ホルスの目

深月珂冶

ホルスの目


朝起きると、目の辺りが腫れていた。

昔から、人と違って変なものが見えるのは日常茶飯事で、特に17歳になってからは酷くなった。


腫れる前に目に写ったのは、『古い街に何か変な飛行物体が堕ちて、人類が殲滅せんめつされる』ものだった。

非現実的であり得ない。

けれど、なぜかリフレインした。

それからその左目の辺りが痛い。


病院に行くと、医者は驚いた。


「これは、見たことのない出来物だ」


私は単なる麦粒腫ばくりゅうしゅだと思っていたが、違うらしい。

やはり、あの変な映像が関係あるのだろうか。

処方箋は、目に点眼する目薬だけ貰った。


病院から帰る際、雨が降ってきた。

幸い、傘を持ち合わせていたので、それを差した。

雨は本降りになり、地面を濡らした。


隣町の古い商店街を通る。

いつも、この街の雰囲気はどんよりしている。

私は急いでその商店街をすり抜ける。


理由は嫌な予感がしたからだ。



腫れる前に見た映像の場所に似ているからだ。

そう、古い街に何か変な飛行物体が堕ちて、人類が殲滅される。

私の左目はまた痛み出した。


“目覚めろ、古から続くお前の力”


頭から声がした、聞き間違いだろうか。


“目覚めろ、古から続くお前の力”


頭に一気に映像が流れてくる。

いつの時代か解らない、異国の地で、私が魔術を唱えて戦っている。


「これが私」


私は自然と言葉が出た。


“お前は地球を救うために生まれた”

私は聞こえてくる声に耳を傾ける。


“そうだ。お前は今、目覚めた”


私がやらなくてはいけない。

私はきびすを返し、古い商店街に向かった。


ホルスの目 (了)

製作時間18分26秒

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ホルスの目 深月珂冶 @kai_fukaduki

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