第24話──過去の140字SSとかをひっぱってきてみる。

 なお元が二次創作なものは、そこらへんちょちょいと修正している。

 なぜここでやるのかというと、小説読んでー! っていう欲求からである。導線にならないかなって思ってるのである。

 あれですよ、試し読みですよ。

 あと最後の方は筆がすべって140字を軽く超過してるのが普通にある。



 ***



『貴方は〇〇〇で『ずっとそばにいて』をお題にして140文字SSを書いてください。

https://shindanmaker.com/375517』



 風が吹いた。

 その強さに耐えるように木々が枝をしならせ薄紅の花弁を一面に撒き散らす。少女はその真ん中にいた。ぽつねんと置いてきぼりになったように。むしろ自分から選んだかのように。明るい茶髪が風に躍り表情を隠している。

 だから彼女は一気に不安になって、少女に走り寄っていた。



 ***



『#文章力向上のため1rtされるごとに何か文を書く』

(食べ物縛り)



 シュワシュワと小さく音を立てて、いくつもの泡が弾けている、明るい緑色をした──メロンソーダ。本来ならその奇抜な色は人の食欲をそそることは無いだろうに、けれどキンと冷たく透明なグラスに注がれたそれは見ているだけで喉を渇かせる。きっと、緑の真ん中で泳いでいる真っ赤なチェリーのせいだ。


(クリームソーダが飲みたかったらしい)


 *


 コンビニに出てすぐに薄い包み紙を剥がした。それは熱く、夜景にふわふわと湯気が透けている。

 白く柔くも弾力のある手触りを潰しそうになりながら半分に割ると、肉と野菜の旨味を含んだ湯気が強く鼻をついた。ごくりと喉を鳴らしてから大きく口を開けて被りつく──肉汁の塩気と小麦の甘味が襲ってきた。


(肉まんの季節だったらしい)


 *


 熱い鉄板で焼かれる魚の形をしたそれから、甘い香気が生まれて辺りにただよっている──小麦/卵/砂糖が渾然一体となった香り。焼き目は理想的なキツネ色だ。

 焼き立て熱々のそれを受け取り、ふーふーと息を吹きかけ、火傷しないようにしつつ頭から歯を立てる/咀嚼する/一気に広がる小豆の芳醇な甘さ。


(うちの推しはこしあん派のようです)


 *


 ピピッと電子音がしてから蒸らすこと15分後。

 しゃもじを手に蓋を開けると、甘さを感じる水蒸気がぶわっと顔を撫でた。一粒一粒がつやつやと光を弾き立っている様子はどこか凛として見える。その一面の真白にしゃもじを突き立て、下からぐるりとかき混ぜると、炊きたてのそれは更に魅力を増していった。


(白ご飯は至高)



 ***



『#いいねした人をイメージして小説の書き出し一文』

(ツイッターのフォロワーさんでやったやつ)



 ふぅー……と男は紫煙を吐き出すと、吸いかけの煙草を灰皿に強く押し付けた。ひん曲がった吸殻から上る煙から目を逸らすように頭を掻きむしる。眉間の皺が深くなる。

 自覚していた。思考が、纏まらない。推理が、構築出来ない。起点の分からない発想だけが、まるで花火のように咲いては散っていく。


(思考ゲームをよくする人だった)



 *



 一目惚れだった。

 彼を見た瞬間に、私は彼を推していた。彼のことなんてなにひとつ知らないのに。……意味がわからないって? それは私がいちばんそう思ってる。

 でも私は知ってしまった。彼がどんな人なのか。どんなふうに笑うのか。どんなふうに泣くのか。どんな人を好きになるのか。少しだけ、だけど。


(推しの傾向が自分と被ってる人だった)




 ***



『〇〇〇へのお題【/「意地っ張りなところがよく似てる」/この関係を越えてはいけない気がして。】』

https://shindanmaker.com/287899



 好きな人なんていなかった。明るくて素敵で魅力的な人は沢山いた。でも、わたしにとって必要なんだって、痛いくらいに想えるような人には、出会えなかった──あの方以外には。

 あの方さえいれば良かった。あの方から貰った『貴女に会えてよかったわ』っていうお言葉が頂けただけで、わたしは天にも登る気持ちになれた。あの、女神さまみたいに身も心も綺麗な人に、わたしの全てを肯定して貰えた──そう感じたの。

 短い出会いの、たったそれだけで、わたしは少しだけ自分に自身が持てた。なんでも出来る気がした。

 いつもいつもあの方だけを探すようになっていた。写真で、映像で、文章で、噂話で──どんな小さなカケラでも良かった。どんな姿でも光り輝いているから。それだけで良かったの。

 でも、いつの間にか気づいてしまった。隣にいつもひっそりとある、白い影に。気づいてしまった時にはもう、戻れなかった。わたしはその影さえも追いかけていた。




 ***



『〇〇〇へのお題は『世界中の幸せを二人じめして』です。

https://shindanmaker.com/392860』



 眩い陽光と少女が送るライスシャワーの中で二人が微笑んでいる。嬉しそうに/恥ずかしそうに/幸せそうに──純白のタキシードを着たかつての級友と、純白のウェディングドレスを纏ったかつての想い人が。

