第6話 NaturaL on the HERO

 突如始まった二戦目、そんな概念があるとも思ってなかったが。敵は未だ見えず仕舞い、だが五人程いやがるらしい。


俺たちも五人

力自慢に、忍者に、ゴリラ、あとはガキと‥犬っコロ…。この五人、正確には四人と一匹‥いや二匹か?

まぁなんでもいいが

とにかく恐らく、恐らくだが‥。


「勝ち目は無ぇ!」


「決めつけるのは良くないでござるぞ。」


「決めつけてんじゃねぇ、決まってんだ。こんな得体の知れね‥」


「お前、傷はどうした?」


「おぉこれか、自然と治った。ルールを確認したところ、そういう仕組みらしいな。」


「仕組みぃ?」

戦いに備えて傷を癒やすってか、律儀なモンだな!


「それにしても平和だな。

本当に相手なぞいるのか?」


「いなきゃ何しにここにいるんだよ」


「オレはオ前でイイゾ。」


「黙ってろゴリラ!

‥名前忘れちまったよお前の」

だが確かにおかしい。戦闘が始まるどころか敵の気配も無ぇ。


「ロード、本当にいるのか?

相手ってのはよ。」


『……』 「おい‥」

返事が無ぇ、そうかよ。


「正面でもねぇ、横からでもねぇ。」

そういうとき大概の場合は…


「はっはあっ!

一番乗りだこの俺がぁ!!」


「やっぱり上か。」『はい』


「敵襲か!?」 「みたいだな。」

しっかり五人いやがるな。‥普通纏めて上からくるか?


「でじゃばるなよオッサン

いいとこ取りばっかしてさぁ。」


「貴様の足が遅いのが悪いのだ!

此奴らは纏めて俺のものだぁ!!」


「ヒート、欲を張るな。

一人一匹と決めた筈だ」


「コイツに何言っても無駄っしょ‥」


「燃えろカス共!」


『空中で下向きに掌を翳しました』


「見りゃあわかる。」

『フレイムのヒート‥掌から出るモノは恐らく…』


「はっはっは!

もう遅いわ、お前らは黒コゲ‥」


「ニンッ!」 「うおっ?」


「少々言葉が過ぎるでござる。」

「ほう、刀で我が炎を抑えるか!!」


「忍者。」


「離れろ、此奴は拙者が担う!」


「俺を一人で?

貴様、良い度胸ではないか!」


「違うよ

怒ってんだよその人。ブチ切れてんの!」


「ですがそちらの方が都合が良いではありませんか」


「確かにそうだな、これで我等も分散できる」


「……」


あいつら、纏まりが無いようで有る。

いや、纏まりの無いものを有るように動かすのが上手いのか?

‥どちらにせよ一遍に相手取りたくは無ぇな。


「ガディウス、できるか?」


「……あぁ‥。」

羽が生えてやがる、アイツ。


「…‥はん‥!」 「くあっ‥!」


ガディウスと呼ばれるそいつは、己も含めた取り巻きを巻き込み、俺たちに強い光を浴びせた。光を浴びた俺達は一時的に気を失い目を冷ますと、居た場所とは違う位置に飛ばされていた。炎の奴と、忍者を除いて‥。


各々は五手に分かれ、それぞれのフィールドを手にした。これが恐らく合図だろう。俺達は一方的に宣言されたんだ、バトルの開始を


「はっはっはぁ!

刀を介したといえど響くだろう、俺の炎は!」


「大した事は無いでござるよ‥。

こんな小火、吹けば消えるでござる」


「吹けば消える?

言ってくれるではないか、面白い!」


「冗談で言ったつもりは無いが‥?」


「そうか、ならば尚も面白いな!

貴様等手を出すなよ、この男は俺一人でっ…て、あれ‥どこに消えた!?」


「…見ていなかっでござるか。

他の者は御主を置いて消え去ったではないか」


「む、そうか!!

ならば、好都合だっはっは!」


「‥そうか。

機嫌の良いところ悪いが、こちらは複数でいかせて貰うぞ!」


ニンッ!

「おぉ!分身の術か!

流石は忍者だ!!」


「感心している暇があるでごさるか?」

分身四体に本体、計五体で刀が五本。同時に斬ればいけるか?


「いや、油断はできぬ」

囲むより、覆うが正し!


「ほう!

一斉に飛びかかるか、潔い!

…だが甘いぞぉ!!」


〈フレイム・シャワー〉

「はっはっはぁ!

焼き焦げろ真っ黒に!!」


「上に向かって火を灯す、思った通りでござるな。」


「前から三人!?

まだ残っていたかぁ!!」


「もう‥遅いでござるよ。」


「う、やめろぉ!!」


ニンッ!

「ぐおっ‥。」「見苦しいでござる」

‥意外だな、ここまで他愛も無いとは。


「見かけ倒しだったでござろうか。」


「‥はっ…」 「…何っ?」


「はっはっはっはぁ!!

そんな刃物で俺を斬って、殺せるとでも思ったかぁ!?」

やはり駄目か!


「馬鹿にしているのか?」


「なっ、離せ!」

此奴、何をするつもりだ?


「俺にハグされるとは幸運だな!

燃え上がれ、弾けて焦げろ!!」


〈バースト・フレア〉


「かっ…!」


「ひぃ、ふぅ、みぃ!

