出逢い… 5
「──クラスの人、ですか?」
宏枝が側で見上げていた。
勘がいいんだろう。申し訳なさそうにその目が揺れている。
「同じ班のね」
良樹は曖昧な笑みを改めて浮かべ、携帯をかざして肩をすくめてみせた。
「……ちょっと寄り道するから、先回っててくれって、ね」
彼女はうなづいて、神妙に目を伏せた。
「ごめんね……。ぜんぜん関係ないのに、宮崎くん、巻き込んじゃって……」
「…………」
──〝巻き込む〟って……まあ、そういうことにはなるんだろうけど、そんな大層なコトじゃないし……。
「いや、別にそれはいいんだ」
それに良樹の方から声を掛けたわけで、彼女のそんなふうな言葉は、まー不本意なわけで……。
「修学旅行の一日をバックレて、そのぜんぜん関係のない女の子と京都の街なか歩いてました、ってのも、それはそれで〝いい思い出〟になるんじゃないか、とかね……」
さらりと、自分でもヘンに聞こえるコトを言ってるなー、と、良樹は自分のセリフに苦笑する。
側では、言われた方の宏枝が、伏せていた目線を上げられなくなって俯いてしまっている。
「あー、つまりその……〝乗り掛かった船〟なワケだし……」
良樹は慌てて付け加えた。
宏枝は、そんな良樹の最後の方の言葉は聞いてなかった。
むしろ、少し前に出てきた単語の方に心が捕えられていたから。
〝思い出〟……。
それは、魔法の言葉みたいに感じられた。
──そか……。思い出になるんだね……。
その考えに、何かくすぐったい様な気持ちになって、宏枝は面を上げた。
彼と視線がバッタリ合う。
がんばって目を逸らさなかったことと、自然に笑顔になれたのが、何だか誇らしくて嬉しかった。
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