第22話 対峙

10メートル、20メートル、草原の中に入り込んで行く。

野犬達は静かに一行の背後に回り込み、徐々に距離を詰めてくる。

30メートル20メートル・・・・

その時、メラは異様な殺気を感じて振り向いた。

ワンワンワンワン!野犬達が一斉に吠えて襲いかかってきた。

「野犬よ!」メラの声に反応し、ドトウは一気に駆け出した。

「横一列に隊列を組んで追いかけてきてるわ。」

メラの言ってる事を聞いてドトウはカイトに声をかけた。

「もしかしたら、前に追い込むためにフォーメーションを組んでるのかもしれない。カイト!」

「うん!」

カイトはドトウの背中からピョンと飛び上がって、身体を拡げて、紙飛行機の様に空に舞い上がった。


ヒュー!カイトは風を切りながら、辺りを観察した。

後方には、横一列に並んだ野犬の群れ。

前方のだいぶ離れたところに、高さ150センチ位の木の柵が長く並んで、その向こうは芝生の広場になっている。しかし、その手前にも横一列に並んだ野犬達が身を潜めている。

このまままっすぐ進むと、挟み撃ちになってしまう。

どうしよう。いくらドトウでも、僕やメラ、メイチを乗せたままであだけの数の野犬と戦うことはできない。


カイトはドトウの背中に戻ってきた。

「挟み撃ちだ!前にも野犬が待ち伏せしている。」

「どっちに行けばいい?」ドトウの息はまだ乱れていない。

「このまま真っ直ぐ!」

「待ち伏せしてるんじゃねーのか?」ドトウはイラついて言った。

「真ん中付近の野犬が小さくて弱そうだ、きっと突破できる。僕が飛んで目印になるから、そこ目掛けて突っ込んできてくれ。そして、突破したら木の柵がある。メラとメイチは飛び移るんだ。僕たちはドトウが野犬を倒してくれるまで逃げ続けるんだ!」

「それを、早く言いやがれ。行くぞ」ドトウのスピードが更に上がった。

カイトは一気に空に舞い上がった。


野犬達はドトウ達が近づいてきたので立ち上がった。

カイトはどこが一番突破しやすい場所かを見定める。

「あそこだ!」真ん中の野犬の辺りが地面の凹凸の一番低い場所になっている。

あそこなら、下り坂を利用してドトウが一番早いスピードで突破できる。

カイトは真ん中の野犬の手前で、地面すれすれになるまで下降し、野犬の目の前でフワリと上昇した。


間髪をおかず、凄い勢いでドトウがカイトに追いついてきた。

真ん中の野犬めがけて突進して行く。

ドトウの猛烈なスピードと迫力に、真ん中の野犬は、恐怖を感じサッと身をかわした。

木の柵までの道が開けた。


ドトウはそのまま木の柵の横木の下をくぐり抜ける。

くぐり抜ける瞬間に、メラとメイチが木の柵に飛び移った。

続いてカイトもフワリと木の柵に舞い降りた。

「メラ・メイチ逃げるぞ!」

カイト・メラ・メイチは一気に木の柵の上を走って逃げ始めた。

しかし、待ち伏せしていた野犬達は、メラ・メイチに目もくれずドトウを追いかけて行く。

でも、最初に追いかけてきた野犬達もみるみる近づいてくる。

とにかく逃げるのだ。


ザザザザザザー

メラ・メイチ・カイトが木の柵の上を逃げているのを確認してドトウは立ち止まり、野犬達と対峙した。

すると、野犬達の前に赤い目のイタチが現れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る