きちんと燃えたな簡単だ。教えてやるぞ忍びの者よ、これぞ見かけ倒しというのだぁ!!」


ドロンッ! 「んんっ?」


「せあっ!」 「ふん!」

「手裏剣‥避けていたか、小賢しい!」

「悪いな、見かけ倒しは拙者の専売特許だ。」

危なかった‥。

少し間が遅れたら、変わり身も使いようだ。


「直接攻撃は不利に働くようでござるな。

‥どうしたものか」

一先ず、武器を変えるか‥。


「やかましい故、余り出したく無いのだが‥」


「お、巻物か!

袖からそんなにでかいものが、まるで手品師の様だな!」


「黙っていろ耳障りだ。

‥それに手品師なぞと一緒にするな」

はぁ、開くのも気が進まぬ。仕方が無い、仕方が無いのだ。


「いでよ、鎖鷺くさりさぎ!」


ドロンッ! 「はぁ…。」

「なんだぁっ!?」


『イェーイ!元気ぃ?オレッチ元気!バリバリエブリデイ!サイコー!!』


「……」


『チョットちょっとサスケちゃん!

ドーしたのヨ元気無いじゃんヨー!』


「…黙れ下の名で呼ぶな殺すぞ。」


『ヒィヤァー!こわい、ワイコー!

アイも変わらずワイコーじゃないの!

ね、そこの赤いオジサン!!』


「……。」『あれあれ、ドシタ!?』


「誰だ貴様ァ!!」


『ナニなにアレアレ!めちゃくちゃ!

メチャくちゃキレてるヨー!ネー!』


「やかましい奴でござる」


『ネ!サスケチャン!

ドーすんのアレェ!?』


「いいから早く〝武器〟になれ。」


『ソーカ!そのテがアッタカー!

ワーッた!後はタノムぜチェケラ!』

疲れるで候、あやかしの世話は


ドロンッ‥!

「勘弁被りたいでごさる。」


「鎖鎌か!

なかなか面白い!!」


「壺の浅い男也」

右手に鎌を、左手に‥鎖を!


「せいっ!」 「ぬぅおっ!」


左腕に鎖が‥「捕らえたつもりか!」


『アーそのトーリ、捕らえたんダゼー!』


「くちばし、鳥の顔!?」


「喋るな鷺公、黙って捕らえろ。」


『アイヨ、ツレネーナー!

マ、そーイウトコがタマラねぇンだケドナ!ソレそれ!ア、ソレー!!』


「ぐおっ、何をするぅ!!

鎖が身体中にぃ!!」

抵抗するのも無駄な事、動けなくなるのも時間の問題でござるよ。


『ハーイカンセー!チェーンでグルぐる動けネェおじサマのデキアガリヨぉ!』


「外れん、邪魔臭いわぁっ!!」


「喚くな。」 「貴様、外せぇ!」


「その鎖は外れぬ。

御主の力でも、拙者の力でもな」


「この鎌で、切り裂く他は遣り様が無いのだ」


「切り裂くだとぉ!!」


「御主の身体毎な。」『イカスー!』


「くっそぉおぉおおぉおっー!!」


〝鎖狭斬り〟「参る…!」


とぐろを巻いた鎖を裂いた。

同化した火柱と共に。断たれて斬れた火柱は赫く光を放ち、悲鳴をあげた。

鎌は僅かに熱を帯び、カチカチとを鳴らし震えている。それは皮肉にも、冷気を浴びて寒気を受けた様子に似ていた。


「はぁ‥はぁ‥御苦労だった。」

ドロンッ!


あの男、切る直前で一気に炎を放出してきおった。大事には至らなかったが火傷した、しくじりでござる。


「気合の勝ちでござるな」


「本当だよなぁ、お前は根性がある」


「‥御主、まだ息がっ!?」

裂けた傷口から、炎が!

威力を軽減されたか?


「最近の連中は気力がまるで無い!

根性がひん曲がり、活力に欠けている!!」

いきなりなんだ。


「何が言いたいでござるか?」


「何が言いたいか?わからんのか?

俺は貴様を評価しているのだぞ!

それがわからんのかぁー!!」


「ぐおぉ‥!」

炎が放出し、拙者の方へ。

‥此奴このまま、囲んで焼く気か!?


「熱さが足りねぇんだよ!!

貴様もそう思うだろう、書いていたもんなぁ!

〝間違いを正す〟事が参加理由だとよぉ!!」


「……。」


拙者の参加理由、熱さが足りない…?

そうか、それで血を上らせていたのか


「勘違いするな」 「なんだぁ?」


「その様な無粋な思考が間違いなのだ!」

そう、拙者が思うのは‥。


「何が言いたい貴様ァ!」


「最近の若い者は気力が無い、それの何がいけない事でござろうか?」


「正気か貴様、腑抜けのようだな!」


「熱さなど要らぬ、腑抜けで構わぬ。好きな事をしていて何が悪い!」


「努力をしないクズ共の味方をするのかぁ‼︎」


「黙れ!

