第33話 感謝と親友

「初め、自分が人狼なのを知った時は、なにもわからなかった。なぜ俺なのか、なぜ俺が人を殺さなくてはならないのか」

 目の前の人狼の目からは、ボロボロと大粒の涙があふれ続けている。

「毎日だ、毎日夢に出てくるんだ。七ノ瀬も遠野も水沼も西川だって。みんな俺のせいで死んだんだ。俺が殺したんだ!」


「俺はお前が人狼にならなくてよかった……。お前が人間を殺すことが無くてよかった……」


「お前が、俺を殺して、それで終わりだ。お前の勝ちだ……」


「俺を殺してくれ……」


南雲は真っ直ぐ銃を構える。銃口は、五十嵐京也の鼻先の少し上、人間の脳の丁度真ん中を捉えている。


南雲の目に迷いはない。

それを見た京也は、顔を歪ませた。人狼の姿だからそうなのかはわからないが、それは笑顔だと思う。


「よかった――」


 銃声が鳴った。

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