僕たちはみんな自由に飛べる

深神鏡

夢のような美しい世界の真実

小鳥は生まれたばかり

目をぱちくりして

青空を眺めている


この美しい世界を

『おまえは自由に飛べるのだよ』


大人の鳥達に

そう教わって育ち


本当に『自由に飛べると』信じていた


旅立ちの日


鮮やかな青い世界

暖かな風が吹いている


大人に成長した小鳥は

その風を感じてわくわくした


翼を広げ

そっと枝から足を離した。

途端に景色は逆さまになり

悲鳴をあげる間も無く

小鳥は地面に落ちた


慌てて立ち上がり

もう一度翼を広げる

力を込めて羽ばたいた


しかし身体は浮かび上がらない

兄弟達は飛び去ってしまっている


何故?

同じように飛べないの?

小鳥の目は涙で潤んだ

親鳥の姿が浮かぶ


『おまえは自由に飛べる』


そう言ってたじゃないか!


小さな頃から

他の兄弟達と

身体の大きさや色が違う事を

不思議がっていると

親は『違わない同じだよ』と言い

平等に優しく育ててくれたので

小鳥は信じていた


何も案ずる事はないと。


地面が振動している

振り返ると

息を荒げた大きな大きな

見たこともない生き物が

涎を垂らしながら

口を開けたのが見えた。


小鳥の見た最後の景色。


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僕たちはみんな自由に飛べる 深神鏡 @____mirror13

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