犬が戦えるようになったら

まだ母が僕を抱いていた頃


泣きつかれて眠る僕の横には君がいた


出会いなんてものは無い


そもそもの入り口なんだから





眠れない僕によく話をしてくれたね


布団は魔法の絨毯で


君が囁いてくれさえすれば


どこにだって行けたんだ



恐竜の世界

巨人の国

宇宙船に乗って

知らない星

草木は歌うし

空は笑う

おもちゃは動くし

猫はしゃべる

この世界では僕は犬




やがて世界は失われ


旅には行けなくなっていた


朧気な記憶だけが燃料


いつしか絨毯はなくなった




ただ歩けばいいだけだったんだ






今君は見たことない顔してるよ


あの時と同じように寝てるはずなのに


そんなふうに鳴くなんて知らなかったから


今君は見たことない顔してるよ


もう切ないんだが愛しいのかわからない


ほんとうに来たかった場所にようやく辿り着けたんだ








たぶんもっと遠くに行けるよ


僕が遠くに連れて行くよ





遠くで声がするけど振り返らない


犬が煩いんだ




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