第6話

 二人分の服に食料と、両手に荷物を持った僕達は、夕暮れの町を並んで歩く。


 並んで歩いていても、絶対的な距離を感じていた。  


「早く……再婚しちゃえ」


 足を止めて、声に出す。


 ちゃんと声に出して言ったつもりなのに、声は掠れて。


 僕が止まった事に気付いていない裕文さんには、届いてくれなかった。




 ――背中が、遠いよ。




「姉さん……ごめんね」


 同じ人を、好きになってしまって。


 姉さんは一緒に居られないのに、僕なんかが一緒に居てしまって。 




「ほんと……ごめん」




 キュッと唇を噛んだ僕の背中に、温かな何かが触れた気がした。




『裕文……』




 僕を吹き抜ける風の中聞こえたのは、確かに姉さんの声で――。


 それが聞こえたのだろう裕文さんも、弾かれるようにして振り返った。




 途端。 背中が押される。




「えっ…?」


 つんのめった僕の体を、裕文さんが慌てて抱き留めた。




 こんな時なのに、ふわりと裕文さんの香りが鼻先をくすぐった事に、赤面する。




「大丈夫?」


 驚いた顔で、問いかけてくる。


「大丈夫です! それより聞こえたでしょ? 姉さんの声!」


 興奮気味の僕に、「え?」と裕文さんは驚いた顔をした。

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