サバイバー

明弓ヒロ(AKARI hiro)

プロローグ

 ヘッドセットを付けた少女が、夜の街を走っている。少女は、異国風の雰囲気をまとい、少年のような顔立ちをしていた。


「スグ先ノ公園ダ。気ヲツケロ」

ヘッドセットから、合成音がささやいた。

「了解、おじさん」


 少女が夜の公園に付くと、喧騒が満ちていた。


「そんなやつじゃなく、俺達と遊ぼうぜ!」

「彼女に手を出すな!」

 ガラの悪い連中が、カップルを取り囲み、男に暴行を加えていた。男は必死になって、女を守ろうとしているが、すでにボロボロで、立っているもやっとの様子だった。


「もう、やめて下さい。何でもしますから」

女が涙声で懇願する。


「本当になんでもするんだな」

男たちが下卑た声で、女を取り囲んだ。


「じゃあ、楽しませてもらおうか」

「やめてくれ」

涙声で訴える男の声を無視して、男たちが、女を押し倒した。


「誰から行く?」

「新入りにやらせようぜ。おい、お前に最初にやらせてやるから、こっちこい」

最初の度胸試しが肝心だ。

「おい、さっさと来いよ!」

リーダー格の男が声を荒げる。が、それに答えるものはいなかった。


「ち、度胸ねぇなー。帰ったのかよ」

リーダー格の男の声に、少女の声が答えた。

「そこで、寝てるわ」


 ギョッとした男たちが振り向くと、そこには一人の少女がいた。


「何だ、お前は!」

恫喝する男たちに、少女が答える。

「悪党に名乗る名前はない」


「はぁー?、お前、ふざけんてのか」

男たちの一人が、少女の胸ぐらをつかんだ。そして、悲鳴を上げた。

「ぎゃー」


 少女を掴んだ腕が、肘の位置から、ありえない角度に曲がっていた。そして、呆然とした顔をしている男たちの一人の股間を、蹴り上げた。

「ぐぁー」

あまりの苦痛に叫び声を上げ、うずくまる男。


 そして、最後に残った一人の男にすばやく近づいて、眉間に頭突きを食らわすと、悲鳴を上げる間もなく、男は気絶して倒れた。


「大丈夫?」

少女が優しく、女に声をかける。


「は、はい」

怯えた女が、返事をする。


「じゃぁ、早くここから逃げて。当分、こいつら動けないと思うけど、急いでね」

そう言うと、少女は颯爽さっそうと去っていった。

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