第2話滑り止めの高校に行くということ

都立高校の合格発表からいったん家に帰り、お金と書類を持ち、滑り止めの高校に行った。

インフルエンザになったみたいに身体が痛かった。と思ったら、

心が痛かったのだ。

こんな思いをするのなら最初から勉強しなければ良かった。

息子はそう言った。

しかしそうではなかった。

やったことは消えない。

やったことは厳然とそこにあった。

息子は高校で普通にやっていても良い成績を取り、第一希望の大学に

推薦入学で合格することができた。

もしも第一希望の私立高校に合格して

上の大学に進んでも、

取ることは出来なかった資格。

それを取るために選んだ大学だった。

息子は三年間で自分の目標を定めた。

つまりはほら、滑り止めの高校だったんじゃない。

これで良かったんだということ。

「これで良かったんだ」

こんなにむなしい言葉はない。

その時には、負けの言い訳にしか聞こえない。

たとえそれでも、

まずは母親が真っ先に、

鏡に向かって宣言すべきだ。

そうすれば必ず「そこ」に到着できるのだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る