第17話 タクシードライバー

どうぞ。シートベルトをお願いします。


どちらまで?


はい、かしこまりました。


ルートのご希望はありますか?


はい。それでは、今の時間帯は混み合いますので、脇道など使いながら回り込んで向かいます。何かあれば仰って下さい。


それにしても、良い天気になりましたねぇ。


連休中はお休みで?良いことですね。でも、仕事に戻っても変な感じがしたりしませんか?


ははは、休みの時と仕事の時だと一日の動きも違いますからね。私たちも随分ひまでした。


え?ええ、そうです。このあたりだと、皆さんが忙しい頃が私たちにとっても繁忙期になりますんで。タクシー始めてから随分になりましたが、まあ例年10日を過ぎるとお客さんが戻って来るような感じです。


連休明けでまだ肩慣らしってとこなんですかね。


ああ、そうですね。梅雨も始まりますしね。雨に濡れたまんまじゃお客様の前に出られないし、第一駅まで歩くのが億劫だってんでぐっと増えますよ。


今日は良い天気だし、連休明けだしでちっともですね。


はは、古い町は脇道走るの難しいですからね、一通だの行き止まりだのばーっかりで。まぁこういうのは年の功ってやつですよ。始めた頃は地図とにらめっこして大通りを走ってましたっけ。そうすると自分より道に詳しいお客様なんかにやっつけられてね、悔しいんで帰りにもういっぺん通ってみたりなんかして覚えていくわけですわ。


どの辺で停めましょうか。


はい、そこの信号ですね。メーター上がる前に切っちゃいましょう。


ああ、ちょうどですね。助かります。

余計なお喋りを致しました。お忘れ物のないようにお願いします。


ありがとうございました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る