第4話 「少年」

 洒落たジャズの曲と、程よく暗いある喫茶店で、四十代半ばくらいの男が珈琲を片手にくつろいでいた。黒いスーツを身に纏い、落ち着いた雰囲気をしている。その目はどこか寂しげな光を宿している。店内には、彼しかいない。しばらくすると、店のドアが開き、ベルが鳴る。入ってきた客は、10代くらいの若い男だった。キョロキョロと店内を見回し、先程の男を見つけると、音もなく隣に座った。

 

「で、なんの話だ、俺に聞きたいってのは?」中年の男は、相手の顔を見ずに質問する。


「ん?あいつの過去?そんなこと知ってどうする?はぁ、分かった、話そう。」


○○○○○○

 雨の降る日だった。その日はいつもの様に、依頼者から、ターゲットの情報を聞き、計画を綿密に立て、相棒のサイレンサー付き拳銃を持って出掛けた。仕事は何事もなく進み、目の前には、静かに横たわる死体が二体出来上がっていた。当然だ。俺は殺し屋なのだから。


 ガチャリと家のドアを開ける音がする。

「ただいま!」と幼い少年らしき声が部屋に響いた。年齢は、まだ、五、六歳くらいだろうか。

「お客さん?」そう言って、俺の顔を見るが、俺の後ろに倒れた両親に気付き、表情が消えた。

「お父さん?お母さん?どうしたの?」震えた声で問いながら、冷たくなった両親に走って近付き揺さぶる。そして、ゆっくりと振り返り無表情で俺の顔を見る。


俺の仕事は、殺し屋、そして……。


「俺は、国家危険取締員こっかきけんとりしまりいんだ。お前の両親を危険思想人物とし、排除した」


その少年は、目を見開き、俺の言葉を繰り返す。

「こっかきけんとりしまりいん…はいじょ?」

「そうだ、お前の両親は、国から危険な奴と捉えられ、俺が殺した」

少年の顔は、ゆっくりと絶望の色に染まっていく。


「そして、お前も危険人物として、排除許可が下ろされている。そこで、お前には、二つの選択肢が与えられた。」


「せんたくし?」


「ここで、死ぬか もしくは……」

○○○○○ 


「まぁ、その後はお前が知っての通りだ。あいつは、施設に入り、今の組織の一員になった。はぁ、他に俺が知ってることはない。お前の方がもっと知ってるだろう。あいつ……ゆうのことなら」

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やっぱり君が一番ムカつく ヨル @kuromitusan

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