にこそその正体に迫る事実が隠されていたのか──

 何も分からない。

 頭の中が混沌として疲れてきたところに、ひとつの可能性が浮かび上がった。しかし、どうにも有り得ないことだ。現実的ではない。それ以上に、これはどこかファンタジーですらある。アキラからすればこの結論は悪夢と言えるかもしれない。そんな可能性を、アキラは思いついた。

 つまり。歌声の正体は幽霊だった。それも、比喩でもなんでもなく、本物の幽霊──所謂、死者の声だったのだ。そして、それをアキラは偶然か必然か、聞いてしまったのだ。

 とんでもなく飛躍した解答だ。流石に良識と常識を持ち合わせた者であれば、こんな馬鹿げた結論には着地しないことだろう。だが、幽霊以外に納得出来る解釈は果たしてあるだろうか。

 その歌声はアキラの居る部屋から聞こえてきたのだ。そして、その部屋の外から聞こえたという可能性は低い。少なくとも、玄関口からではない。また、風呂場も除外していい。水の音はしなかったから、音は遮断されているのだろうと考えられるからだ。窓から隣の音が聞こえてきたということも考えにくい。これは直感だったが。

 そういえば、隣室からの音が漏れ聞こえてくることが、最近になって減っている。テレビの音がやかましく感じたものだが、聞こえなければ聞こえないで、それはそれで気になるものだ。隣の住人は、確かサラリーマンだったか。この時間は部屋に居ないのだろうか、今日も静かに感じる。……隣室は歌声とは関係ないのだろうか。ここまで考えておいて、よく分からなくなってきた。

 話が脱線した、とアキラはそう思った。

 幽霊がその正体なのではないかと考えるのは、しかし、アキラにとってはなかなかに論理的思考に基づく結論ではあった。まず、部屋の外から聞こえたようには感じず、これは直感によるものが大きいが、隣室からでも玄関口からでもないのではないか──と仮定した。すると、部屋から歌声が聞こえたということは、部屋の中に音源があるものと考えられる。音源を探し検討してみるが、スマートフォンもテレビもそれには該当しない。であれば、目には見えない音源が──他にあるということだ。つまり、幽霊がいる、ということになるのだ。そう言えば、それを聞いたのは午前二時のこと。丑三つ時のことだったか。ならば、やはり──

 そうだ。そうに違いない。これで漸く真実が分かった。安心して寝れる……筈がなかった。

 今はあの時と同じく丑三つ時だった。つまり、幽霊がいるのであれば、この部屋はもう、危険だということになる。

(眠れるわけがない!)

 ただでさえ睡魔が晴れたというのに、今度は恐怖から目を瞑ることさえ出来なくなった。部屋が暗くてどうしようもない。ベッドの上に座っているアキラは、電気を付けようと立ち上がる勇気が失せてしまった。恐怖には勝てない。

 アキラは毛布に包まると、恐怖に固まったまま、やがて、朝を迎えるまで目を血走らせていた。


 いつの間にか、アキラは気絶したように深い眠りに落ちていた。それは夜明けのことだった。目が覚めたのはそれから八時間後で、それまでは少しも起きる気配はなかった。起きてから、アキラは自身が熟睡したことを悟った。寝落ちと言うのだろうか。それはアキラにとって初めての体験だった。今までは寝ようと思わなければ眠れず、眠りたいときは横になって、自分の意思で眠っていた。だから、いつの間にか眠っていた、というのはなかなかに奇妙な体験に感じた。

 アキラはベッドに座った後、前に崩れて突っ伏したように眠っていたようだった。そのために、胡座をかいたまま頭を垂れた状態にあり、血の巡りが悪くなっていて、足が痺れている。体育座りのような姿勢をとり、血を循環させる。体育座りというのは、足の裏を地面につけるのできちんと血が通うようになるらしい──と、テレビか何かでやっていたのを聞いたことがあった。それを早速試してみたわけだが、どうやらアキラにはそれが真実であるように感じられる。確かに痺れが徐々に薄らいだのだ。