それは在り方の問題でしか無い。」


「在り方の問題だと?」


「そうだ。事実拙者は忍術を使い、技術を用い戦闘を行う。しかしそれは拙者が偶々忍術という戦法を選択し、鍛錬しただけの事。忍ぶ事も無く、術を使うことの無いものにとっては要らぬ手間だ。

故に拙者の言う間違いを正すという事は、御主のいう根性論で在り方を押し付けるものでは無く、己の在り方の通りの選択が有るという事に気付くべきだと言う事だ!」


「への理屈だ」

戯言に聞こえるか、だろうな。


「期待して損したわ!

業火に呑まれて焼け焦げろ!!」

火が全周に回ったか、もう逃げ場はないな。


「口で諭しても分からぬか、物事を無理に押し付けるのは好きではないが仕方無い。食らわせてやるぞ、拙者の熱さとやらをな」


「はっはっはぁ!

そんな火達磨の中で何が出来る!?

貴様の熱さ?面白い、見せてみろ!」


『ゲコッ‥!』 「む、カエル?」



「知っているか?

ガマは油を出すのだ。」


「それがどうしたぁ!!」


「他のガマはどうか知らぬが、内のガマは…火気厳禁だ。」

蝦蟇油がまゆ返しの術〟


「む!?」

カエルに炎が吸い込まれ

更に出した油を被り‥


「こっちに、帰ってくる…?」


「熱さも大事だが

時代を読むのも重要でござるよ。」


「くっそおぉおおぉおぉあっ〜!!」

なんだよコイツ、なかなか熱いじゃねぇか‥!


「先ずは一勝、頂き也。」

熱い男と耐え忍ぶ者の戦い

反発し長引くであろうと思われた戦は先手を打つ形で幕を閉じた。


「ふぅ、ヒートがやられたみたいですね。」


「……」


「良かったですね、貴方のお仲間の忍者さん、勝ちましたよ?

‥と、言っても無駄ですね。」

あれだけ花粉にやられては、動ける方がおかしいというものです。


「…ぐ、グォ‥。」


刻は数分前に遡る


「痛テ‥どこだ、ココハ?」


『街の北西付近、敵の能力によって飛ばされたようです。』


「飛ばサレタ、そうカ。

…何デダ?」


わたくし達と手を合わせる為ですよ?」


「うォ‥女カ?」 『男です』


「自然の力を扱い操るエレメンターズの一人、プラントのフォレストと申します‥。」


メキメキッ‥!

「ウオー。」 『地中から木が発生』


「そうカ、お前は植物を使うノカ。

植物は好きダゾ、特に木を登ル事ハ大好きダ!」


と、正面の木々に手を掛けた瞬間この様だ。

「当然です、これは私の生成した木々。無闇に触れれば傷も負うでしょう、それも素手で。」


「ぐゥ‥動けナイ…。」

身体中ガ、痺れてイル!「毒カ?」


『いえ、成分を分析したところ木々に生えた花の花弁から放出される花粉によるものと見られます。』


「カフン!」

カフン症は、無いと思ったケドナ…。


「痺れますか?

無理もありません。毒素こそありませんが成分は、神経を強く麻痺させる要素がふんだんな花粉ですからね。」


「そしてその花粉は、一度纏ったホルモンの匂いを感じ取ると、止まる事無く降り注ぐ。」


「ぐぅオォ!!」花粉が降ってクル!」


「ほっほほほ!

木々に囲まれ花粉に呑まれ、意識を失い息絶える!

‥香られる筈の花々が、香を吸って人を殺めるとは、皮肉なものですね。」


「……」

アレルギーや体質は、改善はできても克服は難しい。しかし逆に、悪化や発症は容易く起こり、矛盾を生む。

その中でもウイルスは急速な浸透が生じ、異変が見られるのも速い。

しかしウイルスは体質やアレルギーよりもしかすると、容易に克服できるかもしれない。


「‥木々が離れていく。

それはつまり、ホルモンの匂いが消えたという事。…それはつまり、出す媒体が無くなったつまり!

彼の息の音が‥止まったという事」


メキッ‥メキメキッ…。

「呆気ないものだな、野蛮な英雄殿。」


「ぶっハァっ!!」 「……何?」


「君、どうして‥?」 「ウオぉ?」


『正常な神経を取り戻しました。』


「初めハ痺レテ動けなかっタケド、その内カラダが慣れてきちマッタ。」

慣れただと、あの花粉にか?

神経が麻痺する劇薬の筈ですが‥。


「貴方、バケモノですね」


「ん、ソーカ?」


『花粉に対する抗体の生成が完了しました』


「んウォオ、まだ降ってくルナ。

‥仕方無い、ぶっ壊スカ」

自然を愛せというのは人だ。

ケモノは殴る、尊い緑でさえも。


「フんっ!

よし、スッキリしタ。」


「力任せに薙ぎ倒すか、本当に野蛮そのものですね貴方。」


「木が邪魔ダッタだけダ」


「品の無いけだものめ。」


メキメキッ…

「トゲトゲ、植物だナ。」


『幹を束ね鋭利な渦状の形態へ生成、表面には無数の棘が。五本飛び出す植物ですが槍と言うよりはドリルに近い性質と思われます』


「花粉ノ次はドリルカ」


「そうです、串刺し肉を抉るのですよ。無様に残酷にね!」

当然避ける事は不可能!

操作するのは私ですからね、四方を囲み追い詰めて、真っ向から貫く!


