第2話

‪雨‬

‪車のボンネットを叩く雨の音‬

かき消されそうな程囁かに流れるFMラジオ

フロント硝子に流れる水滴をワイパーが拭き取っていく

拭けども拭けども水滴は消えない

雨の日が好きだ

雨の日に車に乗るのが好きだ

からだを包む雨の音に、世界をやさしく感じられる

雨に烟る外側の世界

雨の日は薄いヴェールのような靄がかかっていつもよりずっと蠱惑的に見える

空は石灰水を零したようにくすんでいて

何もかもが薄白く染まっている

そんなときは、いつもより木々の緑か濃くなって、土の黒さも際立つようだ

いつもは埋もれているものが、色濃く浮き出して来る

雨の日はそんな気がする

隔離された内側の世界は、その空気を乱すことなく穏やかに佇む

だから私は雨が好きだ

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