とてもとてもとても、幸せそうに、笑っていた。

 その姿を見つめる少女の菫の瞳にふるふると涙が盛り上がってくる/溢れてしまう/零れて頬を伝っていく。次々に、止むことなく。けれど、拭う気にはなれなかった。そんなことをする暇があるのなら、この二人の姿を一瞬でも見つめ続けていたかった。どんなにどんなに胸が痛かったとしても。

 けれど少女は哀しくも不幸でもない。だってこんなにも幸せでいる二人を見ることが出来たのだから。自分の恋心が報われないことなんて最初から分かっていたのだから。

 だから、少女は、ただの彼とただの彼女として新たに結ばれるこの一瞬を見つめながら傲慢に想うのだ/願うのだ。

 このまま世界中の幸せが二人だけのものになってしまえば良いのに、と。

 少女は泣きながら笑って、それでもどうしようもなく笑顔が止まらないままに、ライスシャワーをまた二人に送った。刹那だけ向けられた森のような/自然のような/世界のような色をした緑の瞳は、ひどく甘い涙に潤んでいた。




 ***



『AとBへのお題:いつでもはじめてだよ/「あなたを利用しますね、って先に言うだけ優しいと思って」/

https://shindanmaker.com/122300』



『彼女』の話題は僕らの間では禁忌みたいなものだった。

 誰が決めたわけじゃない。けれどなんとなく、どちらともなく触れることはなかったし、触れようとも思わなかった。それくらい僕らにとって『彼女』は特別で大切で儚くて──だから、僕らの間にある距離感は、まるでこわれものめいたものだった。



 ***



『貴方はアイドルとマネージャーで『それ以上は許さない』をお題にして140文字SSを書いてください。

https://shindanmaker.com/375517』



 彼がいつものようにハイテンションに抱きしめてくる。少女はもう驚くこともなくただ苦笑する。だってとっくに慣れっこだったはずだった。だから我慢出来るはずだった。彼の広くしなやかな背中に腕を回してこの身をあずけたい、なんていう欲求にだって。

 でも。

「──いけませんよ」

 そう。魔が差した、のだろう。

 少女がそっと瞼を閉じたその瞬間に耳元で聞こえた声、静かな言葉は、ひどく優しく、けれど突き放すような調子だった。




 ***



『アイドルとマネージャーへのお題:流れていくのは涙かな、それとも愛?/(そう言ったらきみはきっと、怒るかな)/

https://shindanmaker.com/122300』



『今度お時間を作っていただけますか?』

『大事なお話があるんです。』

 とん、とスマートフォンの画面をタップして送信し、少女はチャットの画面を見つめたまま長く深く息をついた。心臓は今にも破裂しそうで、けれど視線を指先に移して、ひどくふるえているなとどこか他人事のようにも思った。

 ぴこん、と軽快な音がして、『彼』から返信が届く。少女の心臓がまた強く強くはねる。スマートフォンを落としてしまいそうだ。

 少女のペットによく似たウサギのスタンプのあとに、『分かった。』『そうだなー、オレの次のオフの日の夜とかどう?』『あ、もちろんマネージャーの都合のいい日優先でいいから!』と、彼の明るい表情が手に取るように伝わってきそうな文字が届いた。うれしさと罪悪感と後悔で心拍数が破裂しそうだ。いっそ泣きそうなくらいに。

 少女はスリープ状態にした端末をぎゅっと両手で握りしめると、祈るように額につけた。じわりと熱いのは、端末か、それとも少女の方か。わからない、どちらでもいい、いまは。いまは、彼への返信を考えよう。

 目を閉じて深呼吸。心拍数はきっと変わらない。けれどそれでもいい。それでも、落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせる。胸の痛みはそのままに。ただ、決意をあらためる。

 ──わたしは彼に告白する。

 わかっていた。許されることじゃないと、こんなのは間違っているんだと。

 誰よりも彼らをひとしく慈しむべきマネージャーが、ひとりのアイドルに恋をする、なんて。

 気づかれれば彼らのマイナスイメージになる。当然ファンは悲しむだろう。もしかしたら彼らにも幻滅されてしまうかもしれない。

 だから少女は決めた。隠すのはやめようと。はっきりと伝えてしまおう、と。盛大にふられて、それで終わりにすればいい。

 こんなのは身勝手だと自分でも思う。優しい彼はきっと困るだろう。傷つけないようにと振る舞うかもしれない。その結果うやむやにされそうだけれど、それだけは避けたい。

 この恋心をなかったことにはできないから。初恋のときのように、ひとりで終わらせることはできそうにないから。

 だから、きちんとぶつけて、壊して、終わりにしよう。

 それが、彼が少女に向けてくれる、かけがえのない笑顔と引き換えになるかもしれなくても。




 ***



 終わり。

 まとめて気づいたけど、男女カップリングもの多くね?

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