ニコ編

ニコと祐と出会い

 吾輩は猫である。

 名前は……名前は……どうだろう。

 私は、ああ、私といっても、性別不詳でいきたいからどちらでも使える私で話すね。

 私は昨日まで人に飼われていたのだ。しかし何ということだろう、捨てられてしまった。

 なんでそんなことがわかるかって? 人たちがそういう会話をしていたから。

 でもまあ、やむおえなくって感じがしたから、そこまで怒ってはいないけどね。

 昨日までみんなに呼ばれていた名前で、私のことを呼んでくれる人はきっともういない。

 だから、今の私に名前があるとはいいがたい。


 さて、今の私には1つ大きな問題がある。

 それは、今後の住処を見つけなければならないということだ。

 今は夜。夏だからそこまで冷えないとはいえ、1人で、しかも外で夜を過ごすなんて嫌だ。

 そう思って、私を拾ってくれる確率が高いと思われる、人が出入りしているコンビニの前をうろついてみた。

 すると私の予想通り、1人の女子が立ち止まった。

「猫? かわいー」

 生意気そうな今どきの女の子。

 ちょっと怖いけど、この際そんなことどうでもいい。

「みゃーみゃー(可愛い可愛い猫ですよ。ぜひ拾ってください)」

「やば、超かわいい。一緒に行く?」

「みゃー(行くいく!)」

 女子はそういうと、私をひょいっと抱き上げて、家に帰っていった。

 家に帰ると、その子の親と思われる人が出てきた。

 女子は少しの間親と私のことについて話していたようだったか、すぐに私のところに戻ってきた。

「やったね! キミ、うちで飼っていいって!」

「ミャ⁉ (マジですか。嬉しいです!)」

「そう? じゃあとりあえず、うちの中探検しておいで」

「ミャア!(了解です!)」

 私はすぐに歩き出した。

 まずは2階を攻略しよう。

 階段を上がって、何となく目に入った部屋を開けて入る。

 するとそこには、1人の男子がいた。

「みゃあ(こんにちはー)」

 おそらくここの住人だろう。

 とりあえず挨拶をした。

 男子は少しの間私を見つめていたが、さっと立ち上がると部屋を出ていった。

 私はその男子についていくことにする。

 その男子は、家族にたすくと呼ばれていた。

 そのあと、たすくは部屋に戻っていろいろなことをしたが、なぜか私のことを追い出そうと頑張っていた。

「にゃ(どうか私を追い出さないでください)」

 そのたびに私は必死に抵抗して、なんとか祐と一緒に寝る状況をゲットすることができた。

 たすくの布団の中で1人、絶対にずっと一緒にいてやると誓ったのだった。

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