「そうカ。お前は植物を使うケド、大事にはシないノカ‥。」


『フィスト様、お鎮まり下さい。

体表が〝赤く〟なり掛けております』


「アァ、分かってイル。

ダからカウントをシてクレ。」


『‥かしこまりました』

赤く変わった身体、理性と引き換えに

力を引き出す暴我の鎧。


『向かって来ます』 「アァ」


背後、左斜め横『1、2』


「素手で殴った、やはりバケモノですね!」

左斜め上、鋭利な角度で突撃中


「ふンッ!」 『頭突きで破壊、3。』

右真横、急速なスピードで突進中


「ダから、ナンダッ!」 『4。』


「両飛蹴(ドロップキック)か!?」


「ハァ‥ハァ…!」


『フィスト様、無理をなさらないで下さい。身体に負荷が生じます。』


「モウ、生じてル‥!

気にしテモ、遅イ!」


『‥かしこまりました。

来ますよ、次は正面です。』


「アァ‥!」 「そらそら!」

壊す余裕ハ無さソうダナ。

思ったヨリ身体が重イ。


「ナラバ‥受け止めル!」


「‥触れましたね?」 『5。』


『全ての植物を制圧しました』

「はぁ‥はぁ‥はぁ‥はぁ…。‥ナントカ、止めラレタ」

少し、休みタイナぁ‥。


「いいや、君は止め切れて無い。私の植物は未だ、動き続けていますよ!」


メキメキッ‥!「ナンダ?」


『フィスト様、離れて下さい!』


「遅い。」 「ウワァ!!」

トゲが、身体ニ!


「貫ければ幸福、と考えていたがそんなものは付属品。この植物の武器は無数に生えた棘なのですよ!」

棘は伸長し、身体へ突き刺さる。突出した先端からは猛毒が放出され体内へ流れ込む。もう貴方はお終いですよ!


「クぅ、離れロ!トゲ!」


「無駄ですよ、抵抗をしてもね!

さぁ溶けなさい

内側から毒に侵されるのです!」


メキメキッ‥

「離っ‥レロ!

トゲっトゲェッ…!」


『筋力が上昇』


「ほっほほ!」

ドクドクと棘の管から流し込まれる!

数分も経てばあのバケモノは形も残さず溶かされる。共にいられる時間は随分と短い間だけでしたね。


「グウうぅ‥!」『血圧上昇』


「諦めの悪い、呆れますよ。」


「グウウぅ…!」メキメキッ‥


「ハンッ!」


メキメキメキッ!「なんです?」


『筋肉の急激な増加を確認。』


「フゥー‥フゥー…離れロ、トゲ!」

メキッ‥メキメキ‥ブシュ!


「これは、何という事だ。

毒が‥逆流している?」

全身に力を込めて筋力を高める事で、毒の放出を跳ね返したというのか。


「そんな馬鹿なことが…!?」

毒は棘から立ち戻り、植物へと流される。己の毒といえど抗体は持たない。それがまさか逆流し戻ってくる事など考えもしないからだ。


「フゥ、やっと外レタ」

当然猛毒を受ければ誰かが言ったように、身体は形も残さず、溶け消える。


『カウント終了、通常にお戻り下さい』


「ギリギリだっタ、危なカッタ!」

私の植物が、見るも無残に


「相性が悪い‥。」

いや、あの暴獣と相性の合う者なんていませんよ、初めからね。


「疲れたナ

終わリにするカ。」 メキッ「ン」


「仕方ないですね、美学に反するので使いたく無いですが。‥手段を選んでいられないようなのでね。」

メキッメキメキメキメキッ…!


「なんダ、コレハぁ…!?」

無様なものです、本当に。美しい曲線美も無ければ、咲き誇る花々も無い。


「美しい私の生成物が、巨躯な木偶の坊に成り下がるとは」


〈大木人 ウッディ・フット〉


「吐き気がするね」

力だけで薙ぎ倒すなんて。


「でかいナァ、コレもキなノカ?」


「そうですよ。

貴方を潰す程の大きなね!」

木偶の巨人は拳を振るった。加減無く、衝撃を只ぶつけるかの如く。


「砕けなさいな、暴我の英雄!」

叫ぶ頃には既に獣は跳躍していた。荒々しく唸る自然の鉄槌などに見向きもせずに、醜く粗暴な己の拳を、天に目掛けて構えていた。


「勘違いスルナ

オレが木にブッ倒されルと思っタカ?」


「お前‥バケモノか!?」


「チがウ、ヒーロうダ。」


〈フィスト・ハンマー!!〉


「木人がっ!

待て、落ちるっ!崩れるぅ!!」


「やっぱリカ。

植物ハお前ノ事、嫌いミたいダナ。」


「ケダモノがあぁあぁあ!!

ただで済むと思うなよ、いずれ…」

メキメキメキメキッ‥!


「ン、なんダ?」 『木人壊滅です。』


「そうカ、少し休ンでイイカ?」


『どうぞ御自由に。』「ウオォー。」


南西付近


「あ〜あぁ、フォレストさんやられてやんの〜…ダッセェ〜。」


「ね、アンタもそう思わない?」


「……」


「駄目だ何も言わねぇよコイツ!」


「……」


「おーい!」 「……」


「おーい、おーい!」


「……」


「聞こえてんだろ!おーい!!」


「………。」


「‥あぁそう、頑なだね。もういいや、返事したくないならさ。」


「腹立つからズブ濡れになんなよ!」


〈マリンシャワー〉


このアクアのウォンタちゃんの話を聞かないヤツはビショビショのヒエヒエになりなよ♪


「……」


『申し訳有りません』


「何?なんかいった?」


『誠に勝手ながら、貴方を拒否します。』


「は?何言ってんの?

