第31話 ようやく活用できた



 だが、俺の祈りが通じたのか。

 魔人はその場で、倒れ消滅していくところだった。

 体がボロボロと壊れていく。


 兵士達から歓声が上がる。


「やった、のか」


 でも、多くの人を困らせていた邪神はそれくらいでは倒れなかったらしい。


 いや、正確には倒れたのだが、やっかいな置き土産を残していたのだ。


 黒いツバサのはえた、コウモリのような生き物がこちらに向かって来た。


 兵士達は慌て迎撃しなければならなくなった。


「しおん、まじんはふういんできたんだよな!」

「はいっ、そのはずです。ですけど私が調べたところによるとまれに、封印される前に体の一部を切り落とす事があるようで」


 つまり、封印を流れた魔人の一部というわけか。


 兵士達が戦っている所を見ると、倒せないわけではないという事が分かったが、数が多い。


 トカゲのしっぽじゃあるまいし。

 歩く災害にそんな真似されたら、たまったもんじゃない。


 だが。


「だいじょうぶだ」


 こっちには、スキルがあるんだからな。


「はつどうしろ!」


 俺は己の意思をコントロールして、時間をとめては即殺していくのを繰り返していった。


 シオンの命を奪ったスキルだ。

 ここで役に立って貰わなければ、意味がない。


 時間を止めているうちに、危ない兵士を見極めて、襲っているやつを殺していく。

 こっちに来た奴も同様だ。


 実際の時間では、十分にも満たない戦いだっただろうけれど、いちいち時間を止めていた俺にとってはその三倍はあった。


「これで、おわりだ!」


 だから、最後の一体を倒し終えた時は、ついその場に倒れ込んでしまった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る