 その後漸く立ち上がれるようになり、テーブルの上の携帯に手を伸ばした。見てみるとユカから連絡が来ていた。用件は、『今日の昼にいつものカフェで』とある。アキラは欠伸をしてから、寝ぼけ眼を擦った。時計を見てみる。今は午前十一時五十分。昼の十分前だった。

「ギリギリじゃん!」

 焦って身支度を整える頃には午後になっており、ユカには『少し遅れる』とだけ返事しておいた。だが、彼女は自分の方からは連絡をするくせに、自分に向けられた連絡は全くもって気にしない──というか、殆ど無視と言っても過言では無いくらいに確認しない。彼女曰く、「忘れちゃう」とのことだったが、一体何を忘れるのか説明になっていない説明をしていたのを記憶している。こんなだから、きっと今送ったアキラからの連絡も見ていないことだろう。恐らく、遅れてきたことに対して、ユカは怒るかもしれない。

 そう考えると、アキラは肩を落とした。

 果たして、訳を話すと友人は許してくれた。それどころか、幽霊に怯えて眠れなかったのだと知って大笑いし、アキラは少し恥ずかしくなった。

 それからいつも頼んでいるたらこパスタがテーブルに置かれるのを見ると、アキラはフォークを突き立てた。

「そういえばさ。あの話」おもむろにユカが口を開く。

「あの話って?」

「歌声の件だよ。歌声。前に聞いたっていうやつ」

「ああ──」アキラは食べ物を飲み込んでから、「それがどうかしたの?」

「いや。特に何かあるって訳じゃないけど。もしかして、こういうことなんじゃないかなっていう、可能性をひとつだけ思いついてさ」

「思いついたって……つまり、歌声の正体についてのこと?」

 そうそう、とユカは首を縦に振る。

「私、分かっちゃったかもしれない」

「え、本当に?」アキラはユカをまじまじと見つめた。「あっ、ドレッシングが口についてる」

「あら」と言ってユカは口の周りについていたドレッシングを、紙で丁寧に拭き取った。

「それで、本当に分かったの? 歌声が何だったのか」

 アキラは三日三晩考えに考えたが、今の今まで分からないままだった。昨晩なんかは幽霊による仕業なのではないか、とも考えて一人で盛り上がっていたが、今ではそれも有り得そうにない話だ、と思い始めている。幽霊の声を聞くだなんて、聞いたことがない。過去に前例があったとして、それが今回のケースにも当て嵌るかどうかも分からないのだ。取り敢えず、ユカの話を参考までに聞いてみよう。全ての判断はそれからでも良いだろう。アキラはそう考えた。

 ユカは先程の質問に「うーん」と歯切れ悪く頷いた。

「取り敢えず、順序だてて説明するね。この可能性って、結構結論が飛躍してるところがあるからさ。だから──まずはその周りから説明していくためにも、その当時のアキラの状況を振り返るわね」

「成程。分かった」歌声の正体が幽霊によるものだった、という説よりは大分マシな結論だといいな、と思いながらアキラはそう返事した。

「今から三日前の夜のこと。確か深夜の二時のことだったっけ?」

 ユカは確認するようにアキラを見た。

「そうだね──うん。間違いないよ」

「アキラはスマホを見たり、読書をしているうちに、何だか眠くなった。それで、前回私はアキラは寝惚けてたんじゃないか、って結論したよね。覚えてる?」

「ああ……うん」確か、そんなことも言われていた。「覚えてる」

「私はね、今でもその結論が間違いとは思ってないの」

「ということは、今でも」

「そう。今でもアキラはその時寝惚けてたんじゃないか、って思ってるの」

 ユカはアキラの言葉を遮るようにして言った。

「まあ、それが前提条件なんだけどね。まず、ひとつ。アキラは寝惚けていた。これを基に次の仮説を立てていくよ。ここまではいい?」

 寝惚けてた、とここまで繰り返されれば嫌でも分かる。アキラは苦虫を噛み潰したような表情で頷く。

「そして次ね。歌声を聞いたタイミング。それは寝惚けていたときだった。合ってるよね?  ──それで、歌声は聞こえたけど、その正体だけは分からないという事態になったのね。それからその声は部屋から聞こえたとか、部屋には音の鳴るようなものはあるけど、関係はなさそう、とか色々と考えたみたいね。でもさ、もう一つあるじゃない。音の鳴るもの」