意味わかんないんだけど」


バシャッ‥ 「…何アレ〜?」


「水の柱が裂けてんだけど、丁度アンタ達を避ける形で。」


『言った筈です〝貴方を拒否します〟と。』


「どういう事だか説明くんない?」


「……」


「黙ってないでさ、ねぇ。」

だんまりかよ、今だにさぁ!


「いい加減にしてくんない!?

無視とか良くないとおもうんだよね!」


〈マリンシャワー〉


『無駄です。』


「嘘だろ?」 「……」

マジ意味わかんない!

上から落とした水柱が、当たる直前で二つに分かれちゃう。


「なんでこうなっちゃうわけ?

拒否って何!?」


『概要欄を見た方が早いかも知れませんね』


「概要欄‥?」

ったくめんどくさいな!『ピピッ…』


ムーロン ルマンド地区出身 性別 男

武器 拒否概念

参加理由 偶々の成り行き


「拒否概念ってなんだよ。」


『ムーロン様はあらゆるものを非とします。』


「なんだよそれ!性格悪い奴!」


『拒否概念は主に五つ』


正面からモロにくらっちゃえよ♪


〈マリンショット〉


『拒絶』


「二つに割れた!またかよ〜!」


「……」


「ダメじゃんどーすれば…あっ!

アレならイケんじゃん🎶」


《マリンペイン〉


「よ、っと。」

さすがにこれならいけってしょ!

水で出来た爪なんて予想外じゃん?


「……」 『否定』

「よしもらった!

…ってアレ、当たんねぇじゃん!」


『貴方の爪を否定しました、彼の体には当たりません。』


「はぁっ!?

何だよソレ!!」反則じゃんかよ!


「……」


「てんめぇクソガキんちょ!

だんまりのまま意地悪い事ばっかしやがってさぁ!」


「………。」

馬鹿にしてんのかよ!?


「アッタマきた!

もう知らねぇよ、覚悟しろ?」

無視も知らん振りも出来ないスゲェ事してやるからなガキィッ!!


「あぁあぁああぁああぁぁ……!!」

唸りを上げ、水のエレメンターズが地に手を翳す。乾き、掌に干からびを感じさせる地面とは裏腹に、ウォンタの腕は、膨大なる潤いを呼んだ。

「呑まれて消えちゃえば!!」


〈マリンラグナロク〉


龍をものみこむ超大波だ、巻き込まれて潰れちまいな!


「逃げ場なんか無いからさぁ!

喰われて溺れて苦しんじゃいなよ!」


『抑制』

「‥なんだよ、波が止まってる。なんで動かねぇんだよ!動けよ!

動いてアイツを呑み込めよ!!」


『束縛』 「……」「なんだこれ!」

飛沫を上げる大水は動きを制限され、元凶は鎖で自由を捕らえられる。


「離せ!

なんだこれ、外せよ!!」


『攻め入る相手を拒絶、力を否定。

感情による衝動を抑制、行動を束縛』


「……」


「だからなんだよ!

俺は外せって言ってんの!!」


『残る一つの拒否概念は〝奪取〟です。』


「……!」


ズズ‥ギュポンッ…。

「大波が…消えた?

お前何したんだよ今度は!?」

水のあった空間が、ごっそり吸引される様に少年の口内に入り消えた。


『文字通り奪取したのです。つまり貴方の衝動は彼の、ムーロン様のモノとなりました』


「…おい、何でだよ。

何で大波マリンラグナロクがそっちで溢れてんだよ!!」


「……。」 「‥なんだよ、その顔」


『彼は言っています。

「奪い取ったから、貴方に返す」と』


「おい、ちょっと待てよ!

返すってソレお前もしかして…ゴボッ....。」


『呑み込まれて、しまいましたね‥』


「………。」


処変わり南東付近


 「ウォンタの奴‥やられたか、言わん事じゃない。だから油断するなと言うのだ。」


「それにしても‥」


「ワン!」


「相手が犬だとは、確実にハズレくじだ。」


「ワン、ワン!」


「言っている事が分からん。おい犬のアシストウォッチ、通訳しろ!」


『……ワン。』


「馬鹿にしているのか?」


北東


 「俺の相手は、お前か。」


「……フン‥。」


「どうするよ、名でも名乗り合うか?

