第40話 賢い機械

お、これがここのフロア用の新しい機械?コピー、ファクシミリ、スキャン、全部これで出来るって聞いたけど。


複合機ね。便利な世の中になったねぇ。でも、使いきれるかな。


そうそう。スマホとかパソコンとか、色々機能がありすぎて、かえってわかんなくなっちゃう。いつも電話番号の登録とか手伝ってもらってるの、あれ冗談じゃないからね。ほんとに覚えらんないんだからさ、やんなっちゃう。


だって我々が入社した頃はパソコンなんてなかったもの。全部手書きだよ?配付資料は、ガリ版なんて言って、鉄筆で削ってたんだから。信じられないでしょ?


ワープロが出てきてからは速かった。一気に賢い機械が出てきて。あっという間にこんな風になった。


同世代で早々に結婚した人なんかはタイピングだって一苦労だって人、いるよ。パソコンが生まれた頃からあった子達にはどこの宇宙人だって思われそうだけど。


そうかぁ。その世代か。でも、小学校の頃にはあったんでしょ?いやあ、こういう話をすると時の流れを感じるねぇ。


へえ、SNS疲れねぇ。ああ、確かにこないだの新聞にSNSでいじめをする、なんて話があったっけ。いじめはねぇ。理由なんていくらでもつけられるからねぇ。やる方の子の事を考えると悲しいし、やられた方は、もっと悲しいねぇ。それで傷つくのを見てる親も、切ないねぇ。


いつでも誰とでも話せるのが良いかっていうと、そうでもないのかねぇ。好きな子に電話かける度に「本人が出ますように・・・・・・」なんて思って受話器を上げたり下げたりしなくていいんだって思うと、うらやましいような気もするけども。


そうだよ?私が学生やってた頃なんか、電話ボックスで10円玉積み上げてさ、個人ケータイなんかないから、家に電話するわけだよ。で、そういう時に限って親父さんが出たりするわけ。


はは、風情ね。うん、確かに、機械が賢くなかった頃の味わいってあるかもね。でもそれって結局、僕らの時代が過去になったってことだな。昭和は遠くなりにけり、だ。

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