1, 日常


––––––– 朝 –––––––


目が覚めた私の目には涙が溢れている。


子供の頃からよく見る夢だが、ここ最近は感情移入をしているのか、起きると涙を流している事が多くなっていた。


この夢を見たあとは、いつも不思議な感覚に捉われる。現実とかけ離れた場面で、そのマントの男は全く知らない人のはずなのだが、何故か昔から知っているような気がするのだ。

それは子供のころから見ている夢だからなのだろうか。


涙を拭い、夢の余韻に浸りながらも、伸びをして深呼吸。

よしっ!と気合を入れて、制服に着替え、物騒な事件を知らせるニュースを知らせるテレビを横目に見ながら軽い朝食を済ませ、誰もいない部屋に「行ってきます」と言って外に出た。


空は青く広がり、爽やかな風が優しく髪を揺らす。


マンションを出て住宅街を抜けると目の前に高速道路が横たわり、その高架下を高速道路沿いに歩いていくと、じきに校舎が見えてくる。ここが私の通う高校だ。



期末テストも終え、もうすぐ夏休みということもあり教室の中はいつもより賑やかに感じる。

クラスメイトに挨拶をしながら席へ向かっていると、1人の男子生徒が私に近づいてきた。


さき、おはよう。昼休みまたいつもの所な。」


彼の名前は夜香地よこうち 和一なごい。咲江の幼なじみだ。「なごい」は発音しにくいので、幼い頃から「いっちゃん」と呼んでいる。


和一いっちゃん、おはよ。昼休み、購買寄ってからいくね♪」


笑顔で返事をして席に座ると、ちょうど担任が教室にやって来た。




私の名前は、経河たちかわ 咲江さきえ

小桜花しょうおうか学園高等部に通う2年生。幼なじみで同じクラスのいっちゃんと、中等部からの友人で今は他のクラスにいる渡名部わたなべ ちづると相原あいはら 龍之たつのの4人で集まることが日課になっていた。



こんな風に集まるようになった、事の始まりはちょうど1年前。

入学してからも部活に入らないまま自由な時間を過ごしていた私と和一いっちゃんが、放課後教室に残っていた時のこと……






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