‥俺はパワー・スター」


「光明の…ガディウスだ‥。」


「光明かい。

どっかの変態が喜びそうなモンだな」


「……知ったことか‥。」


「かく言う俺は、大っ嫌いだがな!」

方角変われど遣る事は同じ。睨み合い、拳を重ねるだけ。


「ワンッ!」 「避けるな!」

すばしこい、迷惑な程だ。やはりそこは犬か‥だが追いかけ合いなどするつもりは無い


「出力を上げるぞ、避けるなよ?」


〈ボルテック・ビート!〉


「キャウンッ!」

高電圧の落雷だ、当たら無くとも傷は負う。近くに落ちればな。


「そして確実に、当たる‥。」


〈ボルテック・ビート〉


「キャインッー!!」命中だ。


「クゥウン‥。」「犬、名は何だ?」


「ワン!」 「…仕方ない。」


『ピピッ‥』

機械には頼りたく無いが。


ケルベロス ペルラマ出身

通称ケルちゃん、番犬

武器 凶暴、牙、嗅覚

参加理由 やならはさまふまなまかす


「参加理由は自己入力だからな

仕方あるまい。」

しかし何を考えている?

団体戦の一員に犬を入れるとは


「そちらのリーダーは随分と計画性の無い‥」


グゥウゥウッ… 「なんだ?」

身体が肥大している、一回り程だが。


「ウワンッ!」


「向かってくるか、攻めて来い!」


〈ボルト・スピア〉


「ふんっ」

直線的に貫く稲妻の槍だ。


「キャイン〜!」


「避けるか、やるな」

速さも増しているという事か。


「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ‥ワオォ〜ン!」

打たれた弾を器用に回避

その後飛びかかり迎撃か‥。


「少し、甘すぎるぞ?」


〈ボルテック・バック〉


「キャン!」

距離を詰められ間が埋まるならば、小さい間で雷を放つのみ。


「所詮は犬か、発想が野性だ。」


グル‥グフルルゥッ…!!


「またか。

何故大きくなる?」

二回り、いや三回り足らずか。通常時よりも遥かにでかい。

という事はスペックも?


〈ボルト・シグナル〉


「ガオゥ…」 やはりか。

「かなり速いな、ここまで急成長するのか」


「ガルァ!」凶暴性が増している。

「野性に還っていくということか‥」


「ガオルァ!」


「ならば遣り様も変わってくるぞ?」


〈サンダー・ジェイル〉


「ガオウァ‥?」 「不思議か?」

稲妻製のポータブル監獄だ。形は分かりやすく、四角く型とっておいた


「ガオァ…!グルルルル‥!」

それは暴れるだろう、突然小さな牢獄に入れられるのだからな。


「それで暫く動けないだろう。

酷く遅れたが名を名乗らせてもらう

イカヅチのヒューズだ。」

‥さて、ここからだ。

この犬の躰の変化、肥大化した後基礎値を上昇させる。それには法則がある。それはおそらく、外から直接受けた衝撃を糧にする事。


「衝撃の大きさによって振れ幅が異なるのか、それとも一定の成長を一度にするのかは定かではないが。」

確認したいのはそれでは無い。


「もしそこに、糧となりうる衝撃の上限や許容といった概念があるとすれば、密閉され、逃げ場の無いところで上限以上の衝撃を与え続けたらどうなるのか。」

今標的は身動きをろくに取ることの出来ない監獄の中。そこに外部から莫大な衝撃を与えれば、成長どころか大怪我を被る事だろう。


「ウー…ワン!ワンワン!」

「数分後もそうして吠えられるか?」


「喰らうがいい」


〈ライトニングエクスキューション〉


派手な名前とは裏腹に、繰り出されるのは只の落雷。しかしその落雷は、尋常では無く大きく、広範囲に及ぶ。常軌を逸した、いわゆるの〝天災〟という奴だろう。


「終わったな…」

稲妻は空気、空間を焦がし、撃たれた者の悲鳴ですらも雷鳴が塞いだ。

目に付いたその場所に、神の怒りを叩きつけるように落ち、悪戯に光を放ち消える。


「我ながら凄まじい威力だ、加減は最早無意味、自然の奇跡には逆らえない。」

誤って撃たれた。

その程度の解釈が、一番良いのだ。


「まぁ何にせよお終いだ。

勝負はついた、完全に此方の……!‥」


油断していた。確信したその時に、目を離し視るのをやめていた。思わなかったからだ、檻を破り稲妻を掻い潜り、吠えている獣がいるなんて。その獣がのばした爪を拳ごと、腹に突き刺す姿なんて。気付いた頃には遅かった。獣の成長は、たかが人には測れない、測るべきでもない。


「お、前っ…!!」


「ガルアァァ…!」「化け物が…!」

ここまで大きく、凶暴に。

吸収に限界は無いという事か?


「下手な攻撃は出来ない、だが野放しにすると身が危ない。‥深く刺したその腕と爪、容易に離すなよ?」

一か八か‥やってみるか。


「野性の常識はわからんがな」

イカヅチのヒューズが肥大した獣の腕に触れた。新たな電撃を放出する前触れだ。


〈パラライズ・ブーム〉


「グオォォ…!」「躾してやろう。」

鋭く穿った爪から伝わるいかづち。毛を逆立たせ、雄叫びを上げる。


「ガルアァァアァァ…!!」

お前に触れている間、はしり続ける電撃だ。思う存分蓄積させろ‥!


「グルォォ!」「ぐっ、やはりか。」


「耐えかねて腕を外そうとするよな?

だから言ったのだ、容易に離そうとするなと」

とは言っても限界が有る。離されれば此方も危ない、気力の勝負だ。


「犬と綱引きか、初の試みだな。」


「グウォォ…!」「まだ粘るか」


「追加だ」《パラライズ・ブーム〉


「グルアォォォォ!!」「痛いか?」

気を悪くするな、お互い様だ。


「お前の成長それは本能か?

