ZERO・この戦場を突破せよ!!

ポテコン&ラリスゥ

プロローグ すべての始まり

宇宙とは不思議なものだ。


自分たち人類や他の生き物が暮らすこの大地とは違い、空気がなく、生き物もいない。もしかしたら空気がある場所や、生き物が住まう土地だってあるかもしれない。だが、未だに見つかってはいない。


数多ある星々や川のように流れる流星群を見て、「綺麗だ。」と言う人がいる。いや、実際はそう思う人がほとんどだろう。だが、ある日本の中学生——清水しみずレイは違った。


ではどう言う感情を持つのだろう?それはレイ自身もあまりわからないことだ。しかし、はっきりとわからないだけで、大体のことは知っている。


それは恐怖や畏怖、といった感情だ。いつあの流星群が隕石となって落ちてくるかわからない。いつあの星々がこの地に衝突してくるかわからない。レイは夜になると、この輝く無数の星たちを見ながら、いつも同じことを考えていた。





自分が通っている中学校からの帰路で、レイは顔を上に向け、今は見えないが、目を向けた先にあるであろう星々を見ながらいつものごとくぼーっと歩く。そんなレイの顔は、どこか不安そうで、なにかに怯えるような表情だった。そんなレイの隣には家族であり、大切な妹でもある、清水桃花しみずももかが一緒に帰路を歩いている。


レイは少し長身で、170cmほどの身長に幅の広い肩。そして日本人特有の黒髪黒目を持っている。そして12歳。特技や趣味はない。髪はしっかりと短く切りそろえられている。顔は父親に似て、少し切れ長の目には鋭さが感じられた。しかし、他人が見た第一印象は誰もが穏やかで優しそうな人と言うだろう。なぜなら、纏う雰囲気がそう物語っているからだ。だが、正直レイは自分と妹のことで手一杯だった。


妹の桃花はレイが通っている学校(桃花も通っている学校)では有名人だ。学校では生徒のほぼ全員が「桃花様」と呼んでいる。男女問わず絶大な人気を誇る美少女だ。身長160cmほどで、12歳。兄のレイと同じ誕生日だ。特技は勉強全般で、他には、相手の心を読むのが上手いということくらい。肩まで伸びた艶やかな、若干紺色が混じったような色の黒髪、少し垂れ気味の大きな瞳は相手の気持ちを穏やかにさせる。小ぶりな鼻、そして淡いピンク色の唇が完璧な所に並んでいる。そんなレイの妹は今、兄のことを心配していた。


なぜ2人して、不安を感じ、手一杯な状況に陥っているのか。その理由はこれだ。


レイと桃花には両親がいない。正確に言えば、両親がのだ。そのおかげで親戚の叔父の家に引き取られることになったレイと桃花。その叔父は過去にレイの父親とトラブルがあったらしく、レイと桃花を恨んできて、部屋と家具は貸してくれたが、生活費や学費を出してくれなかった。しかも、叔父はレイと桃花をこき使うのだ。それに加えて、機嫌が悪い時や、酔っ払っている時などは暴力までふるってくる。


「お前らは家事をするだけのロボットだ。それが嫌なら、俺の家にいるものとして、良い成績を取ってこい!」


というのが叔父にとっての常識らしい。そのおかげで、ある程度の生活資金は両親がいなくなる前に置いてあったものの、次第に底をつきていく金と重なっていく疲労。それに、レイは桃花の分も金を使わなければいけない。プラス、レイは桃花には働いて欲しくないと思い、桃花の分まで家事などをしている。だからこそ、レイは時折、現実逃避のように空を眺めながら不思議な考え事をするようになっていった。


「…ん……さん…」


レイはどこか遠くから声が聞こえた気がした。そして、その声はより鮮明に、大きくなっていく。


「…兄さん!」


「えっ!?」


レイはそこではたと気がついた。また変な考え事をしていて、妹が自分のことを呼んでいると。


「まったく、また考え事してますよ。どうせ星々がどうこうってことなんでしょう?」


桃花が頰をぷくっと膨らませ、腰の後ろに手を組みながら、言う。そんなちょっとした動作が桃花らしくて、レイは思わず、少し笑ってしまった。


「ぷっ、あはは。ごめんな、桃花。気をつけるよ。悪い癖なんだ。」


「もう。何笑っているんですか?何が面白いんだか、私にはわかりません。でも、いつもの兄さんに戻ってくれてよかったです!」


そこで桃花が満面の笑みでレイの方を向く。そんな笑顔をレイはこれからも守りたくて、でも、それができる環境に自分たちが今いないことが悔しくて。なので少しぎこちなくなってしまった笑顔でレイも頷く。


「ああ、ありがとう。元気が戻ったよ。じゃあ帰るか…。」


「はい。」


2人して、少し嬉しそうな、少し嫌そうなオーラを出しながら叔父のいる家に向かって歩いていった。




「ただいま。」「ただいま帰りました。」


玄関の扉を開け、感情のない声で言うレイ。桃花は少し怯えた声音だ。玄関の時計は午後6時を指していた。すると、誰かがドタバタと足音を立てて、二階から小走りで玄関にきた。


