第14話 水烟屋

いらっしゃいませ。当店のご利用は初めてですか?


ああ、失礼致しました。いつもありがとうございます。本日はお一人ですか?


かしこまりました。毎回で恐れ入りますが、年齢確認のできる身分証明書のご提示をお願い致します。


はい、確かに。それではお席にご案内致します。


最近いらっしゃらなかったですが、お元気でしたか?


繁忙期ですか。お疲れ様でございます。


フレーバーは何になさいますか?会員証の記録では前回は……ああ、アルファーヘルのカルダモンを召し上がったんですね。その前にも何度か召し上がっていますが、お好きですか。


ミックスを試されますか?ほぼどのフレーバーとでも合いますが、シンプルなところですとチャイはいかがでしょう。


かしこまりました。ご用意致します。


それからホットチャイですね。承りました。




チャイを先にお出しします。


どうぞ、カルダモンとチャイのミックスです。上部に炭が入っておりますので、ご自分では動かさないよう、お願い致します。位置を変えたい場合にはお声掛けください。


煙の具合はいかがですか?濃い薄いございましたら調整致します。


ありがとうございます。お寛ぎください。




炭替えに参りました。ホースを拝借致します。


ありがとうございます。


良さそうですね。もう少し経つとまろやかになってくるかと思います。


はは、楽しんで頂けて何よりです。平日の夜は一人でゆっくり過ごされる方も多うございますから、お気軽にお越しください。


そうですね。水烟シーシャ屋の良さは何人で来ても楽しめるという事かと。とはいえ、当店のように小規模な店が殆どですので、あまり大人数で、というのは難しいのが現状ですね。四、五人がちょうど良いくらいでしょうか。


ええ、グループでいらっしゃればフレーバーを交換しあって楽しめますし、会話が途切れてもゆったりと水烟シーシャを楽しめばいい。


そうそう、一本の水烟シーシャを二人でシェアしているうちに親密になる、なんていう事もありますね。ちょっとロマンチックじゃないですか?


煙は儚いから縁起が悪い?


いえいえ、煙草たばこは昔から恋の歌に付き物ですよ?「巻煙草まきたばこ からだ任せて口まで吸わせ 灰になるまで ぬしそば」なんていう都々逸があるくらいです。


煙草は終わりが見えます。儚いものです。でも火の熱さが確かにそこにある。


ああ、ちょっとセンチメンタルになってしまいました。お喋りが過ぎましたね。


えっ……私の実体験では、と?


なんの……


……ああ、先程お話しした水烟シーシャが執り持つ縁の話ですか……。


……ええ、と。さすがに照れますのでまた次回!覚えていらっしゃいましたらお話し致しますね!ごゆっくり!




はい、お帰りですか。こちらにお願い致します。


ちょうど頂戴いたしました。


ひえー、参りましたねえ。そこまでおっしゃるなら、忘れないうちにまたお越しくださいね!


ありがとうございました。またお待ちしております。

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