第3話 竜族の少子化と結婚制度のさわり

第3話 里の若夫婦のこと

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885843307/episodes/1177354054885843453


 パン屋の若夫婦は、夫のロッタが竜族、妻のハニが人間。子どもたちは、その混血になります。(ケヴァンも混血)


 第二稿まで悩んでいたのが、この混血の子どもを出すかどうか。というのも、のちのち〈ハートレス〉への偏見や差別が出てくるので、同じような立場に置かれそうな混血は出さないほうがいいんじゃないか。


 〈ハートレス〉は、竜族同士のカップルから生まれるが、竜の心臓を持たないため、差別される。

 一方で、片親が人間から生まれた子どもは、竜の心臓を持っていれば、差別されることなく竜族として扱われる。


 これは、単に紛らわしいだけではなく、混血であることがアイデンティティとなる登場人物もいないため、不必要でもある。


 なんだけど……


 結局、シリーズを通して「里からさらわれた混血の子どもたち」という存在が大きな役割を持つため、削ることができなかった。


 フィルバートを混血にしてハートレスの設定をなくす、という方法も考えてみたが、これはこれで第三部が成り立たなくなるので、こちらも無理。設定上の一番大きな失敗だと思っています。


 それはそうと、人間と竜族の結婚観の違いは、ちょっとコメディっぽく書いてみました。

 少子化に悩む竜族は基本、できちゃった婚。というか、子どもが授からないと夫婦として認めてもらえない社会。さらに、繁殖期ごとに複数の相手を選んで婚姻関係を持つ通い婚スタイルでもある。

 一方の人間は、結婚→妊娠の流れが普通で、田舎のデキ婚はちょっと恥ずかしい。なので奥さんのハニは妊娠が分かったとき焦ったのだが、竜族のロッタは妊娠に大喜び。

 「このたび、無事お嬢さんを妊娠させましたので、結婚させてください!」と満面の笑みで言ったに違いなく、パパは真っ青だったであろう。(そのあと、パン生地をのばす麵棒でボコボコに殴られた)


 リアナはそういう里で育っているので、複数婚にはちょっと抵抗がある。そのあたりが見どころの第3話でした。


【2020/01/17 追記】

 その後ストーリーが5部6部と進むうち、混血とハートレスのあいだの被差別問題などを絡めて書けるようになりました。ので、「ないほうがよかった設定」には違いないんですが、ある程度リカバリはできたのかも。


 そもそも、竜族と人間という似て非なる二種族を出したのには、SFベースの世界観にしたいという願望があったからなんですよね。つまり、設定のほうが先にできたわけで、ストーリーに寄与しない設定を先に作りこんでしまうことの弊害だったのかもしれません。

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