18冊目☆☆☆ リサ・クレイパス著「冬空に舞う堕天使と」

 勝手にレーティング:R18


「壁の花」シリーズの3作目で、前作ヒロインを誘惑した挙句誘拐未遂事件まで起こした自堕落で自己中な放蕩者セントヴィンセント卿セバスチャンがヒーローです。王道のクズヒーロー更生ものですが、王道だけにとても面白くロマンチックだったり感動したりと大満足な作品でした。

 ヒロインのエヴィーは壁の花のひとりで、賭博クラブ経営者で金持ちな実父の娘ではあるものの、内気な性格と吃音症のせいで社交界の紳士たちからはつまらない存在として見向きもされていませんでした。一方のセバスチャンは天使と見紛う美男子で女たらしで放蕩の限りを尽くす公爵家の跡取りの子爵ですが、その財産は底が尽きかけており、前作での誘拐事件はそれが原因でした。実は親戚の元で虐待されていたエヴィーは、彼等から逃れるために自分と同様に切迫した状況にあったセバスチャンに駆け落ちして欲しいと願い出ます。ふたりは便宜的に結婚するけれど…といった内容。

 自分のクズっぷりに自信満々のヒーローの言動が最高に面白いのですが、自分はろくでなしだと言いながらさりげない優しさを見せたり、経営の傾きかけた賭博クラブを生まれ持っての才能で立て直そうとしたりと、人間的な魅力もいっぱいです。ヒロインも芯が強く辛抱強くて可愛いので、読んでいて応援せずにはいられないふたりでした。

 序盤の結婚指輪を買うシーンでヒロインが選んだ指輪に刻まれた文字を最後にヒーローが口にするシーンでは、予想通りではあるものの「よっしゃあああ!!」と思わずにはいられませんでした。

 コミカルなシーンが多めの前作と違ってシリアスな作風ですが、クスッと笑えてときめいて感動できる、とても素敵な作品でした!


 ちなみに、同著者の「ザ・レイヴネルズ」シリーズ3作目では今作のふたりの息子がヒーローなんだとか。めっちゃ読みたい!

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