第45話 斎と笙花

新たな血が滲む。しかし双方離さない。


「何を企んでる。幸岐に何をしようとしてる!」

「何も。ただアタシは、みゆちゃんの願い事に手助けしてるだけ」

「願い事って」

「だァから言ってんでしょ。オンナノコ同士の秘密」

「ふざけるのも大概にしろ」


要領を得ない笙花の発言に、斎はぐっと歯噛みした。


「幸岐が今、どんな状況か知ってるのか」

「知ってるよ。ここに来る前、家に来たから匿ってる。どうせ狛が行ったんでしょ? あいつのことだから、家に上がり込んでるんだろうな~やだやだ」


胸倉を掴まれたまま、げえ、と舌を出す笙花。斎は暫く彼女を睨みつけていたが、ふと手を離した。

笙花は突然支えを失ったことで、座敷にしりもちをついた。何より解放されたことにぎょっとしながら、斎を見上げる。


「…どーすんの、アタシのこと」

「別に、どうもしない。今回の件は逃げられたと報告する」

「はあ? アタシ逃がすの!?」

「なんだ、不服そうだな」


ちらりと見てくる斎の瞳に、笙花はぐっとたじろいだ。


「…なんで、アタシを許すの」

「数十年来の幼馴染だ、情が湧かない方がおかしい」

「情!?」

「それに、オンナノコ同士の秘密なんだろ。俺が介入しちゃいけない領域だ」

「な、なに、今日の小烏きもい…」

「誰が小烏だ」


笙花の頭を引っ叩いた斎は、腕を組んで彼女を見つめた。


「悪いと思ってるなら協力しろ」


きょとんと斎を見上げる。彼はふと無表情を崩した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る