それとも、見栄張りか?

どちらにしても…みっもとないよな」

このまま流し続ければ、もしかしたら‥。


「……」


「どうした?」いきなり上を見上げて

「スゥー‥。」 「深呼吸か?」


『バアァアァァアアァアァー!!』


「ぐおっ‥。」

咆哮ハウリングか!?

酷い音だ、鼓膜が弾けてしまう。


「吠えるな野良犬!」


「ガルオォ…」急に止めた、何故だ?


「もしや‥しまった!」両腕で耳を!

こいつ、突発的にでは無く、意図的に声を上げたというのか!?


「やられたな、甘く見ていた。」


「グルァオォォ!!」

自然の英雄から爪を持つ腕が引き抜かれた。抵抗止む無く傷を負った。策士は策に溺れたが、その眼は水に沈むどころか地平に仁王立ち、睨みを利かせていた。


〈サンダー・ジェイル〉


「グルォォ!」 「檻に入っていろ」

あれだけ大きくなっている、長くは持たないだろう。その隙に距離を取る。


「暫く経てば〝アレ〟が効く筈だ。」

それまで逃げて、時間を稼ぐ!


「ガルルアァァ!!」


「まぁそう怒るな、すぐに終わる。」

まさか犬と追いかけっこするとはな、昔は想像も付かなかっただろう。


「あの頃はな…」


元々エレメンターズは、地球全体の自然を守る特殊組織だった。全国から依頼を受け森や山、海といった環境の護衛をして周った。謂わば地球を守るヒーローだ。


「だが悲劇は突然訪れた」

 とある国が、五人を纏めて雇いたいと言い出した。とても大きな国だったが、契約条件は〝我が国の警護〟というもので自然を守る組織にとってはそぐわない代物だった。


「国を守りたい訳では無い、そう言って申し出を断った。それが悲劇を生み出した」


国は激怒し、他の国の依頼が組織に来ないよう圧力をかけた。国民を守る筈の国が、自然を守る為のヒーローを潰したのだ。悪循環は更に悪循環を生み、結果的に守る物を失った我々を人々は〝Kill Brave Justice《キルブレイブジャスティス》〟と呼んだ。


「守るべき者は未だ見つからない、だが負ける訳にはいかない。」

我々、エレメンターズの戦う理由は…


「失われた勇気を、取り戻す事!!」


「グラアァァ!」 「来たか!」


〈ボルテック・シグナル〉


「グウゥゥ‥ガアァ!!」 「くっ」

速さは減少している

軀が肥大し過ぎたからか?

蓄積によってより拡大してる。普通に走れば問題ないが、此方も傷が深過ぎる。


「果たして持つのか…?」


「ガルルアァァ!!」


「考える暇も無しか、仕方ない。」


〈ライトニング・ビート〉


技を撃ちつつ後退だ、結局な。

「災難も良いところだ」

今までも、鮫や熊とは戦ってきたが、犬に命を縮められるとは思わなかった。それも街の外れでな。


〈ボルテック・スピア〉「ふんっ!」


「がはっ!」 最早限界か…。

建物の影に隠れているが、今の攻撃で居場所も丸分かりだ。


「判断力まで鈍ったか、情け無い」


「グルラオォォオォォッ!!」

…もう無駄だ、逃げるべきではない。


「喚くな、ここにいる」


「グオォォ…」「久し振りだな。」

出てきてみたはいいものの、どうするべきか。


「随分とでかくなったな。前の方が、可愛い顔をしていた‥。」

いや、悩むべきでも無いか。

やる事なんて決まっているからな。


「……やれ、犬ころ‥。」

男は床に膝を付き、穴の空いた腹を抑えながら呟く。


「グオオォォ…」無様に映るだろうか

だがこれも勇気、一つの正義だ。


「ガオラァオォォオォォオォッ!!」

やれ、吠え猛る獣。貫き破れ!


「………」「…どうした?」

巨大な爪はヒューズの体のすんでで動きを止めた。皮肉にも、勇気を見せる事は無く、正義を掲げる事も出来なかった。かくいう獣の軀はというと、忘れかけていた衝撃に、刺激という感覚を与えられ悶え怯んでいた。


「グオォォォッ!」

「電撃、ここでか。」間の悪い…。

〝パラライズ・ブーム〟での貯蓄が、漸く帯電したか。


「どこまでも情け無いな」


「グラアァァ!」

「悪いな、お前もう自由に動けんぞ?

蓄積した電撃が暫く流れ続ける。」

一か八かは、一に転んだようだ。八に最も近い一だと思われるが。


「お前の能力ちからがこれではっきり理解できた。うけた衝撃を吸収し、力に変換する。しかしそれは衝撃の大きさに比例する。」


大きければ変換も大きい、小さければ小さい


「そしてそれは明確に、一遍に受ける容量で無くてはならない。」

一つ一つの攻撃を処理し力に変える。しかしそれは自立した突発的な衝撃に限り行える事


「上手くいけばと思い行ってみたが成功したようだ。今のお前の軀は一定の間隔で帯電させた電撃が全身を襲う、これ以上の成長は無理だ。」

そして更に上手くいけば、細胞が一時的な麻痺を起こし軀を元に戻すだろう。都合が良すぎる話かもしれないが、完全に軀が戻る頃には、蓄電された雷も消えているだろうしな。


「何にせよ、勝負あったな

…少し、休ませて貰うぞ?」

此方もギリギリでな。


「グオォォ…」「痛いか?」

気にするな、 「お互い様だ。」


北東


 「……他の場所は勝負が着いたか。」


「ライトオフ〉


「…さて、どうする。

終わりにするか北東こちらも?」


「……るせぇよ、調子に乗んなっての。」


「地に突っ伏して何を呟いてる?

