atatakami

「どうして右と左で大きさが違うんだろ」


『右手が大きすぎると、歩兵用の銃が使えないからね。左手は、もっと大きなものを運ぶためのもの。重機みたいな使い方を想定してた』


「よく知ってるね」


『君のカタログスペックは、エコー中隊の全員が知ってるよ』


「ふうん……」



 理由はわからないが、徐々に怒りが収まってきた。ちょっとだけどやり返せて、笑うことができて、気が楽になったのかもしれない。


『あ、もしかして日が昇ってきてる? 暖かくなってきた』


「ああ、うん。さっきから日の出が始まってるよ」


『私は太陽も感じることしかできないから……。君は感じる? このあたたかさを』


 どうやって感じられるのかわからないが、太陽の暖かさは感じられる。水の冷たさも、火薬の匂いも。視線を走らせると、土手のいくつかでまだ煙が上がっていた。一晩で慣れてしまった銃声も、まだ聞こえてくる。向こうの海岸からは、地鳴りのような爆発音が聞こえてきていた。まだ戦闘が行われているんだろう。



『感じる? 私の体温』


「……うん。わかるよ」

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