第三話 ビールとブランデーとつまみ

 あれから俺はアダルラータとパーティを組むことになった。

 今日も依頼に出かける為に近隣の村まで歩いている。


「ねぇ、なんでシルバーウルフ討伐なのさ」


 隣を歩くアダルラータが俺に話しかけてきた。


 言いたい事は分かる。シルバーウルフはEランク依頼だ。

 アダルラータとパーティを組んでる俺はCランクの依頼を受けれる。

 しかし、この依頼が塩漬けなので善行の為に受けた。


「村人を救いたいのと俺自身の為だ。詳しくは言えないけどよ」

「あんた立派だね。惚れ直すよ」


 言い淀む俺に賞賛の眼差しで言葉を送るアダルラータ。

 全部、俺自身の為なんだが、言わぬが花だな。




 村に到着して状況を聞く。なんでも家畜の羊が狙われるらしい。

 護衛の犬も噛み殺されてしまったと聞いた。




 早速、現場に出かけてシルバーウルフが来るのを待つ。

 しばらく待ったら、のこのことシルバーウルフが現れた。

 野郎、人間様を舐めてる。




 アダルラータは盾と小剣を構えシルバーウルフに突撃する。

 速いな。アダルラータはどうやらスキルを使っているようだ。

 シルバーウルフの攻撃をかわし反撃を的確に加えている。




 俺も負けじとシルバーウルフの群れに突っ込んだ。

 スキルを発動し、大剣でなぎ払う。

 二匹まとめて始末したぜ。こりゃ幸先が良い。




 数が半分になった時に二倍ほどある大きなシルバーウルフが迫ってきた。

 噛み付こうとしたのを大剣を盾にして防ぐ。

 大剣を片手で支え、メイスで動きの止まったボスシルバーウルフの頭蓋骨を砕く。

 スキルがあるから出来る離れ業だ。




 群れの残りは逃げに掛かった。アダルラータは素早く動き、逃げたシルバーウルフを葬っていく。

 アダルラータのスキルが大体分かった。多分、俊足スキルだな。

 確か副作用はスタミナをもの凄く消費するだったな。




 結局、逃げられたシルバーウルフはいなかった。

 皮を剥ぎ取り、一応腹の中を探る。

 ボスウルフを調べた時、差し込んだナイフが金属に当たったような感触を伝えてくる。




 おっ、お宝か。金だとかだと傷をつけるから、慎重にナイフを入れる。

 出てきた宝はミスリルの腕輪だった。

 やったぜ。今日はアダルラータと飲むと決めた。


 一応ステータスを確認しておくか。


「ステータス・オープン」


――――――――――――――――

名前:ブロルディオ LV56

年齢:32

魔力:34


スキル:

肉体強化

幸運


呪い:

