時のカケラひとつだけ.〜空の向こう側に〜..

オッケーいなお

第1話 喜一郎の時

パイロットが夢だった。

誰でもそんな夢のひとつはあったはず。

子供の頃なりたかったヒーロー。

小学生の時になりたかったお医者さん。

そんな風に誰もが一度は夢を持つ。

喜一郎も子供の頃からずっとそんな夢を持っていた。

ただ叶わずして諦めた側で。

空港では働いてるが、空は飛んでない。

夢は叶わなかったが、夢の側にいる。

今日も仕事を終えて電車に揺られること20分弱、最寄駅から徒歩5分のアパートに帰っていく。

ワンルームの狭い部屋には飛行機の模型がびっしり並んで、パソコンデスクは自作でコックピット風に。

そんな飛行機に囲まれた毎日。

それはそれで幸せなのかもしれない。

20時。

仕事が早いので夕飯を食べてこの時間くらいにはいつも眠りにつく。

今日は疲れたせいかすぐに眠りに。

…あれっ!?

目を開けるとなぜか飛行機の客席に。

しかも隣の人にもたれかかってたらしい。

喜一郎「すいませんっ!」

隣客「大丈夫ですよ。」

わけがわからないが、とにかく恥ずかしくてたまらない。

家で眠りについた夢?

ただ今はすごく恥ずかしかった。

隣客「ぐっすりでしたね。」

喜一郎「はぁ、すいません。」

隣客「わたしは大丈夫ですよ。」

長い髪が綺麗で、ほんと綺麗で、少し見とれていたら、

隣客「どうかしました?」

喜一郎「えっ、いやっ、なんでも。」

恥ずかしさピークに。

照れ隠しでつい、

喜一郎「いやっ、あのっ、綺麗な髪だなって思って。あっ、すいませんっ!」

隣客「ふふふっ、ありがとうございます!」

笑顔がまた綺麗で。

恥ずかしすぎてもうどこかに隠れたい。

もう寝るしかない。

目をつぶって無心になろう。

いつのまにか眠りに。

…ピピピピ、ピピピピ

はっ!?

目覚ましを止めた。

飛行機の模型に囲まれたこの見慣れた景色は紛れもなく自分の部屋。

まさか夢オチ?

夢だったのか…


第2話に続く

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