4, 放課後

放課後になり、誰が言わずとも自然と集まる4人。

現場のある駅方面へと向かう。



学校から最寄駅の間には、買い物から遊び、飲食店や塾などがあり、ここへ来ればひととおりの用事が済む。昼夜問わず、人通りが多く賑やかだ。


「今回はさ、誰の提案?」


世間話の合間に、

予想では龍之たっちゃんかなと思いながら聞いてみる。


和一わいっちゃん♪♪」


龍之たっちゃんがいたずら顔で答えたと同時に、隣で歩いていた和一いっちゃんの裏拳が飛ぶ。


「“わいち”と呼ぶなと言っているだろう」


龍之たっちゃんを凄い形相で睨みつけている。

和一いっちゃんの裏拳を受け止めた龍之たっちゃんは、相変わらず笑いながら


「だってさぁ、なごいって発音しづらいじゃん」


それでも名は名だ、正しく呼べ。と、前を向き直す和一いっちゃん

このやりとりは何回目だろうか。

本当に兄弟のように仲が良い。


和一いっちゃんが死亡事故の記事選ぶなんて珍しくない?」


なんとなく、和一いっちゃんは死亡案件を選ばない傾向があるなと思っていたから、今回は意外に感じた。


「そうか?……まあ、場所が近いから気になったのかもな。」


たしかに、こんなに近くの事が新聞に載るのは珍しい。納得。


「先にトワレコ寄りたいんだけど〜、いい?」


今日は龍之たっちゃんのお気に入りのバンドのCDの発売日で、初回限定盤を予約しているらしい。


「私もCDを探しにトワレコへ寄っても良いかしら?」


ちづるも、気になるアーティストのCDを見に行きたいそうだ。和一いっちゃんも私も快く頷き、2人について行く。



駅近くの大きな交差点の一角にあるレコード店のすぐ近くまで来たところで、ふわりと髪を撫で上げるような風が吹いた。


ふと、風上の方へ目線を移す。

交差点の向こう側にある、一軒の店が目に入った。

5階建ほどの雑居ビルの一階に、古びた看板を掲げている。ここからだと、どんな店かは分からない。・・・が、なぜだろう。ものすごく気になって仕方がない。


「ね、和一いっちゃん。私あのお店に行ってみるから、みさ達と先に行ってて。」


その店から視線もそらさずに、歩行者用の信号が青になると同時に駆け出した。

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