第19話 追手

その頃 野犬たちは金チュウチュウの元にいた。


「それで、負けてノコノコと帰って来たのか。」

野犬達が叱責されている。

「イノシシやモモンガはともかくリスの兄弟がいたのだな。」

金チュウチュウは思い出した。ワシをヨボヨボ呼ばわりした生意気なリスの兄弟だ。

生意気な上に研究所火災の真実を知っている奴らを生かしておくわけにはいかない。

強化動物達には、研究所の火災は金チュウチュウが人間と戦って、強化動物達を助けたと

説明しているのである。強化動物達は金チュウチュウに感謝し、りーだーだと讃えてくれている。

真実を知る者は誰であっても葬らなくてはならない。

奥歯をグっと噛み締めそして言った。


「きっと、研究所の人間と一緒になって、我らを苦しめていた奴らの一味だ。

極悪なキツネとタヌキと同様に、必ず仕留めなくてはならない奴らだ。」

野犬達はビクっとして反論した。

「しかし、相手は大きなイノシシが味方についています。我々だけではとても太刀打ちできません。」


金チュウチュウは大きく息を吸って一喝した。

「貴様ら、誰に向かって口答えしておる!「誰のお陰で、人間から自由になれたと思ってる?」


金チュウチュウはさらに続けた。

「人間と戦い、研究所を破壊して、お前たちに逃げるチャンスを与えてくれたのは誰だ?」

野犬たちは、うなだれて答える。

「金チュウチュウ様です。」


「研究所が火事の時に、人間は檻を開けてくれたか?誰が焼け死にそうになっているお前たちを助ける為に檻を開けてくれた。お前たちの命を一番大切に考えているのは誰だ。」

「金チュウチュウ様です。」


「研究所から焼け出されて消防士から逃れて、安全な場所に導いたのは誰だ。」

「金チュウチュウ様です。」


金チュウチュウは屈服している野犬達を見下ろして、怒りがようやく治った。


「お前達がイノシシに手を焼いているのは、よくわかった。お前達のサポートに強化イタチを連れて行け。身体は小さいがイノシシを無力化できる力がある。イノシシを無力化しているあいだにリスを仕留めてまいれ。」

「ワシはお前たちの事を誰よりも一番大切に考えておる。ワシの命令は、我らが生き残る為に絶対やらねばならぬ事なのだ。自分の事、我ら一族の事として、命を賭けて取り組むのだぞ。」


満面の笑みをたたえて、金チュウチュウは語った。


野犬達は今度はイタチを連れて、メラとメイチの追跡を再開した。





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