悪事懲罰の呪い

罪滅ぼしの呪い

――――――――――――――――


 やったぞレベルが上がっている。更に幸運のスキルがあった。

 これで呪いが緩和されれば言う事なしなんだが。

 そんなに幸運スキルは上手くない。

 副作用も無い代わりに偶に幸運な出来事が起こるというものだ。




 村で毛皮を売り、疲れて動けなくなったアダルラータを背負い街に帰る。

 ミスリルの腕輪を売ったら、大金に化けた。

 一挙に大金持ちだ。




 宿の部屋でアイチヤを呼ぶ事にする。


「今から神の眷属を呼ぶ驚くなよ」


 俺は部屋に呼んだアダルラータに話しかけた。


 呪文の言葉を口にする。


「デマエニデンワ」


 プルルルと神器から音がした。


「なんだい、この音は」


 アダルラータが驚き声を洩らす。


「俺にも謎の音だ。毎回するから気にしなくなった」


 俺は冷静に返す。


 ガチャという音と共に念話が繋がる。


 アダルラータにも希望を聞いて、アイチヤに軽い酒、沢山と高級な酒一本とつまみを頼んだ。

 つまみは手が止まらなくなるような美味いつまみをリクエストしてみた。


 ガチャという音で念話はが切れる。




 宿の部屋でアダルラータと雑談する事一時間。突然光が溢れた。


「ちわー、アイチヤです。配達に来たっす」


 アイチヤは何時もの安穏とした声を出して現れた。


 光と部屋を何度か往復するアイチヤ。

 香ばしい肉の焼けた良い匂いがする。


「その良い匂いの食べ物はなんだ?」

「焼き鳥っす。鶏の肉や内臓を焼いた物っす」


 俺は腹を鳴らして聞くと、アイチヤは苦笑いして答えを返す。

 鳥はパサパサしてあまり好きじゃないんだが、この匂いなら相当美味いと思う。


「あたいもよだれが垂れそう」


 アダルラータは良い匂いつられて言葉を洩らす。



「そっちのパンパンに膨らんだ奴は」

「ポテチっす。ジャガ芋を薄く切って揚げた物っす」


 俺の質問にアイチヤはポテチの包装を破り返答する。

 ポテチからは油の匂いと香辛料の匂いがした。


「そっちの小さい箱はなんだ?」

「ブランデーのつまみっす。チョコレートっす。甘いお菓子っす」


 俺は最後のつまみについてアイチヤに聞くと、アイチヤは度重なる質問に嫌な顔一つせず聞いた事のない名前を告げた。


「あたいのつまみね。甘い物が酒に合うのかい、疑問だよ」

「まあ試してくれっす」


 アダルラータの疑う言葉にアイチヤは自信を持って答えた。


「酒はどうなっている?」

「この高そうなのがブランデーっす。そして金属の筒に入っているのがビールっす」


 俺が肝心の酒について聞くと、アイチヤは指を差しながら説明した。


 ビールの開け方を教わり、チップを含めた金貨五枚をアイチヤに渡す。


「リョウガエ。ありあとーしったー! デマエキカン」


 アイチヤは謎の言葉を残して去って行った。




 さあ飲むぞビールを開けるとプシュっと音がする変わった酒だな。

 おお、喉越しが最高だ。苦味もちょうど良いぜ。

 冷えているのがこんなに美味いとはな。もうエールは飲めないな。


 焼き鳥を食べる。このタレが美味いな。こっちの塩も美味い。

 焼いて染み出した油が食欲をそそる。

 ビールを飲み、その後焼き鳥を食うと更に美味いな。


 次は次はポテチだ。

 包装を破ると油の匂いがする。

 一枚摘まんでみた。パリパリと食感が良い。

 ビールが進むな。

 あれ、もう無いのか、もう一つ開けるぞ。

 次も、止まらず食い尽くしてしまった。


 ん、なんか呪いに掛かった気分だ。


「まさか、ステータス・オープン」


 俺はステータスを開く。


――――――――――――――――

名前:ブロルディオ LV56

年齢:32

魔力:34


スキル:

肉体強化

幸運


呪い:

悪事懲罰の呪い

罪滅ぼしの呪い

ポテチの呪い(笑)

――――――――――――――――

 おう、呪いが増えてやがる。

 ポテチを食べつくすだけの呪いだろう。問題ないな。

 しかし、一度契約を破った者にはいつでも呪いを追加できるのか。悪質きわまりないぜ。


「アダルラータそっちはどうだ?」


 俺はうっとりした様子のアダルラータに尋ねる。


「栓を開けた時の香りから違うね。甘い香りが漂ってくるんだ」

「俺が飲んだウィスキーもそんなだったな」

「口に含むとこれが甘い香りとやわらかい味わいなんだよ。こんな酒はじめてさ」

「満足したようで良かった」

「そして、チョコレートがブランデーの甘味を増幅して凄く美味しいよ」

「甘い物が酒に合うとはな驚きだ」


 アダルラータに感想を聞いて、俺とアダルラータは酒を飲みつつ会話のやりとりをした。



 興味があったのでブランデーを一口貰う。

 これは美味い、何がとは言葉に出来ない。

 こんなに美味い酒があったのだな。

 しかし、アイチヤの野郎、手が止まらなくなるほど美味いつまみとは言ったが、呪いを掛けてくれとは言ってない。

 ブランデーのお返しにアダルラータへ焼き鳥とポテチをあげると、どちらも普通に美味しいと言っていた。

 俺も普通が良いんだよ。呪いは要らない。

 アイチヤとの付き合いはこれからも続きそうだ。

 何しろ美味い酒がアイチヤが居ないと手に入らないからな。



――――――――――――――――――――――――――――

商品名    数量  仕入れ   売値    購入元

缶ビール   十二本 三千六百円 七千二百円 スーパー

焼き鳥    二十本 三千円   六千円   焼き鳥屋

ポテチ    五袋  五百円   千円    スーパー

ブランデー  一本  二十四万円 四十八万円 酒屋

チョコレート 二箱  四百円   八百円   スーパー

チップ              五千円

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