第8話 女は仮面を被っているか?否か? root A組

 A組との戦いから二ヶ月が経っていた。まだ五月ということもあり桜はまだ入学式の時と変わらず咲いている。

 俺は今、放課後の学校の一つの桜の木の下である人を待っている。


「ごめーん。待たせた〜?」

「いや。今来たところ。」

 そう。山下美和を。

 正直物凄く緊張している。

 だって桜の木の下で女子と二人きり

 だぞ?あれだろあれ。例のやつ。

 こんなの俺でも分かるぞ。

 だが期待というものはいつも真逆をいくものばかりである。

 案外そうでもない??


「じゃあ。行こっか〜。」

(行く?どこにだ?)

「こんな虫だらけの場所嫌だよね〜。とりあえず〜私の家に行こうか〜。」

 ほら。期待は裏切るんだよ。

 まぁ。断るつもりだし。どんな女子だろうと。


 美和の家は、学校から徒歩数分で着く。さらに豪邸に住んでいる為、

 山下家が分からないなんて事は、この辺で住んでいたら有り得ない。


「おかえりなさいませ。お嬢様。」

 えっ!ホントにメイドさんって、こんな事言うの?!

「ただいま。新垣さん来てる?」

「はい。先程、美和様の部屋に招いておきました。」

「うん。ご苦労様。」

 美和に労いの言葉かけてもらいメイドは引き下がっていった。


 さて、今の状況が分からない。

 何故、俺は呼び出されたか。

 しかも大輝さん関連でもない。


「なぁ。早く要件を教えろよ。」

「うふ。全く我慢が出来ない早漏君だこと〜。まぁ早いのも好きよ?」

「ちょいちょい下ネタ入れるな。」


 そして階段を上って3階に着いたところで一つの部屋の前に止まった。

 ドアには、美和の部屋と書かれた

 紙が貼ってあった。ついでに部屋内での下ネタ歓迎とも…。

 これを見た親はどう思うのか…。


「新垣さん〜入りますよ〜。」

「すっすいません!先にあがってしまって!」

「いいのよ〜。」


 彼女は、新垣萌。一年P組で主にゲーム制作をしている。容姿は金髪セミロングの髪。胸はそんなに無いがスタイル抜群。性格もおっとりしていて裏表の無い人にみえる。かな?


「葉羽零矢くんですか!」

「そっそうだけど。知り合いでしたっけ?」

「いえ。こちらが一方的に知っているだけです。だって、学校の有名人ですよ。」

 俺…有名人になれない人間なんだが。


「そうか。宜しく。P組の新垣さんだね。紹介は美和から聞いてるよ。」

「そうですか。話が早くて助かります。実は今日はお願いがありまして。」

「お願い?」

「はい。A組を破った貴方に一緒にゲーム制作の補助をして欲しいのです。」

「いや。それ俺のメリットが…」

「ありますよ〜。助けてくれたらA組に昇格することを先生方に推薦してあげますよ〜。」

「話にならね。てか美和は関係ないだろ。新垣さん、利己的なメリットばかり語る交渉は交渉と呼べませんよ。」

「それは残念。でも貴方となら、とても良いゲームができると…。」

「そこですよ。自分の事ばかり考えているところ。今日は帰りますので、少し考え直してきてください。」


 俺は何も気にせずこの日は帰った。

 そして、この場を去った後知った。俺は本当の新垣萌のことを知らなかった。


 翌日。朝一番だと思い教室に着くと事件が起きていた。

「おーい!零!」

「苺?お前いたのか。どうした?何焦って…」

 目の前の状況を確認した。

「な…んだ…これ。」

 教室中が…

「何故?何故こんな!」

 エロ…

「エロ本まみれなんだ!モザイクプリーズ!エロ色モザイク!」

「はーい!それは私がやりました!」

唐突に背後から声が聞こえた。とても聞き覚えのある声だ。

「新垣さん…どういうつもりなのかな?」

「葉羽さんの言われた通り考えた結果です!エロは大人の嗜みです!」

「エロは不純です!」

「えー。あっ、ひょっとして葉羽さんはエロ耐性が無いのでは?」

「ふっ。馬鹿め。俺はこの横の女の

 塔堂苺の胸を揉みまくった経験がある。なめるな。」

「へー。それより横の子の顔が怖いですよ。」

 指摘された時にはもう遅かった。

「へ?どぅぉぉわをォォヲヲヲ!」

 殴られた。加減もなしに。勿論痛い。

「あんたね、あんたね!何ふざけているのかな?死◯!」

「げふっ。悪かった。すまん。」

「で?何この女?エロが大人の嗜み?変な同人作家さん??ねぇー?」

「私と葉羽さんは、簡単にいうと禁断の関係ですかね?」

「誤解を招くことを言うな!」


この女。どこまで本気でどこまで冗談か分からない。正直女の嫌いな理由の一つの、何考えてるかわからなくて怖い系の女の子だ。


「何を考えてる?昨日もそうだ。急な接触を求めてきたし。」

「せっ…接触!!?」

何故苺が赤裸々なのかはよく分からないが、

「いやいや。私はただ一緒にゲーム制作を協力してくれれば良いのですよ?」

「だからメリット…」

「A組昇格は不満?」

「不満も何もお前が支払えるものじゃないだろ。」

次の瞬間、空気が変わった。

とても寒い。新垣萌からでる威圧が

まるで空気の流れを変えた様に。


「なっ何よ?この空気?」

苺だけは挙動不審に戸惑う。

「ちっ。本当に使えないですね?」

「やっと本性晒したか。やはり昨日までのお前は偽りだったんだな。」

「当たり前ですよ。あんな分かりやすい態度ですからね。」

「人が仮面を付けるのは当たり前だ。想定していない方が問題だ。特にお前みたいな女だ。」


何考えてるかわからない人間はやはり危険だ。時には獲物を傍観し、そして最後にチャンスを逃さずに獲物を捕らえる。


「もう一度聞こう。てめぇ何者だ?」

「P組クラス委員長兼ゲーム制作リーダーの新垣萌。貴方達をP組戦力として引き摺り込む者ですね?」

「素直だな。」

「余裕ですね。せいぜい余裕こくのも今の内ですね。」

そう言って廊下を歩き去った。

「なっ何よ?この状況は?」

「近い内に向こうから仕掛けてくるぞ。勝負だ。」

「てか何でうちのクラスこんな狙われているの?」

「さぁな。あと新垣の奴まだ何か隠していると思うんだ。まぁ来週までには全て吐き出して貰う予定だけどな。

てか、このエロ本片付け無いと…」

「そうね。でも残念。皆んな後ろにいるわ。」

「はっ?」

「葉羽くんって性欲の塊なの?」

「葉羽…お前いくらエロいからって」

「…キモッ。」

「葉羽くぅーん。俺はこういうのも好きだぞ〜!!」


クラスの男子からも女子からも様々な反応をされた。ほんとこの世界は都合が悪いよ。

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恋と勘違いの色 真面軽 永遠 @ryu874

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