「おいレイ。おせーぞ。5時までに帰って仕事の手伝いと掃除洗濯料理とかやれっつってんだろ!!」


そう言ってやってきたのは、叔父の道風みちかざだ。血走った目に、酒臭いにおいの息。乱れたワイシャツとネクタイに、薄く白髪と黒髪が少し残った禿げている頭。どっからどう見ても、腐れオヤジだ。


大声で叔父の道風が怒鳴る。その声を聞き、桃花はすぐに怯えた表情でレイの背中に隠れる。レイは桃花が怯えて背中に隠れたことを瞬時に察知すると、道風に向かってすぐに言い返した。


「道風さん。毎回言っているはずです。私はまだ未成年であり、仕事をすることはできません。そもそも、自分の仕事を他人、まぁこの場合私ですが、仕事をしてもらってその功績を自分のものとすることは犯罪ですよ?」


低く、感情のない声と目でそう伝えるレイに、道風は再度激怒した。


「貴様ぁ!この俺に反論するのか!?せっかくこの家に引き取って、屋根と毛布を提供してやったというのに!いいから手伝え!」


そう言って拳を振り上げた道風はそのままレイをぶん殴った。レイは顔を両手でガードするも、その上からでも強い衝撃が、中学一年生というレイの体を襲う。頭、腕、脇腹など、なんとか立っていられたものの、激しい痛みにレイはただ耐えるしかなかった。そんな中、桃花は完全に怯えきり、しゃがんで頭を抱えている。


「おら。さっさとやれ。ついでに後で酒買ってこい。早くしろ!桃花は勉強しやがれ!次のテストでも満点取らなかったらわかってんだよな?」


道風がレイを殴り終え、2人を憎悪がこもった目で睨むと、二階へと駆け上がっていった。レイは歯を食いしばり、道風が二階へと駆け上がっていった階段を睨み返し、桃花はなんとか立ちあがると、レイの傷やあざになりそうなところを心配し出した。


「兄さん。大丈夫ですか?また酷くやられてしまったようですが…。」


「大丈夫だよ、桃花。住まわせてもらっていることは事実なんだ。叔父にも一理ある。だけど、認めたりはしない。いつかここを一緒に抜け出そう。」


なんとか振り絞った勇気で、桃花になんでもないと笑いながら言うレイ。少しその笑顔が、逆に不安になった桃花だが、信頼する兄が言うことなので、黙って頷く。


「はい。わかりました。けど、無理はしないでくださいね。」


こうして、桃花は一階にあるレイと桃花の部屋に向かい、レイは家事の手伝いをするために物置に向かっていった。





夜11時、桃花はもう寝静まり、レイがやっと家事と言う名の強制労働を終わらせ、ベッドに着いた頃。


(明日からまた学校か…。確か、プロが来て空海四砲軌道車の組み立て実演だったかな。楽しみだなぁ。叔父のことは…いや、忘れよう。)


こんなことを考えながら、レイは明日から始まる学校に備えて深い眠りについた。




深夜、大きな爆音が聞こえた気がして、レイの目が覚める。そこでレイはふと疑問に思った。


(なんでこんなに明るいんだ…?まだ感覚だと夜のはずだけど。)


レイは寝ぼけてるだけかと一瞬思ったが、どうやら違うみたいだった。なにやら、北窓から夕焼けのような光が部屋全体に差し込んでいる。


そこでレイは時計を見る。時計の針は夕方の時間ではなく、夜の2時半を指していた。


「あれ…?なんでこんな時間にこんな光が差し込んでいるんだ?」


頭が?マークでいっぱいになってしまったレイは、とりあえずその光の正体を確かめるべく北窓のカーテンへと向かう。どこの子供のイタズラだよ。と思いながらも、カーテンを開けようとした。そして、そう思っていたからこそ、レイは窓の外に広がる光景に、自分の目を疑った。


「なんだよ…?これ。」


レイがカーテンを開けた先に見えたもの。それは、はるか北の地で黒煙を巻き上げながら立ち上るキノコ雲と、その周囲に落ちていく大小様々な隕石だった。




2040年、10月10日、2時半の今日、この日から、世界は一変する。この世に破滅をもたらした大規模隕石群。それがこの物語のすべての始まりだった…………


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皆さんこんにちは。「ZERO・この戦場を突破せよ!!」の作者のポテコンです。先に言っておきます。いきなりひどい叔父(道風)を出させてしまってすみません。ですが、これからの展開に必要なことなので、頑張って読んでくださると嬉しいです。一週間に一回か二回という感じで投稿するので、今後とも、よろしくお願いします。はい、これだけです。投稿ペースに関しては少し遅れる時もありますが、目を瞑ってくれると嬉しいです。ではまた次回!(多分)

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