認めるべきだ、限界だと。」


「だから…うるせぇって言ってんだ!」


「往生際の悪い奴だ」


「悪いかったな、しつこくてよ!」

悔しいが、手も足も出ねぇ。

殴ろうとして近付くと、姿が消えちまう。かといって距離をとると、先手を取られちまう。光の速さってやつか?


「当たらねぇし見えねぇし、じっとしてられねぇ。眩し過ぎるしな。」

ましてや只の拳が武器じゃ不憫でならねぇ。

「だからっ言っても、やる事は変わらねぇんだけどな!」


〈スターライト・パンチ〉


「またか…芸が無い。」


〈ライト〝F〟ラッシュ〉


「ぐあっ‥!」

当たらねぇ、いや、避けられてる?

それに何だこの感覚。身体が傷ついてやがる


「‥見えないか?だろうな。

光の速度で事を無しているのだから。

光速で避け、光速で打撃を与える。」

何か言ってやがるのか?

…ダメだ、聞き取れねぇ!


〈スターライト・パンチ〉


まだ拳を向けて来るか…。


〈ライト・オン〉


「ぐあっ、目がっ…!!」

また目くらましかコイツ、面倒くせぇ

「やってられるかよ!」


〈スターナイト・ラッシュ〉


「手探りの応戦か‥。」

数撃ちゃ当たるだろ、一発くらいな?


「…威張るのは趣味じゃないが

甘く見るなよ‥?」


《イルミネーション‥「うわっ!」

光が強い、「目を潰す気かよ!?」


「潰すのは顔面だ。」光から腕がっ!

ボム!〉


「あがぁっ‥!」

何が起こったか、最後まで良く見え無かった。気が付いた頃には顔を掴まれ、身体は床に叩きつけられていた。


「お前はタフだ。念には念を、力の希望を根絶やしにしておくべきだ。」

まだなんかしやがる気か‥。


「…やっぱお前、変態好みだな。」


「どうとでも言え…。

好きでやっている訳では無い‥」


「どうだか」 「解釈は勝手にしろ」

突っ伏して寝ている男の真上、背中に影を作る形で片足のつま先を蜂の毒針のように突き立てる。光の使者はいよいよ争いを鎮めまいと、ぼそりと口を開き呟き囁く。


〈Bliking・Light〉《ブリキングライト》


光速、連打で打ち込まれるつま先の先端。寝そべるパワー・スターにとっては板の如く、釘で打ち付けられる思いの屈辱だった。しかし咄嗟に光と同等の速度は出せず、踠き悶える事のみが許された行動であった。


「がはぁっ…!!」

やり過ぎだろ‥何発受けた?


「随分と穴が空いたな。

‥甚振る趣味は無い、次で決める」


「まだ‥やんのかよ…!」


「聞いていなかったか?

これで終わりだ。」

つま先があれだけ光ってやがる、モロに受けたら、マジで終わりだ。


「でも悪りぃ、指一つ動かねぇ…」


「‥何か、言い残す事は無いか?」


「なんだよ、情けをかけてくれんのか。

…そうだな‥」


「………」


「‥特に、何も無ぇかな。」

残す言葉も無しか‥。


「さらばだ、腰の抜けた英雄よ」

命が閉じかけた、いや閉じる筈だった。覚悟を決めた瞬間に、雑音として混じり茶々を入れたのは、味方としてか義務的か。それが感情を探る事の出来ない存在だったのは変わりない。


『ビー‥ビー‥ビー…!』


「ブザー、時間切れか?」


「へへっ‥運が良いぜ。

これでおさらばだな、光のナントカ」

カラダが、散っていく。


「単純な団体敗けか、命拾いしたな」


「お前が勝った事に変わりは無ぇさ。」


「…ふん、思っているより潔が良いな、お前」


「消えちまった‥。

なんだか呆気ねぇなぁ」


「ロード、お前の仕業か?」


『何の事でしょうか』「とぼけんな」


「お前がギリギリの所で終わりを伝えたんだろ、だから俺が助かってんだ」


『‥おこがましき問いですが、根拠はお有りですか?』

‥生意気になったな。

いや、初めからこんなヤツだったか。


「お前がブザーを鳴らして直ぐにアイツが消えた、って事はお前が時間を調節して知らせたって事だろ。」


『……憶測ですよ。私には、検討も付くことが無い行動です』


「この後に及んでシラ切るか?」


唯の機械だってわかっちゃいるが、偶におっかなくなるぜ。感情があるみたいでよ。



「転送してくれ、身体中が痛ぇ。」


『直ぐに致します』


結局、なんだったんだ?

エレメンターズってのはよ。


『転送』


「簡素なバトルだったな、随分と。」



























































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る