14冊目☆☆☆ エロイザ・ジェームズ著「愛しき美女と野獣は」

 勝手にレーティング:R18


 王子の子を妊娠したと噂が立って社交界の爪弾きものにされた美しすぎる子爵令嬢リネットは、人々に「野獣」と呼ばれる片脚が不自由な伯爵と婚約する。伯爵は医者でもあり、彼の居城を病院にして重篤患者を受け入れていた。

 おとぎ話の「美女と野獣」をモチーフにした作品ですが、原作との共通点はヒロインが美女だというくらいでほとんどありません。作者あとがきでも堂々とそう書いてありました。ヒーローは優秀な内科医ですが、子供の頃に負った大怪我で片脚が不自由で、その怪我の後遺症である激しい痛みのせいで酷く癇癪を起こすために周囲の人々に恐れられています。また、怪我の原因でもある父の公爵を憎んでおり、自分は不能だと嘘をついて公爵家の血を絶やそうとしていました。一方で、ヒロインであるリネットは王子の子を妊娠したというあらぬ噂を流されたせいで結婚は絶望的。けれど、叔母の「公爵が不能の息子の花嫁を探している」との情報で、存在もしない王子の子を餌に伯爵と婚約することになったのでした。

 ありがちな設定のラブロマンスだと思ったら大間違いで、ユーモアと感動が溢れる素敵な作品でした。

 まず登場人物の台詞の掛け合いが軽妙で面白くて、ヒーローとヒロインの会話だけでなく、他の登場人物との会話でも思わずくすりとしてしまいました。個性的な登場人物がたくさん登場して、なかでもヒーローの従兄弟のセバスチャンは容姿が良いだけでなくヒーローの理解者でもあり、とても魅力的です。

 ヒーローは毒舌ですがヒロインも負けす劣らずな感じで、ふたりのやりとりが小気味良くて。物語中盤まで母親に教えられた中途半端な性知識しか持っておらず、ヒーローを不能だと思い込んでいるヒロインとヒーローのやり取りが可笑しくて可愛くて、おもわず笑ってしまいます。下ネタこそ多めですが、潮の満ち引きを利用した海辺のプールでふたりが過ごすシーンはロマンティックでとても輝いています。

 また、愛し合うに至るまでのユーモア溢れる物語の前半とは対照的に、物語の後半では切ない感動の展開が待ち受けています。ヒーローが必死になってヒロインを救おうとするシーンはこっちまで辛くて胸が痛くて涙せずにはいられませんでした。

 正直なところ、タイトルとあらすじからありがちなシンデレラストーリーを予想してしまってあまり期待していなかったのですが、読み終えた今となっては、あのとき図書館でこの本を手に取った自分を褒めてやりたい気持ちでいっぱいです。速攻で書籍購入してしまいました。

 本当に素敵なラブロマンスでした。文句なしにお勧めの作品です!

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