世の中、お金があれば、大抵の事は上手く行く

@koooum

第1話 どうやら異世界転生するらしい

『・・・と言う訳で、貴方は選ばれました。おめでとうございます。では、さっそく設定へと向かいましょう。』

何が、と言う訳なのか分からないけど、どうやら僕は異世界転生するらしい。

絶望しかなった世界に別れを告げたのに、余計な事をしてくれる。めでたくなんてない。


「辞退します。じゃあ・・・」

話を勝手に進める神様らしき人に声だけを掛けて背中を向ける。ほっといてくれ。僕は、消えてしまいたいんだ。


『ちょっ、ちょっと待ってください。

ここは、「やったぜ。異世界転生なんて待ち望んだ結果だぜ。」でしょう?』

勝手な思い込みで、あたふたしているが、そんな事は知らない。何を期待してるんだか。

僕は無視して、歩きだした。どこへかは分からない。

でも、どこでもいい。何でもいい。


『ホントに待ってって。

・・・あ~、もう、仕方ない。チート能力も付けますから。だから異世界転生してくださいよ。』

何を言われても響かない。


『しかも複数です。どうですか?かなりオイシイと思いますよ。もう、ウハウハですって。』

勝手な事ばかり言ってるな。言うのも面倒だったけどイライラしてきた。


「アンタが何者かは、話の流れで分かったよ。神様とか言うんだろ?」

そう言うと、呆気に取られた様な顔をしながらもコクコクと頷いている。随分と人間味に溢れた神様だな。


「それなら、言っとく。

異世界転生おめでとう?全く、めでたくない。

僕は生きていくのに絶望したんだ。何もかもを諦めた。それなのに、まだ生きろと?

それに出てくるなら、もっと早く来てくれ。異世界転生のキッカケ作る前にな。」

そう、絶望して生きる事を止める前に来て欲しかった。何が神様だよ。何も、いい事なんてなかった。


『私のせいだと?』

苛立った様なトゲのある言い方をされた。


『貴方が、絶望したのは勝手です。全ての人には徳と言う物があるのです。

まぁ、分かりやすく言えばラッキーポイントですね。

貴方は、それが少なかった。それでも後半からは、ぐぐぐっと延びてくるはずだったんです。

大器晩成型ですね。勿体ない。あそこを乗り切れば、貴方の人生は違ったものになったのです。』

一方的に神様的な人は、捲し立てる。


『しかも、それは前世の貴方が望んだ結果です。前世の貴方の徳が、今世の貴方に受け継がれたのですから。全ては神の力ではなく、自らが招いた事です。

因果応報ですね。』

いつのまにやら取り出していた手帳をペラペラと捲りながら話していたが、パタンと閉じると


『分かったら、転生も運命だと諦めて、さっさと行け!』

と言ったと思ったら、周りの景色が一瞬にして変わった。


『さぁ、さっさとキャラメイキングしやがれ。』

キャラが変わった神様に言われて向き合うアバター的な物。

これで、転生先の姿が変わる訳か。

神様に逆らっても仕方ないな。それに言われた事は間違ってない。全ては自らの行いが招いた事だろう。

八つ当たりに近いものがあった。

これ以上、手を煩わすのも悪いし、さっさと終わるか。


見た目の変更ではなく、能力に関する事をメイキングするらしく、頭脳やら、筋力、反射神経みたいな項目から、健康とか、運とかも変更出来るらしかった。

どの程度が平均的なのかは分からないが、ポイントを平均的に割り振っていく。

この辺りは、小心者だな。どこかにドカンと割り振れない。一芸でも秀でていた方が、何かと便利そうなのに平凡な生活を望んでるんだもんな。


『貴方らしい選択ですね。』

神様は僕のキャラメイキングを見て、そう言う。

平凡な生活を望む僕らしいな。


『でも、平均的に割り振ったみたいですけど、これでも普通の人より平均点高いですからね。

それと、お約束のチート付けときます。

しっかりと異世界転生を堪能してくださいね。

貴方の優しさが報われる事を望みます。

どうか、この世界では幸せに。』

最期に見たのは、泣きそうな優しい笑顔だった。

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