小さな青春〜合格発表の日のこと〜

清涼

第1話小さな青春

その少年はマスクをして、うつむきがちに歩いていた。横で母親がしきりに何かを話しかけている。少年は時々うなづく。母親は寒そうにコートの前を押さえた。

そうか、今日は都立高校の合格発表の日か。

どう見ても、合格したようには見えない。

半歩母親の前を、前を見据え、颯爽と歩く少女がいる。母親は時々空を仰ぐ。清々として、青い空を、久しぶりに見たように。

歯を出して笑ってしまう。

抑えても、笑ってしまう。

こちらはどう見ても、合格だろう。

あぁ合格したんだ。

合格。

合格。

格が合う。

格が合ったのよ!

そんな顔だ。


思い出す、あの日。

長男は

とても勉強したけれど、

第一希望の人気私大附属高校に落ち、

しょうがないからここにするよ、と言ってた受けた都立高校に落ち、滑り止めの高校に行くことが決まったのが、今日この日だった。

恥ずかしかった。

正直私は、滑り止めの高校のことは、

馬鹿にしていた。

何という驕りよ。

試験に絶対なんてないのに。

みんな、滑り止め高校に払うための30万円と入学手続き書類をカバンに入れて合格発表を見に来ているというのに、私は、持っていなかった。

先生も塾の先生も本人も、大丈夫って言ったから。

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