第13話 発狂と恐怖

 昼、朝に起きた悲劇のショックが治まってきた者から食堂に集まり、昼食の時間になる頃には八人が集まった。

「西川さんは?」

 葉山だ、二つの開いた席の片方を見て言う。それを聞いた蓬がびくりと肩を震わせた。

「西川は部屋で寝ているよ、これは蓬さんから聞いたんだけどね」

 蓬が京也の方を見ると、京也は微笑み返した。


「なんでよ!一人にさせたら何するかわからないじゃない!」

 山崎が叫ぶと、京也が頭を抱える。いい加減にしろよという声が聞こえた気がした。

「睡眠薬とか混ぜたりしてるんじゃないの? 眠っている間に殺す気なんでしょう!」

「いい加減にしろよ!」

京也が机を叩き、怒鳴る。一樹も見たことのないような、まるで狼のような目で山崎を睨んでいた。怯んだ山崎は「で、でも」と口ごもる。

「えぇと、京也だっけ? そいつ、人狼が全力で村人の振りしてるって考えらんねぇか?」

 遠野の放ったその言葉は、山崎だけでなく、その場の全員の目を剥かせることになった。

 遠野はその光景を眺め、口元を歪ませた。

「俺なら今日、そいつを吊るな。いい加減うるせぇし」

「いや、や、やめ、やめて」

 山崎は震え、目に涙を浮かべ、ガタガタと首を振る。

「ちょっと遠野さん!言いすぎです!」

「そうよ、言い方ってものがあるでしょう!」

 周りが止めようとするが、一度ついた火はなかなか消えなかった。それどころか、京也にまで燃え移る。

「いいですね、遠野さんの案に乗ります。俺は今日、投票で山崎に入れる」

「ちょっと五十嵐君!」

「人のこと人狼扱いしているんだ。俺だってそんなことで殺されちゃあ堪ったもんじゃない。それに、止めたいのなら俺か遠野さんに票を集めればいい」

「そうだけど」

「今日の話し合いは終わりにします。それぞれで好きなように票を入れておいてください」

 京也は終わりを告げるとつかつかと部屋へ帰ってしまう。それを追いかけるように一樹も部屋を出た。二人がいなくなり遠野が立ち上がる。遠野は脇目で山崎を見て、部屋を出た。山崎はガタガタと震えていた。

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