「どういうこと?」

 アキラにはぴんとこなかった。寧ろ、今ので察せるだけの思考力があれば、とっくに歌声の謎は解けているだろう。

「じゃあ、そうだなあ。質問を変えるね。ねえ、アキラ。その時の歌声ってどんな歌だったか再現出来る?」

「え、ここで歌えってこと? カフェの中で?」アキラは顔を近づけて、声を顰めるようにして言った。そうよ、とユカは言う。

「さあ、やってみて」

 アキラは恥ずかしく思い気が引けたが、しかし、ユカがやれと言うのだから何かしらの意味があるのかもしれない。何も意味がなかったら流石に怒っても良いだろう。

 アキラは咳をして喉の調子を検めると、テーブルのまわりにしか聞こえないくらいの小声で歌った。

 あれ?

「気がついたみたいね?」ユカはにやにやと笑っていた。

「この声──あの時の歌声と」

 そっくりだった。いや、少し表現が違うかもしれない。

「同じだ」と言うべきなのだ。

「やっぱりか。つまりね、アキラ。説明するとこういう事になるの。貴女は寝惚けていた。そして、無意識に歌っていたのよ。だけど、歌っていたことに気がつかないで、──歌声だけを聞き取ってしまった」

 そんなことがあるのだろうか。

「そうね。例えて言うなら、寝言みたいなものかしら」

「寝言……」アキラは繰り返した。

「うん。寝ているときの寝言で目が覚める、なんてことがあるでしょう?」まあ、私は無いけどね、とユカ。「今回の謎は、そう考えると解けるのよ。貴方は自分の寝言で目が覚めたの」

 どう? とユカは胸を張ってみせた。しかし、アキラはどう言うべきなのか、驚きすぎて反応に困っていた。

「つまり──ええと、私の声でここまで悩んでいたってこと?」

「うーん。まあ、そうなるね」

「な、なんだかなあ……」

 急に全身から力が抜けていくような気がして、アキラはそう言って脱力した。

 なんて馬鹿らしい結論だろうか。こんな簡単なことにずっと悩まされていたのか。そして、何故気がつかなかったのか──反省が止まらない。

「そんなになって、どうしたのよ」ユカはアキラの腑抜けた様子に笑いながらそう言った。

「いや、なんでもないよ……なんでもない」

「二回繰り返すのって、意味ありげだよね」

 ユカはレタスを頬張ると、口をぱくぱくと動かして美味しそうに微笑んだ。

「でもね、これが答えって訳じゃないからさ。本当のところ、何があったのかは私にも分からないわよ」

「それにしてはあの歌声は私と凄く似てた。──というか同じだった」

「それは偶然かもしれないでしょ? 実は本当に幽霊の仕業だったかもしれないしさ。例え、本当に寝言が正体だったのだとしても、そんなに気を落とさないでよ。パスタを食べて元気出して」

 アキラはぼうっとしながらフォークを回してパスタを巻いていく。そして、口の中に入れた。

「美味しい」

 それから見る見るうちに活力がみなぎってきて、元気が戻った。やはり食事って素晴らしい。どんなに気分が沈んでも、すぐに回復する。

 それからアキラたちはたわいもない話に盛り上がり、いつしか歌声のことはアキラの頭の中からは綺麗さっぱり消えていた。

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歌声 八田部壱乃介 @aka1chanchanko

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