勇者の初陣

第5話 勇者のセーブ1

朝の光に照らされて俺は気分よく目覚めた。


台所に歩いていって朝食の準備をする。





飯を食いながら外の様子を眺めるとたくさんの隣人の鳥たちが庭に来ている。


小鳥たちは窓にいてツンツン叩いて催促しているようだ。





「ゆっくり食わせて欲しいなあ...」





そう言いながらも笑って鳥たちの餌を用意してやる。


自分で耕している畑で出るゴミは鳥たちにとって燃やすことは勿体なく、


前まで遠目で見に来ていた。





それに気付いて最近餌として与えるようになると


朝の決まった時間に貰えることが当たり前のようになって来るようになった。





生まれた時から親がいなくて孤児院で育てられてきてからというもの


嬉しいこと悲しいこと、

様々な紆余曲折があって今の一人暮らしを始められるまでになった。





やっている仕事は大まかにいうと兵士であり、

志願兵上がりから自分は正式に雇われるようになった。


兵士の需要は10年前に起きた第二次聖魔対戦からずっと上がりっぱなしだ。





それでも採用基準はうちの土域は人と交易に恵まれていることもあって


そこそこ厳しく、孤児院にまだいた頃傷だらけになって帰って来ては


世話係のウィッキーさんにはよく説得されていた。





お前は自慢の早い足があっても力や持久力なんて無いから向いてない、


そんな風に言われてったけなあ...





確かに俺は今でも筋力や体力がついたかと言えば、


周りの先輩方に比べたらまだまだ大したものではない。


自分の隊の隊長には

厳しくも優しくそのことを指摘されて訓練にも付き合ってくれるが......


あんまり効果が出ない。








「このままじゃなあ...」








自分の将来性の無い実力{ステータス}には

穏やかで安定した生活を手にしたとしても、


溜息が出るばかりだった。


一軒家はなんとか孤児院に住まわせて貰いながら職業軍人としての給料を貯めて


やっと建ててもらったものだ。





土地はこの住まう街ベグンでも端っこの妖の森と呼ばれる近くに建てて貰った。


というより住める土地が他に無かったのである。


この街は人も多く、

住宅地も家が狭そうにしているほど密集した住宅街がちらほら出来ている。





あそこに無理に家など作ろうものなら土地もお金も足りなくなってしまう。


そんなこんなで泣く泣く辺境まで追いやられた。


という風には自分は受け取っていない、

むしろ森の近くということが何となく嬉しかった。





元々おもちゃもゲームもロクに無かった孤児院で育った身だ。


今更街で住もうにも通勤に楽なだけで、休日は退屈に違いない。


日々の鍛錬が趣味と言っても良いくらいになっている自分に

狭くて息苦しい生活は辛くて堪らない。





故に俺にとっては素晴らしい物件だったわけだ。


当然安くこの土地が手に入ったのは、その近くの森に問題があるのだが.....。


未だ問題が起きたことはない。








「妖」などと名がついているが、いずれそれについての訳を知ることも無いだろう

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